デザイン学校を卒業してから、広告デザインや企業のブランディングなどを手がける制作会社3社を経て、今年からGMOインターネットグループに所属しております。従業員数がここまで多い会社に所属するのは初めてで、会社のシステムや人々との関わり方など、学ぶことが多く、ベテランと呼ばれる歳に差し掛かっても新鮮な驚きが尽きません。若い方が多い中、こんなオジサンが入っても温かく迎えてくださり、所属するチームやお仕事でご一緒させていただく皆さんには心から感謝感謝です!
自己紹介
はじめまして!
今年2月末にGMOインターネットグループに入社したデザイナーの河合と申します。ConoHaデザインチームに所属し、Web改善や広告などといったデザインに日々取り組んでおります。ConoHa以外にも、ホテルレビューンなど所属する部署以外の案件に関わることもあり、会社のさまざまなサービスを学ばせてもらっています。
今回はDevelopers Blogに掲載する機会をいただきました。何を書こうか悩んでいましたが、デザイナーさんも多く在籍していることですし、「デザインをする上で正解って何なのだろう?」と今でもたまに思う疑問について問いかけられたらと思っています!
知人である「てんぐアート」さんに描いてもらった私です。悪意たっぷりに描いてもらいました
デザインすることのおもしろさと難しさ
デザインには無限の表現があると感じています。かっこいいデザインやかわいいデザインなど抽象度の高いところからから始まり、色の選び方や書体の選び方、大きさなど抽象度の低いところまで、作り手が自分の好きなように表現しようと思えばいくらでも広がります。
デザインには数学のように決まった「正解」がないために、複数の意見がからまり合う場面も多いです。「この色はちょっと好みじゃないな〜」「どこか古めかしい印象だなぁ〜」「ん〜〜なんとなく違うなぁ。。」など、さまざまなフィードバックが寄せられ、若手の頃はそのたびに「デザインの迷子」になり、なかなか一つのデザインに自信を持てない時期がありました。
しかし経験を重ねるうちに、表現に入る前の前準備として「コンセプトの設計」が重要であり、デザインする上での一つの正解なのではないかと感じるようになりました。
若手の頃は夢にこんなモチーフが出てきました。悩みの象徴でしょうか
「コンセプトの設計」はデザインの正解になり得るか
ChatGPTに「デザインにおける正解ってなんだろ??」と尋ねたところ、こんな答えが。
ChatGPT先生のアンサー。なんでも知ってんなぁ〜〜。
「デザインコンセプトの設計」も重要な1つだという回答がありました。この「コンセプトの設計」という視点は、私自身も学生時代から大切だと教えられてきました。仕事をしていてもその価値を改めて実感しています。ここでは、私がこれまでの経験の中で得た「コンセプト」に関する学びをお話しできればと思います。
デザイン学校での学び
学生時代、デザイン表現は無限に広がるものの、それが自己満足に陥りやすい点もあると学びました。自由にできる反面、軸が定まっていないデザインはどんなにクオリティが高くても説得力に欠けます。そこで必要となるのが「コンセプト」であり、クライアントの過去、現在、未来のビジョンに基づいて、どこを切り取り、どう表現したのかを明確に提示することが重要だと教えられました。コンセプトは、デザインにおいて無限に広がる大地の中から道筋を立てるための「地図」のようなものなのかもしれません。
社会人になってからの学び
卒業後デザイン会社に入社し、「デザイナー」という肩書きは得たものの、周りには肩書きだけでない本物のデザイナーばかり。自分が出すデザインが正しいのか自信が持てず、クオリティでも敵わないと感じていました。それでも「コンセプト」を提案し続けて訓練していると、「そのストーリーいいね。この先輩の案に合わせてみようか」といった形で徐々に成果が出始めました。何年か経ち、デザイン力も少しずつ追いついてきた頃には、コンセプトとの相乗効果で自分の案が通りやすくなっていました。コンセプトがあるとデザインの意図がはっきりと示され、クライアントからの質問にもスムーズに答えられるようになりました。
こうした経験を通じて、コンセプト設計はデザインする上で表現を導いてくれる一つの正解ではないかと感じるようになりました。
実例:どうぶつ病院のVI
実例が出せた方が面白いかなと思っていたので、過去に個人として手がけた「アピアどうぶつ病院のVIデザイン」を紹介します。
この病院の院長は私の友人で、開業するにあたりロゴ、紙もの全般、ウェブ、病院の看板や内装のデザインまで幅広く依頼された案件です。建築家をはじめ他分野のプロフェッショナルとの連携もあるので、「地図と道」を明確に共有する必要があると感じました。
院長はかつて青年海外協力隊としてオセアニアの「サモア」という国に滞在し、現地で動物医療に携わっていました。特にサモアの首都「アピア」での経験が深く印象に残っており、この地名に想いを込めて「アピアどうぶつ病院」と名付けました。このような経歴は獣医さんとしてはちょっと珍しく、個性的なものでした。
そこで、「サモアのゆったりとした時間や温かみある雰囲気を感じる”南国リゾート”」をコンセプトに設計しました。地域の飼い主さんたちが待っている時間も居心地の良い病院作りを目指しました。このコンセプトに基づき、ロゴから名刺、薬袋、ウェブに至るまで南国モチーフを取り入れ、ハンモックや廃材ボートをリサイクルした椅子をインテリアにするなど、サモアの自然を感じるアイテムを随所に取り入れました。バナナの木など南国植物を多く植えたので、世界観にも説得力が増しました。(たまに収穫も 笑)
コンセプトがあることで道筋が生まれ、チーム間でも脳内が同期され、院長の希望に適ったデザインに仕上がったかなと思います。
「南国リゾート」のコンセプトの通り、病院だけどリラックスできるような空間を目指しました
紙ものにも南国を感じさせるモチーフをちりばめ、ブランドイメージの統一を図りました
インハウスデザイナーとしてのスタート
今までの経験を武器に今年からは、「インハウスデザイナー」として自社サービスにじっくり向き合う立場に挑戦させていただいています。
今までは他社のさまざまなサービスに関わる中で一度きりの案件も多かったのですが、今は自社のデザインに一貫して取り組める立場にいます。たとえば、ボタン一つのデザイン変更で成約率が上がるなど、細やかなデザインの改善がどう成果につながるのかを追いかけていけます。
現在ある案件でリニューアルに携わっています。やはり人がたくさん関わるので、みんなで脳内を同期できるようなコンセプトの設計が改めて必要と感じました。商品の特性や色などの要素から、ビジュアルコンセプトを設計し、デザインに落とし込んでいる真っ只中です。
こうしたコンセプトの設計が、今後案件に関わる人たち全員にとって方向性を確かめ合える地図になっていけたら嬉しいです。
最後に
このような経験を通し、コンセプト設計はデザインする上での一つの「正解」に近づく手段だと感じていますが、どうでしょうか??あくまでもこれは私なりの経験からの仮説であり、失敗や挫折を繰り返してきた中で「大切なのではないか?」と感じたことを、自己紹介のような形でお話しさせていただいたものです。
これを自己紹介と言うと、「小難しい奴!」と思われてしまうかもしれませんが、たいていのことはテキトーでおおざっぱで「死ぬこと以外カスリ傷」をモットーとする楽観的な人間ですので、避けないでやってもらえればと思います!
「コンセプトぉ??いやいや、正解ってそうじゃないでしょ!」とか、「こういう正解はどうだろう?」などいろんな方とお話しできたら楽しいだろうなと思っています。
インハウスデザイナーとしてあらたなステージからまたデザインの奥深さを楽しんでいけたらと思っております。読んでいただきありがとうございました!!