2025年5月、Figmaがサンフランシスコで開催したグローバルデザインカンファレンス Config 2025 に現地参加してきました。GMOインターネットグループからはExpertとして、GMOメディアのくるみさんとGMO Flatt Securityの私(@hrtnde) の2人が参加してきました。
本記事では、個人的に面白かったトークのまとめ、現地のデザイナーたちと直接話して得られた気づきを紹介します。
目次
Configとは?
ConfigはFigmaが主催するグローバルデザインカンファレンスで、年に1度サンフランシスコで開催されます。Figmaの新機能リリース発表に加え、世界中から招かれた登壇者による多彩なセッションが行われます。
Figmaの新機能リリース、「アイデアを形にする」をサポートするアプリケーションへ

Config 2025では「Grid」「Figma Sites」「Figma Buzz」「Figma Make」「Figma Draw」5つの機能リリースが発表されました。詳細の概要については公式ブログをご覧ください。本記事ではそれらのリリースから筆者が感じた印象を中心にお伝えいたします。
Figmaが「アイデアを形にするためのあらゆる業務」をサポートしていく意気込みを強く感じるリリースでした。たとえば、Figma Buzzでは、アセットさえあればマーケティング担当者でも簡単にバナーや動画を作成できるようになり、デザインの担い手の幅を広げています。またFigma Sitesは、FigmaでデザインしたアイディアをWebサイトとして世に公開するまでのハードルを下げ、Figma Makeでは生成AIを伴走者として、デザイナーとともに作り上げていく体験を重視していたように感じました。

Figma Makeは私の環境でも使えるようになっていたので少し試してみたのですが、Figmaで設計したアイディアを動くプロトタイプにするだけではなく、そこから生成AIとやり取りしながらプロトタイプの方向性を複数検討したり、Figma Make上で微調整がしやすくなっていました。
プロジェクトの初期段階で、ラフなスケッチを描いた後にいきなりプロトタイプを作って検証していくという進め方もできそうだなと感じました。これまでもv0などを活用して類似の試みは可能でしたが、やはりデザイナーが日常的に活用するツールの中に組み込まれたことで、この流れはより加速していくのではないかと思います。
これらの機能リリースを振り返るとFigmaがカバーしていく業務を大きく広げてきたという印象を感じます。Figmaのストアで購入したTシャツには “An Idea Application” というタグラインが記されており、「アイディアを形にする」をサポートするアプリケーションへとFigmaは進化していくぞ、という意気込みを感じた機能リリースでした。
印象に残ったセッション
筆者はGMO Flatt Securityでセキュリティ診断AIエージェント Takumiを開発していたり、業務でも積極的に生成AIを活用しているため、AI関連のトークを中心に参加しました。本記事では、その中でも特に印象深かったセッションを紹介いたします。
Crafting your AI playbook – 生成AIを活用したプロダクトデザインの課題と「遊び」の可能性

Coda CPOのLane Shackleton氏とFigma Product Manager Mihika Kapoor氏によるトークは、生成AI時代のプロダクトデザインにおける課題とその解決策としての遊びの重要性を示唆していました。特に、「Blank Canvas Paralysis」という概念は、AI Agentをデザインする私の立場にとって、非常に深く響くものでした。
Blank Canvas Paralysisとは、空白のキャンバスを前にして何から始めて良いかわからず手がつけられない症状のことですが、昨今のAI製品でも同様のことが起きていると指摘しました。例えば、Chatのようなインターフェースで無限の可能性が広がっているがゆえに、「何から始めればいいのか分からない」という戸惑いは、このBlank Canvas Paralysisの典型例です。また、Prompt Engineeringの知見がSNS上でシェアされたりしていますが、一般の多くのユーザーがその複雑な技術を習得し、使いこなすことは現実的に困難だと言っていました。
AIの能力を最大限に引き出すための専門知識が必要とされる現状はツールが持つ本来の可能性をユーザーから遠ざけているとも言えます。この課題に対し、彼らは「制約による遊びの可能性」を提案していました。あえて操作に制約を設けることで、ユーザーは限られた範囲の中でより深く探索し、創造性を発揮できるというものです。
AIを活用した機能のインターフェースにおいても、無限の選択肢を与えるのではなく、ユーザーが次に取るべき行動を優しく導いたり、探索の方向性を示唆したりする機能が不可欠だと感じました。

たとえば、Figma SlidesにおけるAdjust tone機能のように、選択肢を意図的に絞ることで、ユーザーはツールの使い方をより直感的に理解し、様々な表現を試せるようになるという学びもありました。
Beyond agents: AI as a creative partner with Joel Lewenstein – AIのメタファーが期待を形作る

AnthropicのHead of Product Design、Joel Lewenstein氏によるトークは、AIをデザインする上でメタファーがいかに強力なツールであるかを示してくれました。これまでのAI製品がCopilotというメタファーで、人間の活動を補助する役割としてAIを位置づけてきたように、新しい技術がユーザーに受け入れられるためには、既存の理解に橋渡しをするメタファーが不可欠であると彼は強調していました。
「AIが人類にとってどんな価値を持つのか」その複雑さを簡潔に伝える上で、メタファーが果たす役割の大きさを改めて認識させられました。従来のCopilotは、AIが人類にとってどういう有用性があるのかわかりやすく捉えていました。一方、モデルは日々進化しています。モデルの進化に合わせて、私たちはAIをどのようにたとえ、ユーザーに伝えていくかを考え続ける必要があります。
彼はAIをクリエイティブパートナーというメタファーで捉えていました。
あなたのことを知っており、一緒に作っていく存在であり、一緒に成長していく存在であると。
重要な学びとして、彼はメタファーは何でもよいとも言っていました。もちろん、メタファーはあなたが作ろうとしているものをユーザーに正しく伝えるものである必要はあります。
私は彼の発言からメタファーを定義することこそがAIをデザインしていく上で、我々デザイナーにとって重要な役割になると感じました。つまり、メタファーを定義することとは、「私たちデザイナーが世界をどのように解釈し、AIの可能性を理解した上で、人々がAIと相互作用する方法を形作ること」と解釈しました。
Crafting creative tools that endure – クオリティへの揺るぎないこだわり

Linear CEOのKarri Saarinen氏のトークは、生成AIに関するものではありませんでしたが、私たちデザイナーの背筋を伸ばしてくれる内容でした。
彼は、現代は技術が進歩したにもかかわらず、なぜ高品質なものが稀なのかという問いを投げかけました。それは、ソフトウェア開発が大量生産を行う製造業のように、効率化だけを重視したマインドセットに陥ったために、本来のクラフトや配慮が失われ、数値目標やMVP開発を言い訳にし、動くものをとりあえずリリースするという文化が横行してきたからだと指摘しました。
しかし、Karri氏は、品質は外部要因に左右されるものではなく、品質は選択であり、作り手の信念であると訴えました。Linearが市場で成功を収めたのは、この品質へのこだわりをビジネス戦略の核に据えたからだと言います。彼の語るLinearの品質に関する指針は、多くのプロダクト組織にとって参考になるでしょう。
1. Quality as the north star for every team:
品質をあらゆるチームの北極星とする。
2. Intuition & customers over data:
データだけでなく直感と顧客の声に耳を傾ける。
3. Hire only people who show craft and care:
クラフトと配慮を示す人材のみを採用する。
4. Small teams using their judgment:
小さなチームが自身の判断を信じる。
5. No handoffs, whole team iterates towards “right”:
エンジニアへのハンドオフで終わりではなく、チーム全体で「正しい」という感覚を追求する。
6. MVPs for internal use only:
MVPは社内利用に留め、一般公開時には高い品質基準を満たす。
7. Zero bugs policy:
バグは7日以内に修正する「ゼロバグポリシー」
CEOである彼自身がこれらの指針を深く信じ、実践しているからこそ、Linearは品質の稀少性を競争優位に変え、顧客のロイヤルティを獲得していることが強く伝わってきました。そして最後に彼はこのように発言していました。
Let’s keep making things we’re proud to put our names on:
私たちは、自分の名前を刻むに足る、誇らしいものを作り続けよう
この言葉は、私たちデザイナーが、品質へのこだわりを貫くことの重要性を改めて教えてくれます。
詳細はYouTubeや最近公開されたブログでも確認できます。気になる方はぜひご覧ください。
https://linear.app/blog/why-is-quality-so-rare
おわりに
私はConfig現地参加は今回で2度目でした。FigmaのKeynoteやセッションはすべてYouTubeで無料公開されていますが、私があえて現地参加する理由は、「世界中のデザイナーと直接交流できること」に尽きます。
前回同様、今回のConfigでも世界中のデザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャーと出会い、交流を深めることができました。リリースされた新機能に関する感想を共有しあったり、トークの学びをお互いシェアする時間は、Configで得た体験をより深く自分の中で昇華していくためにはとても大事であると実感しました。
滞在期間中はほぼ毎日ネットワーキングに参加し、アポイントを取ってランチやディナーをご一緒させていただきました。そこで出会った人たちから受ける刺激がたくさんあります。気軽に話していたデザイナーから見せてもらったプロトタイプのクオリティが凄くて衝撃を受けたり、世界を代表するようなサービスのHead of Product Designerだったり・・・!
グローバルで活躍している人々とのギャップを実感すると同時に、自分自身の現在地も再確認できた、非常に濃密な1週間となりました。
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