はじめに
生成AIの登場により、撮影をしなくても高クオリティな画像や動画をアウトプットできるようになりました。とはいえ、現時点では「作品すべてをAIで制作する」というケースはまだ少数で、ほとんどの人はコンテや映像の一部、いわば“味付け”として生成AIを活用しているのが実情だと思います。実際、私もその一人です。これまで、イメージに近い素材を探すために外出したり、一から撮影したりしていましたが、今ではディレクターとしてAIに理想のカットを伝えるだけで、短時間でイメージを生成してくれるようになりました。しかし、理想のカットを1枚生成できたとしても、次のカットでは全く違う人物や背景になってしまったり、細かい部分で破綻が起きてしまったりと、「カット間の一貫性」を保つのは意外と難しいものです。
今回は、静止画の場合において、この「カットの一貫性」を生成AIでどのように保つかについて考えていきたいと思います。
PART 1|商用利用可か確認
動画広告など営利目的で生成AIを使用する場合は「商用利用できるかどうか」はとても重要なポイントです。まずは、商用利用可か確認しましょう。
以下は、各生成AIツールの商用利用の可否を確認し、今回の制作方針を決定した背景と判断内容です。
Whiskについて
商用利用に関する明確な記載なし(2025年7月18日現在)。リスク回避の観点から、今回は使用を見送りました。
Adobe Fireflyについて
商用利用が可能と公式に明記されている(2025年7月18日現在)。ただし、他AIツールとの併用や再編集におけるライセンス上の懸念があるため、今回は使用を控えました。
ChatGPT(OpenAI)について
有料のTeamプランは商用利用が明確に許可されている(2025年7月18日現在)。今回の生成にはChatGPTを採用しました。
まとめ
上記の確認結果を踏まえ、今回はChatGPT(Teamプラン)を利用したコンテンツ制作を行いました。
PART 2|画像を生成する
ベースの画像を生成する
欲しいイメージの情報を書きなぐる
とりあえず、自分が思い描いているイメージを詳細にChatGPTに書き殴ります。上手くまとめきれない場合は情報だけ書き殴って、文章をChatGPTにまとめてもらうと良いでしょう。
プロンプト
大体のイメージが決まったのでこのプロンプトで1回投げてみます。
白い長袖のシンプルな服を着た日本人の若い男女が、明るい木製のテーブルに座っている。二人はスマートフォンを一緒に見つめており、真剣で少し心配そうな表情をしている。男性がスマートフォンを持ち、女性は淡い緑色のマグカップを持っている。部屋は白いカーテンから柔らかい自然光が差し込んでおり、背景はミニマルで小さな観葉植物が棚に置かれている。落ち着いた、 集中した雰囲気。 現代的で清潔感のあるインテリア。
生成結果
イメージ通りの画像が生成されました。この画像をベースにカットを割っていきます。
カット割をする
あなたはディレクターです
キャスト・ロケ地・カメラマンはAIがすべて用意してくれています。あとは、あなたがディレクターとして指示を出すだけです。ふわっとした指示だと撮影スタッフが混乱してしまうので、できるだけ詳細に指示出ししましょう。
指示出しのコツ
キャストへの指示出しはもちろん、カメラマンへ詳細な指示を出すことでより自分のイメージに近い画像を生成できます。最低限、カメラの知識があると表現の幅がぐっと広がると思います。これを意識してほしいカットの情報を、まとめます。
キャストの感情や表情を繊細に表す 例:「さみしげな表情で男性を見つめている」カメラの視点・構図を明示する 例:「男性の目線で、バストアップ構図、85mmレンズ、F1.8」ホワイトバランス(色温度)を指定する 例:「ホワイトバランスは5200K、自然で温かみのある色味」
自分の欲しい情報をまとめて最適なプロンプトをChatGPTにまとめてもらいます。
プロンプト
このプロンプトで指示を出します。
カメラは男性の視点を想定した構図でバストアップのフレーミング。レンズは焦点距離85mm、中望遠、F1.8で撮影されており、女性の目元にピントが合っていて、背景は美しくぼけている。撮影場所は白いカーテン越しに自然光が差し込む明るい室内。ホワイトバランスは5200Kで設定されており、肌色は自然で温かみのあるトーンに調整されている。眉をひそめて、さみしげな表情で男性を見つめている。
生成結果
意図通りのカットができました。
この調子でどんどんカットを割っていきます。
PART 3|完成作品
では、実際にこの手法で制作した「GMOとくとくBB」の動画広告をご紹介します。
安さ×速さで選ぶなら!GMOとくとくBB WiMAX|カップル別れの危機篇
https://youtu.be/-UrIwwQsmIM
まとめ
いかがだったでしょうか。今や「こんな感じで」と一言プロンプトを投げれば、AIがモデルもロケ地も撮ってきてくれます。でも、魔法のように見えて、仕上がりはディレクター(あなた)の指示力次第。ライセンスを守りつつ、表情・構図・レンズのこだわりまで詰め込めば、まるで“本当に撮った”ような一枚が生まれます。次の一枚、誰よりも理想に近づけるのは、あなたのプロンプトです。