はじめに
「そのコード、Vibeでいける?」
最近、こんな言葉を社内で聞くようになった人は、きっと少なくないはずです。
Vibe Coding——それは、AIに自然言語で指示を出してコードを生成させるという、新しい開発スタイルのこと。コードを書くというより、AIと“対話しながら形にする”という表現のほうが近いかもしれません。Vibe Codingは単なる効率化ツールではなく、個人の成長曲線を跳ね上げるトリガーになります。
本記事では、このVibe Codingというアプローチがどのようにプロトタイプ開発を変えるのか、そしてそれがエンジニアだけでなく、PM・デザイナー・BizDevなど、すべての開発関係者が“バイブコーダー”となって活用できる時代について、あくまで個人の見解でに紹介していきます。
Vibe Codingとは? 直感からはじまるコード作成
Vibe Codingは、ChatGPTやGeminiのような生成AIに対して「自然言語でやりたいことを伝える」だけで、コードやUIの原型を作ってもらう開発スタイルです。
たとえば、こんなプロンプトでUIコードが返ってきます。
# Vibe Codingのプロンプト例
"""
Create a simple chat UI using HTML and CSS.
It should have a left-aligned message bubble, a right-aligned user bubble,
and a fixed input field at the bottom.
"""
# AIが返してくるコードのイメージ(HTML抜粋)
<div class="chat-bubble left">こんにちは、今日は何を作りますか?</div>
<div class="chat-bubble right">Vibe Codingの記事を作ってるよ!</div>
コーディングは今、設計というより“即興演奏”に近づいています。つまり私たちは、AIという共演者とリアルタイムに作り上げるオーケストレーターのような存在になってきているのです。
AI駆動開発 × プロトタイプ思考:その相性
Vibe Codingは、以下の2つの開発思想と非常に相性が良いです。
● AI駆動開発(AI-Driven Development)
・AIがコードを生成、人間がプロンプト・レビュー・改善に専念
・「Prompt First」の発想
・スパイク開発との親和性が高い
● プロトタイプ駆動開発(Prototype-Driven Development)
・仕様より“まず動くもの”
・UI/UXの仮説検証に強い
・フィードバックループを高速化
これらを融合することで「直感 → 実装 → 共有 → 学び」のループが高速化されます。
職種別:Vibe Codingの使いどころマトリクス
職種活用シーンの例得られるメリット注意ポイントPM機能要件のプロトタイプ化ユーザーストーリーの視覚化要件のブレを減らせるエンジニアとの会話が早くなるラフで十分”の線引きが必要デザイナーUX設計前のUIイメージ生成インタラクションの試作仮説検証の高速化チームとの視覚的な合意形成AIの出力を鵜呑みにせず目的に照らす判断力BizDev / 営業企画顧客提案用デモUI生成業務フローの可視化“画面で語れる”プレゼンが可能に実装可能性の見極めには現場連携が必須CS / オペレーション内部ツールの試作、FAQボットの原型作成課題→改善提案→共有の流れが早くなる管理・保守の想定が抜けがちなので注意若手エンジニア / 学習者フロント練習、API設計の理解成果が見える → 学びが定着しやすい生成コードの“理由”を考える習慣づけ
職種にかかわらず、「AIをどう使い分け、活かし、連携させるか」という視点は今後ますます重要です。複数AIを活用し統合する「AIオーケストレーター」的な感覚が、今後のスキルの中核になっていくでしょう。
🧐 あれ、中堅エンジニアは?
マトリクスを見て、「いや、自分たち中堅エンジニアは?」と思った方へ。
実は、Vibe Codingを最も戦略的に活用できるのが中堅層です。
・チームに“どう伝えるか”という観点でプロンプトを設計する
・属人化しがちな生成プロンプトのテンプレを共通資産化する
・スパイク開発の成果を構造化してWikiに落とし込む
AIをただ使うだけでなく、「この場面で、どのAIに、どう指示するか」を判断する能力
それが、AI時代の“AIQ(AI Intelligence Quotient)”です。中堅エンジニアにこそ、AIQの設計力が求められています。
🤖 Vibe Codingに潜む課題とその処方箋
課題解決アプローチコード品質のばらつき静的解析・テスト自動化・AIレビュー補完(Copilotなど)ドキュメント不足プロンプトログの保存+コメント付きPR運用属人化しやすいプロンプトテンプレ・Tips共有・ペアVibe会仕様とコードの乖離要件→画面→データ設計の3点セットを意識して並行記述
🎯 まとめ:AIは奏でる、構成するのは私たち
Vibe Codingは、AIに譜面を渡し、演奏させるようなもの。でも、その楽曲に“構造”を与え、どんな物語を奏でるかを決めるのは人間側です。
単に「AIに任せる」という話ではありません。どの場面で、どのAIに、どんな目的を持って役割を与えるか。それを設計し、チームに届け、知として残す。そこにこそ人の(エンジニアとしての)価値が宿ります。
Vibe Codingはその実践の入り口。プロンプトという楽譜を使いこなし、動くシステムを、誰かの価値につなげていくその手触りを持った人こそが、これからの開発をリードしていくはずです。