こんにちは。GMOインターネットのネットワークソリューション開発部でディレクターを担当している平松です。日々多様なプロジェクトに携わっていますが、ディレクターという仕事は、エンジニアやデザイナーのように手を動かして成果物を作る役割ではなく、プロジェクト全体を見渡しながらチームを導く立場です。本ブログでは、ディレクターに関する記事が少なかった為、今回はディレクターについてその仕事内容や、仕事に対する考え方を紹介します。もし、開発現場でディレクターとかかわる場面がありましたら、こういった立場・考え方のもと職務を遂行しているんだなとご理解いただけると幸いです。
Webディレクターとは
Webディレクターは、一言でいえば「プロジェクトのつなぎ役」です。クライアント(=私の場合は主に事業部の方々)の想いをくみ取り、それをデザイナーやエンジニアにわかりやすく翻訳し、最終的に形にしていく仕事です。
たとえばクライアントから「もっと使いやすい契約管理システムにしてほしい」と要望をいただいた場合、その“使いやすい”が指すものは人によって違います。操作がシンプルなことなのか、見た目が美しいことなのか、あるいは処理速度が速いことなのか。ここを丁寧に掘り下げ、チーム全員が同じイメージを持てるよう言語化・設計するのがディレクターの最初の大切な役割です。
さらにプロジェクトが進むと、ディレクターは「交通整理係」にもなります。・デザイナーから「このUIはもっと余白を広くしたい」と相談される・エンジニアから「その変更だと工数が倍になる」と指摘される・クライアントから「もっと早くリリースしてほしい」と要望される
このように利害がぶつかり合う場面は日常茶飯事です。そこでディレクターは調整役として、優先順位を整理し、全員が納得できる落としどころを探ります。舞台裏では、ミーティングで何度も「三者の意見」をすり合わせているのです。
また、ディレクターは「品質の守護者」でもあります。プロジェクトマネージャー(PM)が主にスケジュールや予算といった“進行とリソース管理”に注力するのに対し、ディレクターは「この画面を触ったユーザーは迷わないか?」「使い続けたいと思える体験になっているか?」といった、体験そのものに深く関わります。完成直前のチェックでは、ボタンの配置ひとつ、文字の言い回しひとつにまで目を光らせることも少なくありません。
つまりWebディレクターとは、「人と人をつなぎ、体験の質を守り抜く舞台裏の指揮者」 といえる存在なのです。
具体的な仕事内容
Webディレクターの仕事は、見えないところでの「段取り」と「調整」が中心です。
・要件定義とヒアリングクライアントとの最初の打ち合わせでは、単に「こんな契約管理システムを作りたい」という希望を聞くだけではありません。「なぜそれが必要なのか?」「誰が使うのか?」を掘り下げることで、本当の課題を明らかにしていきます。実はクライアント自身も気づいていないニーズが隠れていることも多く、それを引き出すのも重要な役割です。
・資料作成と共有ヒアリングした内容をもとに、要件定義書や画面設計書、業務フロー図などを作成します。ここでの工夫は「専門用語をなるべく使わないこと」。デザイナーやエンジニアだけでなく、クライアントにもわかる形に落とし込むのがディレクターの腕の見せどころです。
・進行管理と調整開発が進むと、予定通りに進まないことが必ず起こります。機能追加、デザイン修正、スケジュールの調整…。その度に「どこを優先し、どこを後回しにするか」を判断し、チーム全体を再び同じ方向に向けるのが舞台裏の大仕事です。
・品質チェックと改善テスト段階では、要件定義書をもとに検証項目を作成し、実際にユーザーになりきって操作します。要件定義通りの動作と結果になっているか細かな確認を行い、完成度を上げていきます。リリース後も開発効果の確認を行い、データを見ながら改善提案を続けるのも、ディレクターの責任です。
仕事で大切にしていること
私が常に意識しているのは、「人をつなぎ、体験の質を守り、事業に貢献する」 ということです。
・ユーザー視点時には「クライアントの要望」と「ユーザーにとっての使いやすさ」が食い違うこともあります。その時は勇気を持って「ユーザーにとっては不便になります」と伝えることが大切です。
・ビジネスゴール達成Webアプリは見た目が美しいだけでは意味がありません。クライアントのビジネスにどう貢献できるかを常に考えています。
・チームメンバーの働きやすさエンジニアが夜中まで修正に追われたり、デザイナーが納期に追い込まれたりすると、良い成果物は生まれません。全員が気持ちよく働ける環境を整えるのも舞台裏の大事な仕事です。
・コミュニケーションと認識統一情報が一部の人だけに留まると、必ず齟齬が生まれます。「情報はなるべくオープンに、全員に共有する」ことを念頭において、認識齟齬がおきないよう注意深く進めます。また、情報資料は読む人の立場を考えて、分かりやすくまとめるよう心掛けています。
Webディレクターのやりがいと難しさ
・やりがいリリース直後に「すごく使いやすくになった!」とユーザーから声が上がった時や、クライアントが「おかげさまで売上が伸びました」と喜んでくれた時は、この仕事をやっていて本当に良かったと思えます。特にリリース直前の緊張感の中、全員で最後の仕上げを終えた瞬間の達成感は格別のものです。
・難しさ一方で「納期は変えられないけど、この機能も追加したい」という無茶な要望に直面することも多いです。その時はチームに無理をさせるのではなく、代替案や段階的なリリースを提案することでバランスを取ります。舞台裏では常に“現実と理想の間での綱渡り”をしているのです。
今後の展望
Webの世界は日々進化しています。AIやノーコードツール、クラウドサービスの進歩によって、開発手法は劇的に変化しています。これからも最新技術を取り入れながら、ユーザー体験を高めるディレクションを心がけたいと考えています。
まとめ
Webディレクターは表に出ることは少ないですが、裏側でチームをつなぎ、体験の質を守り続ける存在 です。派手さはありませんが、プロジェクトの成否を大きく左右する責任ある役割です。
もしディレクターを目指す方がいれば、「技術」だけでなく「人をまとめる力」「相手の立場に立って考える力」をぜひ身につけてほしいと思います。そうすれば、舞台裏からでもプロジェクト全体を輝かせることができます。