de:code 2016 イベントレポート

すべてのITに携わるエンジニアのための年に一度の技術イベント

2016年5月24日~25日、「de:code 2016」がザ・プリンス・パークタワー東京にて2日間にわたり開催されました。キーノートセッションは10時より開始予定。30分前に到着するも、すでにメイン会場は満席。生ナデラが登場するとのことでその効果は絶大のようです。
今回は、このde:code 2016のイベントレポートをお届けします。

オープニング

まず、MVPの参加者は受付にてMVPの缶バッチを渡され、参加者パスとともに常時携帯することになっています。これは、一般の方々から気軽に質問を受け付けて、応答するという試みです。

MVP用の缶バッチ

キーノートセッションまでの数十分の待ち時間には、Channel 9によるライブトークの中継が放送され、のっけからJavaのエバンジェリストと.Netのエバンジェリストのトークセッションがスタート。Microsoftの新しい方向性を示しているかのようです。ライブ放送はChannel 9の機材とスタッフがまるごと本国からこの会場に赴き、2日間随時様々なライブ放送を行っていました。ちょっとずつ新しい趣向をこらした試みがいくつかあり、参加者を楽しませくれます。

キーノートセッション

キーノートセッションは、Channel 9で録画されたものが公開されています。

https://channel9.msdn.com/Events/de-code/2016/keynote-jp

キーノートセッションで気になった点をピックアップしてみます。

まずは、「コルタナ」や「りんな」に代表される言語解析処理、音声認識の技術が今後アプリケーションの新しいインターフェースとなる、という点です。これは”conversation as a platform”という概念に基づいた考え方で、Microsoftはこれに注力していくようです。

すでにMicrosoft Azureでは、プレビュー版として「Cognitive Services」という名前で、言語、音声、視覚、知覚など22のAPIを利用して様々なアプリケーション開発のための環境が提供されています。

キーノート後のブレイクアウトセッションでは、実際にCognitive ServicesのAPIを使った音声認識のサンプルアプリのデモがあり、簡単なコードですぐに利用できる状態となっていました。開発者にとっては、楽しく、しかも興味深い機能で開発意欲を掻き立てられます。

りんな
Microsoft Azure Cognitive Services (プレビュー)

2つ目は、最近のMicrosoftの変革の代名詞となっているオープンソース化について。もはやオープンソースか、Microsoft製品かという話ではなく、今現在何が必要とされ、何が良いものかを追求すべきであり、良いものはどんどん取り入れていくのが当然との姿勢を示していました。

開発者には世の中に役立つものを作る使命と責任があるとし、そのために開発者にとっていかに効率的に、便利に開発を行う環境を提供するかといった点について、Microsoftは最大限の注力を行うとのことです。

Windows10上で.Netだけではなく、Ubuntuのシェル「Bash」が動くようになったり、Xamarinを無償提供することで、スマートフォンの開発までをすべて同一環境でできるようにしています。Visual Studio Codeは様々な言語の開発用エディターとして無償で提供されています。Microsoft AzureではほとんどのサービスにおいてAPIが公開され、開発者が同一IDでどんな状況でも利用することができる仕組みとなっています。

これまでは、「すべてをMicrosoftで」といった考え方で、Microsoft独自の仕様や製品を使ってもらう(使わせる)姿勢でしたが、まさか、Windows上でUbuntuのバイナリがネイティブで動くようになるとは、ここまで来たかという感じです。

周りのエンジニア、開発者の話を聞くと、実はこれらの機能や製品は待ちに待っていたもののようです。Windowsしか知らない自分にとっては他人事でしたが、Linuxユーザーやスマートフォンアプリの開発者にとって、Windowsの操作性の中ですべての開発環境が集約できることはとてもすばらしいこと、ありがたいことのようなのです。

CEO サティア・ナデラ氏は、「Microsoftは開発者を愛している。」と言っていました。Microsoftの製品を生かしつつ、すべての開発者にとって使いやすい環境を提供するということはこういうことなのかと納得した次第です。

ブレイクアウトセッション

キーノート後には、151ものブレイクアウトセッションが、様々なカテゴリー別に開催されました。やはり、Microsoft Azure関係は人気も高いようで、どのセッションもほぼ満席状態のようでした。

また、iOSやAndroidのアプリが1つのコードで開発できるXamarinが無償提供されるということもあり、Xamarin関係のセッションも注目度が高いようでした。

de:codeは開発者のためのイベントと捉えられがちですが、インフラ分野もしっかりセッションが用意されていました。これまでのインフラ関係のセッションだと、製品のデモを中心に、新しい機能紹介や操作説明が多かったのですが、総合して感じたのはサーバーエンジニアもコードで仕事することになる、ということでした。

“Infrastructure as Code”の考え方の元、いくつかのインフラ系のセッションでコードを使ってサーバーをデプロイといったデモが披露されていました。すでにMicrosoft Azureでは、仮想マシンを作る際にJSONを使って素早く簡単に大量に仮想マシンが作成できるようになっています。これと同様に、いままでは、クラスターを組むときなどはシステムのGUIを使ってかなり長い時間をかけて構築していたようなものが、PowerShellのスクリプトであっという間に完成、といった状況になっています。

実際に、自分で以前「スケールアウトファイルサーバー(SOFS)」の構築手順をスクリーンショットを取りつつ解説したことがあります。
Hyper-V上に構築するスケールアウトファイルサーバー(SOFS) Vol.1

このときは数時間かかる作業でしたが、NanoServerベースのSOFSはものの15分ほどで完了してしまうということで、デモを見て感動すら覚えました。Windows Serverと言いつつも、すでにWindows Serverからは安定性や安全性の確保、効率アップのためにWindowが消えつつあります。Windowsを十数年扱ってきた者として、使いづらいなと思う反面、こういったメリットを享受できるのでは、なんとも複雑な気持ちにさせられます。

まとめ

de:code 2016では、Windowsを使ってあらゆるアプリケーションを開発してもらうための様々な取り組みや製品が紹介されていました。開発者にとって使いやすく、便利なものが無償で提供されるのであれば、当然ユーザーは増えるといった結果につながります。

今までのように強引にでもMicrosoft製品を使わせるといった手法ではなく、結果としてMicrosoftが選ばれる、といった柔軟な姿勢に変わってきた表れだと感じました。

開発者にとっては、わくわくするような新しインターフェースや仕組みが今後もさらに提供されるようです。これだけの環境が用意されている中で、インフラエンジニアといえども開発に手を付けないのはもったいないことです。インフラエンジニアもコードで仕事する時代にすでになっています。やり方、考え方、発想の転換がMicrosoftが変革を迎えている今だからこそ必要なのではないでしょうか。

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ブログの著者欄

樋口 勝一

GMOインターネットグループ株式会社

1999年6月GMOインターネットグループ株式会社に入社。Windows Serverをプラットフォームとしたサービス開発から運用・保守まで幅広く担当。講演登壇や出版、ネット記事連載などでマイクロソフト社と強い信頼関係を構築。「マイクロソフトMVPアワード」を15度受賞し、インターネットソリューションのスペシャリストとして活躍。

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