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ローカルLLMの性能向上技術 : RAGとファインチューニングの比較ポイント

皆さんはじめまして。アーキテクトチームに所属している宇山です。
私は現在、あるプロジェクトで大量の会話データを活用したローカルな大規模言語モデル(LLM)を開発するべく日々検討を重ねています。
今回はその性能を向上させる2つの重要な技術である、RAG(Retrieval-Augmented Generation)とファインチューニングに焦点を当てて解説していきます。これらの手法は、AIの性能を向上させる上で非常に重要ですが、未経験の方にはちょっと難しく感じるかもしれません。そこで、できるだけわかりやすく説明していきますので、ぜひ最後までお付き合いください。

ローカルLLMとは

まず、「ローカルLLM」について簡単に説明します。ローカルLLMとは、ChatGPT、Gemini、Claudeのような外部のSaaSサービスを介さず、ユーザーや組織が管理する環境で直接動作する大規模言語モデルのことです。とはいえ、パソコン上で動作するような小さなモデルでは多くのデータを扱えないため、弊社が提供しているConoHa GPUサーバのようなVPSを利用します。これにより、データのプライバシーも確保しやすくなります。

なぜRAGやファインチューニングが必要なのか

事前学習済みのLLMは非常に強力ですが、以下のような限界があります:

1. 知識の更新: LLMの知識は学習時点で固定されます。新しい情報に対応できません。
2. 専門性の不足: 一般的な知識は広くカバーしていますが、特定の分野や業界に特化した深い知識は不十分な場合があります。
3. タスク特化の難しさ: 汎用モデルは多様なタスクをこなせますが、特定のタスクで人間レベルの精度を出すのは難しいことがあります。
4. プライバシーとセキュリティ: 一般的なLLMは公開データで学習されているため、機密情報を扱う際にはリスクがあります。
5. カスタマイズの制限: ユーザーや組織固有のニーズに合わせてモデルの動作を調整することが困難です。

これらの課題に対処するために、RAGとファインチューニングが重要になってきます。これらの技術を使用することで、LLMの能力を大幅に向上させ、より実用的で効果的なAIソリューションを作ることができるのです。

RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは

RAGは、「検索拡張生成」と訳されることもある技術で、厳密には学習手法ではなく、LLMの推論プロセスを拡張する方法です。

RAGの特徴:

  • 既存のLLMを使用し、外部の知識ベースから関連情報を取得して回答を生成します。
  • モデル自体を変更せず、質問に応じて適切な情報を検索し、それを基に回答を生成します。

RAGの利点:

  • モデルの再学習が不要なので、新しい情報を素早く取り入れられます。
  • 特定の分野や最新の情報に対応しやすくなります。

RAGの欠点:

  • 外部知識ベースの質と量に依存するため、準備に時間がかかる場合があります。
  • 検索精度によって回答の質が左右されます。

ファインチューニングとは

ファインチューニングは、既存の事前学習済みモデルを特定のタスクや領域に適応させる学習手法です。

ファインチューニングの特徴:

  • 事前学習済みのLLMを、特定のデータセットで追加学習させます。
  • モデルの重みを調整し、特定のタスクや領域に特化させます。

ファインチューニングの利点:

  • 特定の分野や用途に高度に最適化できます。
  • 一度学習すれば、その後の推論が高速になります。

ファインチューニングの欠点:

  • 大量の学習データと計算リソースが必要です。
  • 新しい情報を追加する際は再学習が必要になります。

RAGとファインチューニングの比較

わかりやすく表にまとめてみました。

特徴RAGファインチューニング
学習の必要性不要必要
新情報の追加容易再学習が必要
リソース要求比較的少ない多い
特定分野への適応柔軟高度に最適化可能
推論速度やや遅い速い

どちらを選ぶべきか

RAGが適している場合:

  • 頻繁に更新される情報を扱う必要がある
  • 特定のドメイン知識を柔軟に組み込みたい
  • 学習のためのリソースが限られている

ファインチューニングが適している場合:

  • 特定の領域で非常に高い精度が求められる
  • 推論速度が重要である
  • 十分な学習データとリソースがある

まとめ

RAGとファインチューニングは、どちらもローカルLLMの性能を向上させる強力な手法です。これらの技術は、LLMの限界を克服し、より適応性が高く、精度の高いAIソリューションを実現するために不可欠です。RAGは柔軟性と即時性に優れ、ファインチューニングは特定タスクへの最適化に強みがあります。プロジェクトの要件や利用可能なリソースを考慮して、適切な手法を選択することが重要です。

ちなみに我々のプロジェクトでは両方を採用し、最適な手法を検討しています。

AI技術は日々進化しています。ぜひ、自身のプロジェクトに最適な方法を見つけてみてください。

ブログの著者欄

宇山 幸男

GMOインターネットグループ株式会社

メーカー系保守会社、電力関連会社でインフラエンジニアとして勤務後、GMOインターネットグループに入社 / インフラ・運用本部 アーキテクチャ統括チーム アーキテクトチーム所属 / 業務効率化を主軸に活動しています。

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