GMOインターネットグループが4月から展開する年間施策 Creator Synergy Project の一環として、本ブログでもデザイナー・クリエイターへのインタビュー連載をスタートします。
第6回は、GMOグローバルサイン・ホールディングス 企画開発部 デザインセクション チーフの田伐(たぎり)直子さん。UI/UXやリブランディングを牽引してきた田伐さんの原点に迫り、21歳での気づき、CSからの転身、大阪から東京、そして2011年のジョインまでをたどります。
さらに産休と復帰を経てディレクターへ挑んだ意思決定が、現在の実装力と組織観をどう形づくったのか。現場で鍛えた視点と、より良いものへ変えていく勇気。その始まりの物語です。
目次
未経験からIT業界へ。夢のWebデザイナーになるまで
—デザインに目覚めたきっかけは?

田伐
本格的にデザインを意識したのは21歳で、初めて自分のパソコンを買ったときでした。インターネットで遊んでいるうちに絵を描いてみたら、プログラマーをしていた友人から「直ちゃん、デザイナーやったら?」と声をかけられたんです。

田伐 直子(たぎり なおこ)|GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 企画開発部 デザインセクション チーフ
大阪府出身。Webサービス事業会社のカスタマーサポートからキャリアをスタートし、2011年にGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社へ入社。2015年にディレクターへ転身、2018年にはチーフへ就任し、チームを16名規模に拡大。クラウドインフラ事業のリブランディングを推進した。2019年には「Designサークル」を設立し、hakaru.ai byGMOの立ち上げでグッドデザイン賞を受賞。二度の産休を経て、電子印鑑GMOサインのUI/UXやブランドデザイン全般を牽引し、2025年には長期ビジョン「Next 2040」策定チームに参画。成果を出す「勝つデザイン」と、使う人に寄り添う「やさしいデザイン」の両立を目指し、次世代リーダーの育成やグローバル対応UI/UXの強化にも取り組んでいる。

田伐
そのときは「デザイナーって何?」という感じで、インターネットの仕組みすらよく分かっていませんでした。ところが友人にHTMLを教えてもらうと「めっちゃ面白い!」と夢中になって。それが、デザインとの出会いでしたね。
当時は飲食業に携わっていて、オフィスワーカーへの憧れもありました。そんなときに友人から未経験歓迎のWebデザイナー案件を紹介され、勢いのまま、アルバイトからキャリアをスタートしました。
もちろん最初からデザイナーになれたわけではなく、まずはITを知るためにカスタマーサポートからスタートしました。
ありがたいことに気に入っていただけて、3カ月ほどで正社員に。その間にIT業界を学びながら独学でWebデザインを勉強し始めました。CSとして関わるなかで、お客さまから「ここが使いづらい」「分からない」といった声を直接聞けたのは大きかったですね。
最後の1年くらいは、デザイナーと一緒に「この画面はこうしたほうがいい」と提案するようになり、UIデザインのレビューにも関わるようになっていました。その経験が、デザインの道に本格的に進む後押しになったと思います。


田伐
26歳くらいのときに「本当にWebデザイナーになりたい」と思ったんです。でも、当時の大阪では未経験から挑戦できる仕事が見つからなかった。「それなら東京に行こう」と決めました。
それを当時の社長に伝えたところ、「東京オフィスを作るから、生活が落ち着くまでそこで働きなさい」と上京を支援してくださいました。そのご厚意に甘えて東京へ移り、他社のオフィスに間借りする形で働き始めました。
それでも1年後には「やっぱりWebデザイナーになりたい」と思い、辞める決意をしたんです。すると、間借り先の社長から「そのままうちで働いたら?」と声をかけてもらえて。人のご縁で、上京から転職まで望んだ通りになるという経験をしました。
その会社は、現在のGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社と関わりがあり、私はそこで商材のWebデザインを担当するようになりました。そして2011年、組織再編に伴い、正式にGMOインターネットグループに所属することとなったんです。振り返ると、本当に人とのご縁がつないでくれたキャリアでした。今でも支えてくださった方たちには心から感謝しております。
独学から現場へ。背中で学ぶ、悔し泣きの日々
—入社後はどのように動かれたのでしょうか。

田伐
まずはレンタルサーバーやホスティングサービスのWebデザインを担当しました。ただ、即戦力には程遠い状況。先輩デザイナーにアシスタントとしてつく形で、言われたものを制作していました。
そもそもデザインも独学だったので、ビジネスと接続しながらデザインを学んだのは入社してからです。先輩にしごいてもらい、とにかく自分でつくってレビューを受ける、その繰り返しでした。教科書的に学ぶというよりは、背中を見て育つスタイルでした。
—うまくいかなくて悔しい思いをすることも多かったのでは。

田伐
何度も泣きました。負けん気が強いので、すべて悔し泣きです。「どうしたら認めてもらえるんだろう」と必死に取り組みました。
ただ、コーディングが少しできたことや、イラストを描けることが多少は役に立ちました。そこから「Webページを1ページ作ってみよう」と任せてもらうなどして、徐々に実務の難易度を上げてもらえたのがありがたかったです。広告バナー1枚ですら、世に出るのが嬉しかったですね。

—先輩デザイナーの背中を追いながら、いろいろなことを吸収されたのですね。

田伐
本当にそう思います。振り返ると、マインド面では大きく2つのことを学びました。
まずは、その方が日常のあらゆる場面でデザインを観察していたことです。子育てで忙しい方だったのに、常に生活の中でデザインを意識していて、「生活の一部としてデザインを見る」感覚が自分にも根づきました。
もう一つ印象的だったのは、「変えるのは悪いことじゃない」とズバッと言い切っていたことです。
私はそれまで、「意見をコロコロ変えるのはよくない」「周囲を振り回すことになるんじゃないか」と不安に思っていました。でも、「こっちが良いと思ったなら、変える」とはっきり言われて目が覚めたんです。
IT業界はトレンドの変化が激しいからこそ、より良い方向が見えたなら迷わず修正することが大切だと感じました。常に最適解を探し続けるために、観察と変化を意識することは今でも欠かせません。
産休→復帰で加速した成長。「8時間で最大の成果を出す」
—怒涛の成長のなか、一度目の産休に入られたと聞きました。

田伐
はい。当時はただ「つくること」が楽しくて仕方なく、リリース前に夜遅くまで残業するのも、まるでお祭りのような感覚でした。それくらい夢中ななかで、妊娠がわかったんです。
正直に言うと、一番怖かったのは「産休でキャッチアップできなくなること」でした。だから5か月で復帰を決めました。
幸い、会社にはパートナー(従業員)向けの社内保育園「キッズルーム GMO Bears」があって、途中で子どもの顔を見に行ったり授乳に行ったりもできたので、預けることへの罪悪感が軽くなったのも大きかったです。
—出産を経て、ご自身にはどんな変化がありましたか。

田伐
産んでみると、自分が「スーパーサイヤ人モード」に入ったように感じました。本能的に「子どもを守る」スイッチが入ったのかもしれません。疲れているはずなのに、エネルギーが前向きに湧いてくるんです。時間が限られているからこそ成果や成長を強く意識するようになり、むしろ爆速で成長できたようにも感じました。


田伐
それに、仕事と子育てはお互いを支え合う存在になりました。仕事があったからこそ育児にほどよい距離感を持てたし、逆に仕事で苦しいときには、子どもが「ママ、頑張ってね」と手紙をくれるなどして、力をもらえた。2つのチャンネルを持てたことが、今の私の働き方を支える大きな土台になっています。
—育休からの復帰後はディレクターに転身されたそうですね。あえてこのタイミングでチャレンジされたのはなぜでしょう。

田伐
フルタイムで復帰したとはいえ、子どもがいる以上、これまでのように自由に時間を使えなくなるのは明らかでした。限られた時間で「言われたものを作るだけ」のデザイナーになるのは避けたいと思ったんです。ディレクターなら残業ができなくても、ある程度大きな仕事を動かせる。そう考えて、自分からお願いしてチャレンジしました。
—チャレンジの結果は。

田伐
プロジェクトを自分の思う形に進めていけるのがとても楽しかったです。それまでにはチーム内のディレクターとしか話す機会がなかったのが、ディレクターになったことでマーケターや部長、さらには担当役員とも直接やり取りできるようになった。それが刺激的で、何より面白かったですね。
—会社側もチャレンジの背中を押してくれたのですね。

田伐
そうですね。「やってみればいいじゃん」という雰囲気で受け入れてもらえました。良くも悪くも「ママだから」という手加減は一切ありませんでした。もともと「自分で動かなければ何も始まらない」という企業風土なので、手を挙げる限りは成長させてくれるんです。とはいえ大企業なのでコンプライアンスもしっかりしていて、マタハラのようなことも一切ありませんでした。本当にフェアな環境でしたね。
後編につづく
デザイン未経験からキャリアを歩み始め、試行錯誤を経て身につけたデザイナーの基礎。
田伐さんの成長の背景には、先輩の背中を追いかける日々や、産休・育休を経て挑んだディレクターへの転身といった転機がありました。
後編では、チーフ就任からチーム拡大、リブランディングの裏側、そして“勝つデザイン”と“やさしいデザイン”の両立に挑む現在の姿に迫ります。
▽インタビュー後編はこちらから
【後編】産休から復帰、コロナ禍の荒波を越えて描く「2040年の設計図」


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