インハウス的 良いデザイナーとは?

こんにちは。GMOインターネットグループ株式会社のデザイナー 勝俣です。
デザイナーやデザインに関わる方が思考するであろう「良いデザイナー」とは何かについて言及して行きます。さらにインハウスならではの特徴についても触れられればと思います。

良いデザイナーとは?

16年ほどインハウスデザイナーをしています。以前こうした記事を執筆いたしました。組織に属しデザインを提供するデザイナーとしてどうあるべきか?日々考えている一人です。
早速ですが、インハウスに限らず一般的にどのようなデザイナーが良いとされるのかをChatGPTに聞いてみました。

良いデザイナーは以下の特性を持っています:

1. クリエイティブ能力
創造力 – 独創的で斬新なアイデアを生み出す能力。
問題解決能力 – デザイン上の課題やクライアントのニーズに適切に対応する力。
ユーザー中心設計 – UXを考慮し、ユーザーの視点でデザインする力。

2. 技術的スキルと効率性
技術力 – デザインソフトやツールを熟知し、効果的に使用するスキル。
細部へのこだわり – 小さなディテールにも注意を払い、全体の品質を高める能力。
時間管理能力 – 納期を守り、効率的に作業を進めるスキル。

3. 適応力と成長意欲
柔軟性 – 変化やフィードバックに迅速に対応し、デザインを調整する柔軟な姿勢。
コミュニケーション力 – クライアントやチームとの円滑なやり取りができる能力。
継続的な学習意欲 – 常に新しいデザイントレンドや技術を学び続ける姿勢。

すごい時代に生きています。これを自分で書いたらどれほどの時間がかかったでしょう。ありがとう、ChatGPT。さらに文章量も増やしてくれて、本当に頼りになります。やっぱりズッ友だよ(再
それでは、私の独断と偏見を織り交ぜてそれぞれの項目を掘り下げてみましょう。

1. クリエイティブ能力

創造力

創造力とは、機能やアイデンティティを持つ新しいものを生み出す原動力です。関連する言葉として「アイデア」や「工夫」がありますが、特にアイデアは「既存の要素を新たに組み合わせること以外の何ものでもない」と言われています。情報を正確に整理した上で、要素が持つ抽象・具象のイメージを作り、その接点に浮かぶものがアイディアということでしょうか。
実現可能な範囲を意識しつつ、どれだけ高次元へ昇華できるかは、まさに創造力次第だといえるでしょう。「既存の要素」は、自らが身につけた知識やこれまでの経験から形成されるものです。したがって、それらの蓄積が豊富であるほど、創造力を発揮する際の重要なポイントとなるのではないでしょうか。

問題解決能力

地味ではありますが、確実に求められるスキルです。学校などで「デザインとは問題解決である」と教わりますが、正直なところピンときていませんでした。しかし、ある先輩は「良いデザイナーは良い医者のようなもの」との信条のもと、関わる事業やサービスの問題点を見つけ出し、クリエイティブの側面から対処する姿を目の当たりにし理解するに至ります。

デザインの現場では、「サービスの◯◯がユーザーに理解されにくい」「スペースは限られているが、◯と◯をどうしても入れたい」「このボタンだとユーザーがクリックしない」など、解決しなければならない問題が常にあります。
こうした課題に対して、当事者として向き合い、与えられた条件の中で知恵を絞るしかありません。それが、デザインにおける問題解決能力の本質ではないでしょうか。

ユーザー中心設計

細かなユーザー心理を計測する手法が増え、精度の高いトライアンドエラーが可能な時代です。サービスに触れることで得られる体験そのものがデザインされ、いかに快適で心地よいアウトプットを提供できるかが重要です。
また、様々な商品やサービスが日々アップデートされている現状にアンテナを張りつつ、私たち自身が日常生活の中で「なんか使いにくい」「◯の情報がどこにあるかわからない」と感じた経験を、デザインに活かすことができるでしょう。こうした小さなストレスを経験として蓄積し、関わる案件で同じようなストレスをユーザーに与えないよう心がけることが、ユーザー中心設計の大切な準備だと言えます。

2. 技術的スキルと効率性

技術力

グラフィックであればIllustratorやPhotoshop、WebデザインではXDやFigma、動画編集ではPremiereやAfter Effectsといった具合に、分野ごとに使用するソフトウェアやアプリは異なります。しかし、その習熟度によって、アウトプットのスピードとクオリティに大きな差が生まれることは確かです。上手い人は本当に驚くほど速いです。
最近では、チュートリアル動画を手軽に見つけることができ、常にスキルをアップデートすることが可能です。YouTubeも有益ですが、個人的にはInstagramが一番便利だと感じています。動画時代万歳。
手先の技術ももちろん重要ですが、スタートからゴールまでの明確なロードマップを描くこと、つまり技術を支える「設計力」も欠かせません。思考し、論理的に物事を組み立てる力も、技術力に含まれると考えています。「アイデアはあるが、形にするのが難しい」というジレンマは常につきまといますが、日々の鍛錬がその克服に繋がるでしょう。

細部へのこだわり

「神は細部に宿る」。配置したイメージのトリミング、色彩のバランス、文字のメリハリやカーニング、イラストの線の太さ、そして余白の美しさ——これら細かな要素をどれだけ上手く組み合わせて高次元に昇華させられるかが、デザインのクオリティを左右します。一つの問題を解決すると、新たに気になる箇所が見えてくることもしばしばです。また、自ら作り進めたデザインを、自ら客観的に評価できるかも非常に重要なポイントです。
こうした細部へのこだわりは、制作プロセスの最後に訪れることが多く、そのためにはいかに他のプロセスを疎かにせず迅速にクリアしこのフェーズに早く到達できるかがカギとなります。

時間管理力

時間は誰に対しても平等に与えられるものです。忌み嫌われる「締切」ですが、これがあることで複雑な条件をまとめるための高い集中力が発揮されることをこの歳になってようやく理解できました。あまりに追われすぎると心が疲弊してしまいますので、疲労度や回復力を正しく認識しバランスを取ることが最も大切です。

1日の中でも、コンディションは変化します。例えば、午前中は作業や思考のクオリティが最も高く、夜に2時間かけた作業が朝なら30分で終わることもよくあります。昼食後の午後は生産性が落ちやすいもので、時には思い切って昼寝を取り入れるのも一つの方法です。どの時間をどの作業に充てるか、そしてそれをいかに有効に使うかが、まさに時間管理力の本質だと言えるでしょう。
一人の生活者として、社会生活をしっかり享受することも重要です。生活の質(QOL)を高めることは、デザイナーとしての仕事にも良い影響を与えるため、積極的に追求すべきです。

3. 適応力と成長意欲

柔軟性

案件の前提が覆るという経験は、誰しも一度や二度は経験があるのではないでしょうか。せっかく熟慮したデザインが崩れてしまいモチベーションも急降下です。
ですが、新規プロジェクトのように0から1を生み出す現場では様々な力学が働きます。ビジネスモデルやスキームの構築はビジネスの根幹であり、その組み立て次第で前提が崩れてしまうこともあります。
こうした状況では、事前に変更の可能性を察しデザインの球数を増やすことを意識しておく必要があります。また、再提案が必要となった際には、一度出したデザインの部分的な修正では収まりにくく、潔く手放す気持ちの切り替えも必要です。

コミュニケーション力

デザインは受注産業であり、異なる分野の人々と共に創り上げるため、コミュニケーション能力は欠かせません。関係者とのやり取りが円滑に進むか、それとも障害になるかは、デザイナーのコミュニケーション次第です。
例えば、なんとなく気後れしているディレクターに「この前のデザイン、気になる点がありますか?修正しますよ!」と声をかけるだけで進行がスムーズになることもあります。また、意見が分かれる場面で「一旦両案ともご用意してみます」と手間を惜しまない姿勢が、結果的に最短距離ということも少なくありません。
また、チーム内にデザイナーが自分だけという場合もあるでしょう。そんな時こそ謙虚さを忘れず、他のメンバーと目線を合わせて丁寧なコミュニケーションを心がけることが大切です。尊大にならず、いつまでも相談される存在であり続けたいものです。

継続的な学習意欲

日々更新されるAIトレンドに合わせて学習機会も増えたと思います。生成画像のクオリティもどんどん向上して露出も増えています。そうした生成画像を見る側の感性も自然とアップデートされていく状況にあります。
人間では生み出さないような多色使いの生成画像が、見る側の感性を刺激していることは否めません。人が作ったイメージであれ、AIが生成したイメージであれ、見る側にとっては同じ枠組みで区別なく接種されます。この表現の進化の現状を理解し、同様の表現ニーズがある場合にどう対応するかが求められます。

GMOインターネットグループでは、グループ全社を挙げてAI分野にフォーカスしており、様々な業務への活用が活発に行われています。この甲斐あって、ある案件では製作プロセスにChatGPTを導入したことで製作時間を大幅に短縮できました。AIスゴい。

4. そしてインハウスデザイナーには特に…

ChatGPTに導かれるままに各項目に言及してみましたが、いかがでしたでしょうか。一つの仕事を極めることがいかに困難であるか…。いつまでも到達できない高みを感じます。
最後にインハウスならではの特徴にも言及したいと思います。

瞬発力

インハウスデザイナーには、いくつかの異なる役割があります。サービス寄りのポジション、自社ブランディングや新卒採用といったコーポレート寄りのポジション、新規事業やサービスの立ち上げに関わるポジションなど、外部との関わりの有無や、業務フロー、繁忙期などが異なります。
ビジネスの内部にいるからこそ、多くの情報に触れ、多様な状況に対処することも少なくありません。たとえば、「ライバルのキャンペーンに対抗するために急ぎでバナーを準備してほしい」、「明後日出すプレスリリースに必要なイメージや図を用意してほしい」、「新サービス名が決まったので、すぐにロゴを作成してほしい」といった具合です。このような場面でデザイナーに求められるのは「瞬発力」です。

いかに初動でパフォーマンスできるかは、日頃の準備にかかっています。表現方法やツールなどデザインの引き出しを豊富にしておくことで、状況に応じた対応力が格段に向上します。その結果、仕事の質もおのずと向上し、野球でいうところの打率を上げることができます。

自信と誇りの創出

プロジェクトに唯一のデザイナーとして参加していることもあると思います。その場合、デザインの意図や狙いを関係者に的確に伝え、合意を得る役割も求められます。デザインの機能や表現を誤解なく言葉で説明できるかどうかは非常に重要で、これによりプロジェクトメンバーの理解を深め、言語化をサポートすることができます。
さらに、競合ライバルのクリエイティブをベンチマークとし、それをいかに凌駕するかを意識し、クリエイティブを向上させる必要があります。強いクリエイティブはチーム全体に自信と誇りをもたらし、プロジェクトの大きな推進力になるからです。

5. 最後に

ChatGPTに導かれるまま書きましたが、自分にその資格があるのか?を今も考えています。
長いことインハウスデザイナーをしていますが、無数の駄作を作り、その中に自惚れてしまうような経験がいくつかあるだけです。入稿前にパンフレットデータを丸ごと飛ばしたり、無邪気な一言が関係者の逆鱗に触れたり、干されたり外されたり散々失敗してきた身です。
それでも厚かましくもデザイナーを続ける自分は、やはりデザインが好きで、表現することで自らを救っているんだと思います。
悩み多き人間でもありましたが、年の功でしょうか?劣化でしょうか?デザイナーとしての悩みは減り、シンプルに求められることに集中できているように感じます。悩みの中で知りたかった情報を今認めているようにも思います。
これからも贔屓目なしにいちプレイヤーであり続けられるよう、コンディションを万全にして、真摯にデザインに向き合い、後に続く人々に残す仕事をしていきたいと思います。

ブログの著者欄

勝俣 仁

GMOインターネットグループ株式会社 グループ管理部門統括 グループクリエイティブ部 デザイナー

茨城県牛久市出身。1978年5月生まれ。5人兄妹の長男。芸大受験浪人後にイタリアへ留学。アレッツォとペルージャで語学を学び、ミラノでデザインを学ぶ。帰国後東京でデザイナーとして勤務。義父から結婚の条件として「ちゃんとした会社に勤めろ」とのお達しを受け上場企業に入社し無事結婚。社長室付きのクリエイティブチームでインハウスデザイナーとして14年勤務。「クリエイティブが会社をより良くできる」経験から進むべき道が明確になる。この間一姫二太郎に恵まれる。様々な縁があって現職。プライベートでは子供たちが通うバレーボールチームの世話係。ドトールのアメリカンコーヒーをこよなく愛す。

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