こんにちは。GMOインターネットグループデベロッパーエキスパート成瀬です。こちらは後編です。私がデベロッパーエキスパートの活動で年間100万円をどのように活用し、技術広報につなげたのか、をテーマにお話ししています。
後編のトピックス
前編では対外活動支援・カンファレンス参加について記しました。後編では以下2点をお伝えいたします!
学生支援CSR
学生支援
エキスパート制度が始まってから、その予算をどのように使うか悩んでおりました。私個人の大きな方針としては日本の未来に投資できるようなことに使うと決めていたので、その具体的なやり方についてです。前編で紹介した活動も、その考えがあって技術者コミュニティに還元するような制度利用をしていました。
日本の未来に投資するという意味であれば、やはり未来を担っていく若者にアプローチするのが重要かなと考え、学生に何かしらの支援をするという形の還元方法に落ち着きました。
具体的には学生に無償で講演をするというやり方を主軸にしています。どこで制度を活用するのかというと、遠方の学生たちへの訪問のための費用です。
同志社大学
学生がCraftStadiumというハッカソンのプラットフォームを作ったということで、そちらの審査員にお呼ばれしました。
https://www.craftstadium.com/hackathon
審査員として呼ばれた初回のREAL RAIDはこちら。
https://www.craftstadium.com/hackathon/RR240629
テーマは「その場で盛り上がるプロダクトを作ろう」ということで、デモが必須です。審査員含む聴講者みんなでハッカソンのプロダクトを触ってその場で楽しむというのはなかなか類を見ない手法だったので、素晴らしい体験を作っていらっしゃいました。
プラットフォームをベースに継続してイベントが行われているようなので、今後が楽しみです。
なお、当日はカメラマンとしても参加しています。照明などが凝っていて、撮影にはかなり厳しい環境だったのは記憶しています。
石川高専
技育祭で「声かけてくれたらどこでも行くよ」といったら、石川高専の学生が声をかけてくれたので、金沢に訪問しました。
石川高専はなかなか健脚が試される場所にありまして、ちょうど7月の暑い時期ということもあって、たどり着くまでが非常に大変でした。
やっと石川高専にたどり着いて、「テクノステップ」という文明的な入口を見つけたので、そこに駆け込むと、
https://twitter.com/nrslib/status/1813107166599082492
あったのは長い階段でした。足腰よわよわのプログラマにはハードな環境です。
講演自体は深層学習でロボットを動かすといった話でしたが、見学参加してくれた先生が深層学習等のガチの先生で、「いや、これ自分を呼ぶ必要はなかったのでは?」とひたすら思っておりました。
自分が訪問した意味を少しでも残すため、学生たちにキャリアの話などを急遽追加でお話ししました。
立命館大学
Monkey Hack Partyという立命館大学の技術系サークル合同のハッカソンが行われ、そちらに審査員として招待されました。
https://twitter.com/rits_rcc/status/1832973755758657926
校舎もできたてで、はじめての運営とのことでしたがつつがなく実施され、多くの作品を拝見できました。また当日はカメラマンとしても参加していたので、みなさんのかっこいい写真を撮影して提供しています。
Monkey Hack Party は最終発表にあたりますが、先んじて勉強会もオンラインで実施しました。問題解決思考についての講演と、フロントエンドのワークショップです。オンラインながらも運営の学生たちが現地でサポートしてくれたので、良い学びになったようです。
次回があればぜひまた訪問したいと思います。
九州工業大学
九州工業大学はKCLという産学連携の正課外教育プロジェクトがあり、そちらから何度かお声掛けいただいてます。
https://www.kyutech.ac.jp/career/kcl.html
なお、旅費は頂戴しているので、東京でのこまごまとした交通費を申請しています。エキスパート制度利用はどちらかというと、出張扱いになるため証跡を残すために申請しています。
何度か訪問しているのですが、その中でも特筆すべきはKCLハックという長期のハッカソンの審査員として参加しました。もちろんカメラマンとしても参加しています。
https://twitter.com/nrslib/status/1858043807570526547
なお、発表会の数か月前にReactでフロントエンドとバックエンドのワークショップをしていました。レベル感としてはこの時点だと構造化プログラミングのほうがよかったんじゃないかなって思ったのを覚えています。それから考えると本当に成果物のレベルアップがすごい……。
近畿大学
近畿大学にはKINCUBAという学生の起業支援プログラムがあります。こちらでは企業を志す学生をさまざまなサポートをしています。
私もこちらにお呼ばれしまして、「チーム開発のいろは&デザイン思考ワークショップ」という講演を行ってきました。詳細は以下リンクです(アーカイブもあったりします)。
https://www.kindai.ac.jp/kincuba/event/044914.html
たまにコンサルに近い形で学生のミーティングを聞くことがありますが、結構な割合でプロダクトオーナーと開発チームに認識のズレがあることが多いです。そこで、これから起業していく学生たちに対して、チーム開発の基礎的なことについてお話をして、少しでも不幸を減らそうというのが今回のテーマ選定の理由でした。
後半のデザイン思考に関するワークショップは、正直な話門外漢ではありつつも、どうせきてもらうなら即座に実践できそうなナレッジをお渡ししようと企画したものです。インタビューからKJ法、そしてブレストといった一通りの流れを体験してもらうものでした。
CSR活動:小学校教育支援
縁あって主にプログラミング教育の文脈で小学校教育を支援しています。もうかれこれ5年目でしょうか。
ソフトウェアを使った授業であれば費用はかからないのですが、やはりハードウェアがあると児童たちに感動を与えられます。エキスパート制度の予算を使って、次世代的な教育ができないかなと考えて、取り組みをしてみました。
AI翻訳イヤホン導入
小学校では総合の時間を使って探求学習をすることがあります。探求学習とは児童が自ら課題を設定し、情報の収集や分析を行い、解決を模索する学習です。
児童たちは課題を解決する手段や方法を考えることになりますが、この発想は自分たちの知っていることをベースになされます。探求学習ではアウトプットを重視しますが、良質なアウトプットは良質なインプットに支えられるものです。私が提供する授業ではインプットを重視します。
インプットの授業では現在の人類技術の話から、人類は将来的にどのような技術を目指しているのかを伝えています。その中でなるべく触れるものを用意したく、AIを使った翻訳のイヤホンを購入しました。
AI翻訳イヤホンはリアルタイムに相手の言葉を翻訳して耳に届けます。結果として、互いが自国語を喋っているのにも関わらず意思疎通ができます。この体験をしてほしくてイヤホンを購入し、児童に体験してもらっています。
見聞きして知っているのと、体験したのでは、やはり感動の度合いが異なり、多くの発想の起点となっているように感じます。
レゴロボット
渋谷区教育委員会と連携して、笹塚小学校でロボットを使ったプログラミングのクラブを創設しました。このクラブはロボコン(ロボット競技会)への出場などを目標としながら活動するクラブ活動です。
レゴのロボットは高価で、導入のハードルが高いのですが、その教材はかなりのクオリティとなっています。レゴロボットを動かすためのプログラミングソフトにはチュートリアルのような教材がついていて、児童たちは自分で進めることができます。
この支援は各種メディアにも取り上げられました。
GMO、小学生にプログラミング指導 クラブ活動に社員 - 日本経済新聞
小学生のプログラミングを指導 IT企業にクラブ活動を委託 | TBS NEWS DIG
https://www.youtube.com/watch?v=_5lfIwy6t2M
ロボコンコース印刷
ロボコンは「特定のブロックを特定の場所に移動するとポイントが獲得できる」といったことを行い、その総獲得ポイントを競うものです。ある程度ロボコンを実施しようとすると、ちゃんとしたコースが必要になります。
コースは購入することもできますが、PDFデータもあるため自分で印刷することも可能です。とはいえ2メートルを超える大きさで、なおかつロボットがその上を走行するため、通常の紙では耐久性が怪しいです。
そこでコースのターポリン印刷(横断幕などで使われる印刷)をしました。実物はこちらです。
https://twitter.com/nrslib/status/1848314038423626080
こちらの黒い線などはライントレースでよく利用されるものです。こういったステージの絵(色)を頼りに、プログラムを作っていきます。
さすがにこういったものを展開すると児童たちも大喜びでした。
まとめ
以上が2024年度デベロッパーエキスパートとしての制度利用のすべてでした。
技術広報としての側面は大いにありますが、私個人としては少しでも日本の技術者を育て、未来への投資ができたと満足しています。
みなさまも機会があったらこのような取り組みができるようにデベロッパーエキスパートを目指していただければと思います!