技術研究チームの活動の一環で、スクラムを体験するワークショップを開催しました。
本シリーズではそれらの実施方法や様子をお届けします。
第3回のテーマはピンポン玉を使ったスクラムワークショップです。
目次
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▻Vol.03_イマココ
はじめに
みなさんこんにちは。成瀬(@nrslib)です。
前回はマインクラフトを使ったオンラインのスクラムワークショップについてお話しました。
リモートワークなどでメンバーが遠隔地で分散されているチームがスクラムを学び始めるのに適したワークショップでしたね。
今回は時系列が前後しますが、レゴやマインクラフトを使った手の込んだワークショップを実施する前に、より簡易的なスクラムワークショップを実施したのでそちらをご紹介します。(ワークショップは2020年11月に実施したものです)
今回の題材は「ピンポン玉」です。
手軽にスクラムを体験したい
スクラムは、見聞きした情報だけで実践するのは難しいです。
各種スクラムイベントには一定の正解があるわけではなく、確固たる目的意識がないと趣旨を見失いやすいからです。
OJTと称して、実践しながら学ぶのもお勧めできません。
多くのスクラムイベントは大抵1スプリントにつき1回です。
スプリントは1週間や2週間といった期間になるため、それぞれがどういったもので、どういった立ち位置かを学ぶまで長い時間がかかってしまいます。
スクラムは百聞は一見に如かずという言葉が似合います。
言うは易く行うは難しでもよいでしょう。
座学で学ぶよりも、経験をしたほうが圧倒的に早く理解が進みます。
そのため、ワークショップを実施するのがスクラムの理解や導入に役に立ちます。
本連載で紹介してきたレゴスクラムやマインクラフトスクラムはスクラムの理解や導入に最適ですが、その内容はとても重厚なワークショップです。
レゴやマインクラフトなどの初期費用を無視したとしても、準備にかかるコストが高く、ワークショップを気軽に実施してみたい場合にはふさわしくありません。
私たちもスクラムのワークショップをするにあたって、どの題材がいいか調査しました。
結果、「最初からレゴスクラムするのは得策でない」として、いくつか別の題材で実施してから、本格的なスクラムワークショップをすることにしました。
というわけで一番最初に実施することにしたスクラムワークショップのテーマは……
ピンポン玉です。
ピンポンゲームスクラム
ピンポンゲームはピンポン玉を使った簡単なゲームです。
そのピンポンゲームを題材にスクラムを体験するワークショップがピンポンゲームスクラムです。
ゲーム自体が単純なので、実施するのが難しくないワークショップです。
ワークショップ概要
ピンポンゲームはピンポン玉にメンバーが触れた数をスコアとするゲームです。
ピンポン玉に触れるといっても、ただ触れればよいのではなく、ルールがあります。
ルールは次の通りです。
- チームメンバー全員が触れる
- ボールは宙に浮かせて受け渡す
それほど難しくないですね。
これらのルールにしたがって、一定時間のうちにどれだけスコアを稼げたかを競うゲームです。
なお、私たちの実施したワークショップでは、これらのルールに加えて、次のルールを加えました。
- 最終的にピンポン玉をゴール(バッグ)に入れる
要するに「全員が手渡し以外でピンポン玉に空中で触れながらバッグに入れたら1点」です。
準備するもの
ワークショップを実施するにあたって準備するものは次のとおりです。
- ピンポン玉(1チームにつき100個)
- バッグ・袋(1チームにつき2個)
シンプルです。
ピンポン玉の金額はピンキリですが、1セットにつき2,000円程度と思っておけばよいです。
バッグ・袋はピンポン玉が100個入るサイズです。
ピンポン玉に付属しているのであれば、もうひとつ大きめのバッグを用意するとよいでしょう。
設備
特別必要なものはありません。
床さえあれば実施できます。
とはいえ、あるとベターといったレベルで設備を挙げるなら次のリストになります。
- ホワイトボード
- プロジェクタ
ホワイトボードはスコアの予測と結果を記入するために利用します。
プロジェクタはルール説明用資料投影とタイマーの表示に利用します。
参加者
ワークショップに欠かせないのが参加者です。
このワークショップは予備知識が不要なので、だれでも参加できます。
1チームにつき少なくとも3名程度が必要です。
今回はデヴェロッパータスクフォース(技術研究チーム、以下DTF)のメンバーと、システム本部の若手に参加してもらって実施しました。
ワークショップ解説
ワークショップを実施する際には、参加者に趣旨やルールを事前に説明します。
ワークショップは次のスプリントを繰り返します。
- 戦略を考え、スコアを見積もる(60秒)
- 実行(120秒)
- スコアを計測・片付け(60秒)
- 振り返り(60秒)
今回、私たちは5回実行しました。
最低3回こなせば十分かと考えます。
なお、今回のピンポンゲームのスクラムワークショップはDTFメンバーの中川くんが企画してくれたので、彼が趣旨やルールを説明してくれました(成瀬は一般参加枠です)。
戦略を考え、スコアを見積もる(60秒)
ひとつのスプリントで最初にやることは、戦略を考えることです。
120秒という制限時間の中で、できるだけ多くピンポン玉を運べる方法について、メンバーで話し合い戦略を決定します。
戦略が決まったら、チームごとにどれくらいのスコアになるか予測をします。
成瀬が所属した「Team Japan」は強気の120個予測です。
実際、このときは完璧な作戦を考案したとメンバー全員が思っていました。
ちなみに100個すべて移し終わったら、元のバッグへ移していきます。
バッグからバッグへ往復していくイメージですね。
実行(120秒)
実際に考えた戦略を制限時間の間、実行します。
画像でみるとそれぞれのチームの戦略の違いがみえますね。
なお、このとき、いくつまでスコアが伸びたのか把握する必要があります。
ピンポン玉が足りなくなり、リユースする場合には正しくスコアリングするように注意しましょう。
スコアを計測・片付け(60秒)
実行が終了したらスコアを計測し、元に戻します。
急いだり、作戦次第ではピンポン玉が床に散らばっていきます。
このタイミングで元に戻して次のスプリントに備えましょう。
今回はバッグに移すと1点というルールがあるため、落としてしまったピンポン玉は加算しないようにしてスコアリングしていきました。
我らが「Team Japan」の初回実行では、予測120個に対して97個と、かなり予測を外してしまいました。
それに対して「世界の高道」チームは80個予測に対して実績80個と予測通りの結果でした。
素晴らしいですね。
初めて行う作業の見積もり予測は難しく、ほとんどの場合は正確でないので、かなり珍しいケースです。
振り返り(60秒)
スプリントの最後には振り返りをします。
今回の実行でよかったこと、よくなかったことを短い時間で振り返りましょう。
私たち「Team Japan」も初回の戦略が最強に思えたのですが、実際にやってみると改善点が見つかって、どんどん戦略が変わっていきました。
既定の回数繰り返す
これらの一連の流れを最初に決めた規定回数に達するまでくり返し実施します。
振り返りの実施
ワークショップが終わったら、ワークショップ自体の振り返りをしましょう。
各チームがそれぞれの回でどのような戦略を立て、変化させていったかについて披露します。
このワークショップはスクラムよりも改善活動の重要性を体験するものなので、その点留意しながらしっかりと予測と作戦、振り返りの重要性を確認します。
ワークショップレポート
すでに初回分についてはワークショップの解説の流れで紹介しましたので最終的な結果からワークショップのレポートをします。
最終スコア
各チームの最終的なスコアは次のようになりました。
いずれのチームも初回以外はスコアを飛躍的に伸ばし、また安定しています。
特に「世界の高道」のスコアは驚異的です。
このようにくり返し改善していくことで、同じ作業であっても効率が高くなっていくのがよくわかりますね。
ただ予測の精度はあまり向上しませんでした。
これはどちらかというと、戦略を毎回変えていったため、「常に初めての戦略」をすることになったため、スコアが安定しなかったのだと考えます。
各チームの戦略
両チームとも最終戦略はピンポン玉を受け渡すというより、ピンポン玉を手に当ててバッグに流し込むという戦略です。
奇しくも同じ戦略にたどり着いたようです。
こうなってくると大変なのは、正確なスコアリングです。
もはや成功した数を数えるのではなく、落とした数を数えてたりします。
実はこのスコアリングにも改善の力が働いていたのです。
所感
最初の戦略を練った時点で「最強の戦略」が生み出せたと思っていました。
そのため、5回は多すぎると思っていました。
これはほかの参加者も同じことを思っていたようです。
しかし、実際にやってみると改善できることは尽きることなく、それはそのままスコアに反映されていきました。
このように振り返りをすることで、各メンバーが実行中に感じた課題が共有でき、次の戦略に生かされるといったループが発生します。
このカイゼンループは一度は体験しておくべきものでしょう。
反対に、本格的なスクラムを体験したい場合はこのワークショップは適していないと感じます。
スクラムを体験するにはパーツを省きすぎているからです。
本ワークショップの立ち位置としては本格的なスクラムのワークショップを実施する前にコミュニケーションもかねて実施する試験的なワークショップの位置づけがよいのではないかと考えます。
おわりに
本ワークショップは正味1時間もあれば実施できます。
かなり軽量なワークショップで気軽に開催できます。
チームに新たなメンバーが加入したときなど、オンボーディングをスムーズにする目的でもお使いいただけるのではないでしょうか。
著書の紹介欄
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