GMOインターネットグループでは、2022年12月6日(火)~7日(水)の2日間、開発者向けテックカンファレンス「GMO Developers Day 2022 」を開催しました。
「GMO Developers Day」は、GMOインターネットグループの最新技術を活用した新しい挑戦や、世の中が抱える課題解決への取り組みを、事例を交えて紹介するテック(技術)カンファレンスです。開催3回目となる今年は「Add on 技術の拡張で、新たな世界へ」をコンセプトに、初のオフラインとオンラインのハイブリッド開催で、全34セッションをお届けしました。
GMO Developersではそんな大盛況を収めた同イベントのセッションを、全12回に渡って紹介してきましたが、いよいよ今回で最後となります。1日目にオンラインで配信されたKEYNOTE「世界で戦うWeb3起業家たち」をご紹介します。
目次
登壇者
モデレーター
- 藤本 真衣氏
BlockchainPROseed Co-founder / GMO Web3株式会社 取締役
2011年より国内外でビットコイン・ブロックチェーンの普及に邁進。ミスビットコインという名で親しまれてきた。現在はスイスを拠点にイーサリアムのレイヤー2であるintmax projectを推進している。2018年より開催されているNon Fungible Tokyo、Japan Blockchain Week2022の発起人であり、これらのイベントを運営するBlockchainPROseedのCo-founder。一般社団法人ブロックチェーン協会、一般社団法人Metaverse Japanの顧問を務める。2022 年 9 月、GMO Web3 株式会社 取締役に就任。
スピーカー
- 渡辺 創太氏
Astar Networkファウンダー / GMO Web3株式会社 顧問
日本発のパブリックブロックチェーンAstar Networkファウンダー。STAKE TECHNOLOGIES Pte Ltd CEO。日本ブロックチェーン協会理事や丸井グループ、GMO Web3、電通 web3 Clubなどのアドバイザーを務める。2022年、Forbes誌の選出するテクノロジー部門アジアの30歳以下の30人に選出。
- 中村 健太郎
GMO-Z.com Trust Company, Inc. CEO / GMO Web3株式会社 取締役
2008年にGMOインターネットグループ株式会社に中途入社後、米国サンフランシスコに渡り、ゲーム・広告・ドメイン等のビジネス開発に従事。2020年12月、米国ニューヨークに、ステーブルコインGYEN(円ペッグ)及びZUSD(ドルペッグ)の発行会社GMO-Z.com Trust Company, Inc.を設立し、CEOに就任。2022年6月、GMO Web3株式会社の設立時より取締役に就任。
2022年6月、Web3に特化したCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)であるGMO Web3株式会社の設立が発表され、取締役の一人に日本円ステーブルコイン「GYEN」を開発・運用するGMO-Z.com Trust Company, Inc. CEO 中村健太郎が就任。9月にはBlockchainPROseed Co-founderでブロックチェーン領域の普及活動も積極的に行う藤本真衣氏が取締役に、さらに日本発のパブリックブロックチェーンAstar Networkファウンダーで、STAKE TECHNOLOGIES Pte Ltd CEO渡辺創太氏が顧問に就任しました。
渡辺氏はシンガポール、藤本氏はスイス、中村は米国と、Web3領域の中心で活躍する3人。グローバルチームを牽引する上での苦労やナレッジをはじめ、世界の視点から日本が抱える課題やこれからの展望など、GMO Web3社プロジェクトの話も交えて、お話しいただきました。
アメリカ、スイス、シンガポール…拠点の選定理由とは
藤本
私は現在スイスで働いていますが、中村さんはアメリカ、渡辺さんはシンガポールと、お二人とも海外を拠点に事業をされています。それぞれの国を選んだ理由と、その背景について教えていただけますか。
GMO-Z.com Trust Company, Inc.ではステーブルコインGYEN(円ペッグ)及びZUSD(ドルペッグ)の発行していますが、日本は規制上、ステーブルコインを取り扱えないという事情がありました。ニューヨークでは既にPaxos standardのUSDPやGemini Trust CompanyのGemini Dollarという二つのステーブルコインが、規制当局の監督下で事業が展開されています。ステーブルコインのような法定通貨型のものは、規制内で中央集権的に事業が進められていくと想定しており、さまざまな国や地域の中で一番ステーブルコインに理解があるニューヨークを拠点に選びました。
ステーブルコインは決済に使える点においては、あらゆる業界にシナジーがあると感じています。ただ金融業界のハブであるニューヨークの性質上、伝統的なFXのブローカーや、これから暗号資産をやっていきたいと考えているメガバンクやリージョナルバンクの方々とやり取りさせていただくことが多いですね。
中村
藤本
地域の特性が感じられますね。私もスイスに拠点を移した際、「クリプトバレー」という言葉もあるくらいなのでWeb3のシナジーを期待していましたが、金融大国というバックグラウンドを活かした、いわゆるFinTech系の企業の方が多い印象です。「コンサバティブ(保守的)」なカルチャーも感じられますね。
渡辺さんはシンガポールを拠点にしていますが、近年はシンガポールの規制も強まっているという声も聞きます。拠点として選ばれた理由と、最新事情を教えていただけますか。
シンガポールを拠点にしていますが、私自身は、世界中を飛び回る生活をしています。拠点を選ぶ上で最も重要だったのがQOL(クオリティオブライフ)です。候補地としてドバイ、スイスも考えていましたがシンガポールの住環境が一番、日本に近いんです。例えばドン・キホーテがスーパーみたいになっていて普通に日本食が買えたりします。
もう一つ重要だったのがタイムゾーンでした。今、19か国にメンバーがいて 、私の場合はすべての仕事に関わっているので24時間やり取りがあります。そのため私自身は、どこに居てもあまり変わらないですが、日本との仕事も多くなり、日本と時差が1時間しかないというのは魅力でした。
最近ではシンガポールでも賭博法が改正されるなど、少しずつクリプト系のビジネスが難しくなってきています。そのため拠点にドバイを選ぶ人も増えている印象です。ただ大企業や政府系機関との仕事もあり、レピュテーションリスクを避けることも考えた上で、最終的にシンガポールに拠点を決めました。
渡辺
藤本
19か国でチームメンバーが活躍されているというのは凄いですね。グローバルチームを牽引する上で、マネジメントなど意識されていることを教えてください。
それぞれタイムゾーン毎に役割を分けています。私がいるアジアはファイナンスと全体戦略、アメリカはマーケティング、ヨーロッパで開発を担当するといった形です。
デベロッパー(開発者)が、シンガポールとニューヨークに居たら、質問を投げて回答を得るまでに一日かかってしまう。これは大きなロスなので、同じ部門のメンバー間は時差が生まれないようにしています。
渡辺
藤本
私もグローバルチームで事業を行っているので、タイムゾーンで役割を区切るというのはすごく参考になります。
Web3企業としてエンジニアに求めていること
藤本
エンジニア採用について伺いたいと思いますが、お二人はどのようなスキルを求められていますか。
未知の領域へ挑戦する上で、新しいものを生み出す感性や考え方を持っているかは大切な条件になっていると感じます。
またセキュリティが重視されるプロダクトでもあるので、スマートコントラクトなどのコーディングが出来なくても、セキュリティ分野の知見がある方は重宝されると思います。
プロダクトの運用は基本的には英語ベースなので、英語と日本語でやり取りができるエンジニアの方に来ていただきたいですね。
中村
スキルよりもカルチャーフィットを重視しています。クリプトのマーケットはボラティリティが激しく、マーケットが盛り上がっている時に業界に入るのは簡単ですが、下がっている時にモチベーションを保ちながら開発を続けるのが難しい。
だからこそ我々のカルチャーにフィットしているか、マーケットのプライスではなく世の中に価値あるものを提供していくことにモチベーションを保てるか、といった所を大切しています。
渡辺
日本発Web3企業が成長するために
藤本
Web3業界で日本から優秀な人材が海外に流出してしまう懸念がある一方、海外でチャレンジをする起業家が増えるチャンスという見方もあるかと思います。中村さんは、日本における現状をどう見ていますか?
日本の起業家が海外に出ていく現状は、すごく良いことだと思っています。それまで日本国内だけでもビジネスを展開できた環境がありましたが、それに甘えて海外で挑戦が生まれづらかった。それがWeb3では日本では法整備など壁があるため、初めから海外で事業展開せざる得なくなっています。
海外のプレイヤーと関わり合い視野を広げた起業家たちが、いずれ日本の法律や税制が整った時、培ったノウハウと共に日本に戻ってくる流れがあるのではないでしょうか。そうなれば日本としても、より強い起業家集団が生まれることに期待できると思います。
中村
藤本
渡辺さんは、グローバルでのご活躍はもちろん、日本でも事業を広げられて注目されていますが、グローバルと日本との事業バランスは、どのように考えられていますか?
30年ほど前、孫正義さんが「タイムマシン経営」とよく口にされていました。アメリカや世界のイケてるサービスを日本に展開して国内マーケットを独占するといった考え方です。
私は「アービトラージ経営」というものを意識しています。現在、私たちは海外でコインベースやバイナンス、ポーリーチェーンから投資していただいていますが、そうしてアメリカ側で認知されてくると、日本にも上陸しやすくなる。NTTドコモや博報堂などの日本を代表する企業と一緒に事業に取り組んでいますが、今度はその実績によってアメリカでもより一層戦いやすくなります。
こうして世界中でお金と人と実績を集めて強みをつくり、振り子のように行ったり来たりするというのが「アービトラージ経営」による戦略です。あまり前例がなく、スタートアップとしても面白い挑戦だと思っています。
渡辺
中央集権・非中央集権のバランスをどう見ているか
藤本
Web3は非中央集権型ですが、逆に中央集権的な側面もあるなど、両方兼ね備えた部分がWeb3業界にはあると思いますが、この中央集権・非中央集権のバランスは今後どうなっていくと考えていますか?
中央集権と非中央集権が共存し続けるというのが、僕の感覚での考え方です。
アメリカや日本、スイスといった社会的に確立した体制を持つ国々で中央集権型が失われるのは想像し難いです。その一方で、アフリカ大陸や南米などの国や地域などで、自国通貨の信頼が低ければ非中央集権型の暗号資産でやり取りが行われて、そのインフラ整備が加速するのではないかと感じます。
中村
藤本
私も同じような意見を持っていました。渡辺さんはいかがでしょうか。
「Web3」という言葉がバズワードとして注目を集めているが故に、実態が正しく理解されていないと感じています。「非中央集権」「分散型」といわれることよりも、「人間に新しいオプションが増える」ことが重要です。
例えばAstar Networkの場合、原則的にノードがAWSやAzure上にあるため、分散しているとは言えません。ただそれが嫌なら自分でノードを立てるという選択肢もあります。クリプトの場合もバイナンスなどの取引所に預けている人が多いと思いますが、レジャーなどのサービスを活用して自身でそれぞれ管理することも可能です。
「非中央集権」ではなく、人に対して新しいオプションが提示されていく「人を中心としたWeb」になっていくことが大切だと思います。
Web3の在り方も国や地域ごとに事情が異なるので欧米の後追いではなく、Web1からの歴史から、いまWeb3で起きていることを世界的に認識した上で、日本のバックグラウンドに合ったものをやらなくちゃいけないと思いますね。そのために「世の中のムーブメントを理解する」「グローバルスケールで物事を考える」というのが大事だと思います。
渡辺
日本からWeb3起業家が生まれることに対しての想い
藤本
日本からのWeb3起業家が生まれてくることに対して、中村さん、渡辺さんそれぞれの想いがあれば教えてください。
どこからでも情報が集められる時代なので、日本だけにこだわらず、積極的に世界の情報をとっていき、自身のアウトプットにつなげて欲しいです。
広い視野で物事を捉えられるようになると、加速度的に事業展開できたり、海外で戦う上で、有効な戦略というのが備わっていくと思います。
GMO Web3では、勢いのあるWeb3起業家の皆さんから斬新な事業アイデアのプレゼンテーションをたくさん見させてもらっています。私自身、最先端の所で、しっかりと戦えるような体制をつくり、GMOインターネットグループに貢献していきたいですね。
中村
Web3ってムーブメントだと捉えていて、みんなで創っていくものだと思っています。若い人たちからすると、自分たちで新たなルールを開拓できるフロンティアな部分に満ちているのは、とてもエキサイティングだと感じます。
Web1やWeb2から関わってきた人たちにとっても新しくビジネスを展開できる領域でもあります。Web2においてはアメリカの企業に圧倒的に押されてしまったので、Web3では日本人としてグローバルで何ができるか、どのような結果を残せるかを考えることが重要だと思います。
Web3は誰か一人の力で実現できるものではないので、日本も国家的な戦略に挙げていますが、このムーブメントを絶やさずに、いろいろな方と一緒にそれぞれの強みを生かして、頑張っていきたいなと思います。
日本においても、今後、大企業がWeb3に参入する動きが加速していくと思います。暗号資産におけるカストディ(資産管理・保全)分野などで、日本人が使いやすいような日本発のサービスが出てくるのではないでしょうか。とても楽しみです。
渡辺
藤本
私もGMO Web3で晴らしい起業家たちのプレゼンを聞かせて頂いていますが、GMOが暗号資産領域で、培ってきたノウハウはとても大きいものだと思うので、そうしたサポートがとても大きな力になるのではないかと思います。
私もこの業界に11年いますが、ようやく大きなプロジェクトを2021年からスタートさせました。そういう意味では私も同じスタートアップのスタート段階に立ったフェーズです。これから皆さんと一緒にチャレンジしていけたら嬉しく思います。お二人の意見、大変参考になりました。中村さん、渡辺さん、本当にありがとうございました。
さいごに
KEYNOTE「世界で戦うWeb3起業家たち」は、2022年11月上旬にオンラインにて収録したセッションです。普段からご多忙を極める3人ですが、なかでもシンガポール在住の渡辺氏は11月においては地球2周分移動されて世界中を飛び回っており、セッション収録のため、急遽、ニューヨークからご参加いただきました。
2022年11月はWeb3業界にとっても、激動の1カ月だったことは記憶に新しいかと思います。そんななか実現した本セッションでは、 より本質的に日本発のWeb3起業家について考える、貴重なお話しをたくさん頂きました。
全12回に渡って紹介してきた「GMO Developers Day」のセッション紹介ですが、本セッションの記事を最後とさせていただきます。 お読みいただきありがとうございました。
GMOインターネットグループは「GMO Developers Day」を2023年度も開催を予定しています。詳細は順次、「GMOインターネットグループの開発者向け情報」(https://developers.gmo.jp/)でお知らせいたします。ぜひ今年の 「GMO Developers Day」 開催まで楽しみにお待ちいただけましたら幸いです。
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