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GMOインターネットグループによるプログラムを組み込んだ、新たなPBL学習の取り組み ~未来の笹塚小学校をつくろう~

2023年3月10 日、GMOインターネットグループは東京・渋谷のグループ第2本社内「GMO Yours・フクラス」にて、『未来の笹塚小学校をつくろう~より多くの人が幸せな社会を目指して~最終成果発表』を開催しました。

成果発表会では、笹塚小学校の6年生が全14のチームに分かれて、それぞれが考える理想の学校である「未来の笹塚小学校」を発表しました。

本記事では、GMOインターネットグループが笹塚小学校と共に取り組んだ、プログラミング教育の取り組みについてお伝えします。

プログラミングを組み込んだ、新たなPBL学習

GMOインターネットグループは「次世代に必要な資質・能力を持った人材を渋谷から輩出する土台作り」として、東急株式会社、株式会社サイバーエージェント、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社MIXIの5社と共に、渋谷区教育委員会と連携しKids VALLEY 未来の学びプロジェクトを2019年より推進してきました。

3年目に入った2022年度は、新たに笹塚小学校へ教育版マインクラフト(以下、マイクラ)を活用した「問題解決型学習(PBL:Project Based Learning)」の支援を行いました。 

PBLとは伝統的な講義形式ではなく、問題を児童が自ら解決することで、同じような問題が現れた時に解決する能力を身に着ける学習方法です。

近年、PBLにマイクラのようなプログラミングを取り入れることで、解決への自走力や、チームでの開発能力向上につながるといった「PBL×プログラミング学習」の相性の良さが注目を集めています。

マイクラを活用した「PBL×プログラミング学習」は笹塚小学校では前例のない初の試みとなります。

2022年10月から本格的に開始となった本学習プログラムは、同校教諭と共にGMOインターネットグループ テックリード 成瀬 允宣(以下、GMO成瀬)が、初期からカリキュラムの設定に携わりました。

GMOインターネットグループ テックリード 成瀬 允宣

マイクラを活用する上で、求められる行動規範

 PBLにマイクラを取り入れるアイデアは笹塚小学校の先生方から頂いたものです。

探究学習を得意とする中嶋教諭と、ICT機器の扱い長けている小笠原教諭が、6年生で実施する総合学習の校内研究カリキュラムにおいて、PBLにマイクラを組み込めないか?と話したことが発端となったといいます。

2020年度から全国の小学校での「プログラミング教育の必須化」に伴い、渋谷区では全国に先駆けて区立小学校の児童全員に1人1台のタブレット型端末を配布しています。

学校内にはWi-Fiが整備されているなど、授業としてマイクラを取り扱うだけの設備環境は十分、整っていました。

それでも笹塚小学校では授業でマイクラを使うという前例がなかったのには理由があります。

「IT企業の方からすると何で?と思われるかもしれませんが、学校にはとてつもなく大きい壁がありました」(中嶋教諭)

 娯楽ゲームでもあるマイクラですが、作った建物を児童同士で壊してしまうなど「ネットいじめ」を誘発する要因になるのではといった懸念があったのです。

「情報技術の利用における適切で責任ある行動規範」を意味するデジタルシティズンシップという言葉があります。授業でマイクラを取り扱う児童にはそうした行動規範が求められます。

しかし先生方はマイクラを使った授業を成功させることは、笹塚小学校の次の世代の新たな教育づくりにつながる可能性が大きいと感じていたといいます。

「新しい未来の教育をつくりたい」という中嶋教諭と小笠原教諭の熱意は、他の先生方にも伝わり、学年主任や学校長からも理解をもらえるなど、学校全体が「新たな教育づくり」を後押ししました。

そんな学校が掲げた新たなチャレンジとして、マイクラを活用したPBL学習は始まりました。

マイクラのルールを知るところから、探求学習が始まる

しかしマイクラを学習に活用するあたり、懸念されている問題は乗り越えなければなりません。

そこで2022年6月から授業でマイクラを扱いはじめ、事前授業としてマイクラをプレイする際のマナーについて、学ぶ時間を設けました。

授業では「なぜ人がつくったものを壊してはいけないのか?」「マイクラを活用した授業が目指す目的(ゴール)は何か?」といったことについて、児童みんなで話し合いました。

そうした授業を重ねていくことでトラブルは全くといっていいほど起こることなく学習を進めることが出来たといいます。

「ゲームをする時のマナーってどういうものか?ダメなことに関する理由を話し合う所から、この探究学習はスタートしていたと感じます」(GMO成瀬)

その後、カリキュラムが確定し、2022年10月19日に第1回目となる学習がスタートしました。

理想の小学校を、「未来会議」で提案

カリキュラムの前半では「15年後の笹塚の街の中心となる新しい学校」をテーマに、児童たちが理想とする学校とは何かについて話し合いました。

そして4~5人ずつ14の班に分かれて、それぞれが実現した理想的な小学校のコンセプトやアイデアを創出しました。

そのステップは細かく、まず個人で企画書を作成、次にそれをグループ内に持ち寄ります。その後グループで企画書をつくり、最後にパワーポイントで提案資料を作成しました。

児童たちは20~80代までの地域の人々に事前アンケート調査を実施して、その声を企画に反映させるといった情報収集はもちろん、改善点としてフィードバックをもらうことにもチャレンジしました。

これが「未来会議」と題された会議です。「未来会議」には教員や、地域の人々が集まるなか、児童たちそれぞれが考える理想の学校についてプレゼンを行いました。

そうしたアウトプットに対してフィードバックをもらいながら「未来の笹塚小学校」の企画は練り直されていきました。その繰り返しで企画の質は高まったといいます。

「未来会議でフィードバックをもらうことで、理想の学校のコンセプトが明確化していきました。間近で児童の成長過程を見ることができて、私自身の学びにもつながりました」(小笠原教諭)

マイクラで理想の学校を表現

カリキュラム後半では、それぞれの班内で協力しながらマイクラを活用して「未来の笹塚小学校」を創り上げ、成果発表を行うといった流れで実施されました。

児童たちは、マイクラ内のコードビルダーなどを用いてプログラミングを活用しながら、バーチャル空間に「未来の笹塚小学校」を作り上げていきます。

マイクラを活用する後半は、GMO成瀬が笹塚小学校に週1回訪問して、プログラミングに関する授業を主導してきました。

GMO成瀬は「やるからには成功させたかった。本気でやりました」と、その取り組みについて振り返ります。

中嶋教諭、小笠原教諭が今回の探究学習に対して、熱量を持って取り組んでいる。その本気度が原動力になったこと、そして、今回のPBL学習が教育全体の未来のためにもなる取り組みだと感じたといいます。

「ひとつの成功事例をつくることで、他の学校でも展開しやすくなる。そのためにも成功を目指しました。教育づくりにとっても、新しく、ためになる取り組みだと思います」(GMO成瀬)

マインクラフトで学校を制作する過程では児童たちから思いがけない質問も飛び交います。

GMO成瀬の他、GMOインターネットグループからエンジニア3名が必要に応じて学校訪問に同行して、理想の学校づくりをサポートしました。先生方はこのサポートで技術的なフォローをもらえたことが大きかったといいます。 

「(毎週)2時間のマイクラ授業を進めていくのは、かなり大変だったと思います。呼ばれても分からないことも多く、その都度、調べないといけない。そんな中、成瀬さんをはじめGMOインターネットグループから来ていただいたエンジニアの皆さんに技術面でフォローしてもらえたことは、本当に助かりました」(中嶋教諭) 

マインクラフトで開発プロジェクトを体感

総合学習を進めていく過程で、児童たちは最初の授業で“協力すること”について学びました。そして協力してタスクボードを作り、それぞれタスクの洗い出しを行いました。

そうしたミーティングでは、まだ明示されていない完成の定義について議論を重ねたり、タスクを分解するなかで、新たな問題を検出することもありました。

これらはまさに開発プロジェクトそのものです。児童は、マイクラを活用したPBL学習で、開発プロジェクトを体感することができました。

さらにGMO成瀬や教員たちに向けて制作物を披露する「中間報告」の場も設けられました。

それぞれ班が考えるテーマに沿って、マイクラの世界で表現(建物など)が出来ているか、発表前にはプレゼンで意図したものをしっかりと伝えられているか。そうしたことを対象に、「中間報告」でフィードバックをもらい、試行錯誤しながら制作は進んでいきました。 

児童は、それぞれ楽しみながら没頭して本学習に取り組んでいましたが、成果発表が近づくにつれて、緊迫するチームもありました。班員同士の連携がうまくいかず 泣き出してしまう児童もいたといいます。

 お互いが思っている意見を話し合い、それぞれの考えを共有することで、チームは連帯感を増し、素晴らしい成果物が生まれます。

「PBL×プログラミング学習」で、課題を自ら解決するプロセス(過程)と、プログラミングを同時に学び、さらにチームで動くうえでの基礎力の向上にもつながりました。

『未来の笹塚小学校をつくろう~より多くの人が幸せな社会を目指して~最終成果発表』

いよいよ最終成果発表会の日を迎えました。この日の舞台は、GMOインターネットグループ第2本社内「GMO Yours・フクラス」。児童の皆さんには、GMOインターネットグループで働くパートナー(社員)同様に、カードをかざして入館いただくといった職場体験もいただきました。

冒頭では、見学にいらした渋谷区教育委員会・教育長の五十嵐俊子氏からも「教育版マインクラフトで発表するというのは渋谷では初めての例。私たちも今回のテーマを参考にしながら未来の学校作りに活かしていきたい」と取り組みにおける意義が語られました。

いよいよ、児童からの発表です。

  • 学校の屋上で太陽光や風力発電を設置する“地域の人と環境とともにある学校”、
  • 床発電や災害用トイレの設置など行う“災害に強く地域の人が使いやすい学校”、
  • 緑や畑、ジェンダー平等トイレや誰でも使える水道がある“緑豊かで、様々な個性を大切にする学校”
  • ・授業を選択できる日や各教科の教室や、様々なスポーツ道具を設置した“みんなが楽しく学べて、個性を最大限に活かせるように育てる学校”・・・等

地域で暮らす人々や、SDGsの観点などからも探究を重ねられ、子どもたちそれぞれが未来に想いを込めた、14の「未来の笹塚小学校」が発表されました。

7班:「地域の人々と交流し,国際的な問題にも取り組む学校」

5班:「地域の人と環境とともにある学校」

2班:「子供たちだけでなく,地域の人も気軽に使える学校」

11班:「多様性の尊重を重視しSDGsが達成できるような学校」

3班:「みんなが楽しく学べて,個性を最大限に活かせるように育てる学校」

9班:「災害に強く市民が使える学校」

6班:「地域の人と協力し助け合える学校」

13班:「自然や生き物に優しくて楽しい学校」

1班:「一人一人の個性が輝いていてお互いを高めあえる学校」

10班:「地域の人と協力してお互いに学び合える学校」

8班:「地域の交流が深く自然あふれる学校」

14班:「環境にやさしく多様性を認め合う学校」

4班:「子供が自由に幅広い教育を受けられる学校」

12班:「緑豊かで様々な個性を大切にする学校」 

児童たちが環境問題や社会課題に真正面から向き合う姿勢に、聞いている大人たちが考えさせられる場面も多くありました。

発表後、児童の皆さんに感想を聞いてみると「発表前は、めちゃくちゃ緊張したけど、プレゼンテーションとても楽しかった!またやりたい!」といった声や、「みんなで役割を分担して、それぞれ楽しむことができた」、「本番までどうなるか心配だったけど、いい発表になって良かった!」と、手応えを感じている子も大勢いました。

とても大きな挑戦でしたが、児童の皆さん自身でも成長が感じられた発表会となりました。

成果発表の最後には、GMO成瀬と、中嶋教諭、小笠原教諭から以下のようなメッセージがありました。

「6年生の皆さん、本当にお疲れ様でした。チームで一つのゴールに向かっていくなかで、意見の違いで衝突したり、期限があって焦ったりもしましたね。自分たちが求めるものと、今の現状にギャップがあって苦しんだ人もいると思います」

「いちばん最初の授業で“協力すること”についてお話ししました。人類最大級のプロジェクトは『ピラミッド』だったと言われています。あのようなものは1人では一生かかっても作り切れません。協力できるからこそ、創り上げることができます」

「今回、皆さんはそれを経験しました。皆さんが将来なにをするかはまだ分かりませんが、なにか課題を解決するときに今日の経験を糧にしてください。もしかしたら宇宙にロケットを打ち上げる人がいるかもしれません。いずれも協力が必要になります。この経験を糧に成長してほしいなと思います」(GMO成瀬)

中嶋教諭

「児童のみんなは、今日、ここに立ったんだと実感しました。泣いている子、笑っている子、喜んでいる子、アイデアが浮かばず悩んでいる子、一人ひとりストーリーがあると思います。この『プロジェクト型学習』のチカラは、あらためて、すごいと実感しました」

「今日のような発表会は学校ではできなかった。これもひとつの学びだと思います。GMOインターネットグループの皆さん、ありがとうございました。なぜ成瀬さんは毎週金曜日に来てくれるんだろう。なぜこんなに我々にコミットしてくれるんだろう?と、いつも思っていました。当初、難しいと思っていた学習でしたが、成瀬さんや毎週、学校に来てくれるGMOインターネットグループの皆さんの熱に押されたところもありました。新しい学びをつくりたいという想いにご一緒くださり、感謝しています。ありがとうございました」(中嶋教諭)

小笠原教諭

「GMOインターネットグループのみなさん、東急グループのみなさん、本当にありがとうございました。10月19日から、学習をやってきました。マインクラフトを学習で使うと決めた時、渋谷区の他の先生たちから『遊びで終わるんじゃないか?』『学習になるのか?』という声をいただき、私も中嶋先生も、やっぱりムリかという想いがありました」

「けどいま『みたか』って言ってやりたいです。笹塚小学校の6年生、ここまでできるんだぞと。そして、それを引き継ぐ5年生がここにいるんだぞって言いたいです。ここで学んだことは本当にムダにならないと思います。ここからの人生に大いに役立ててください。本当にありがとうございました」(小笠原教諭)

さいごに

発表会には、メディアの皆様にも多数、ご来場いただきました。いずれも全発表を細かくご掲載いただくなど、読み応えのある記事となっておりますので、ぜひご覧ください。

GMOインターネットグループでは、今回の笹塚小学校でのカリキュラムがモデルケースとなり、様々な教育現場で共有・活用されることで社会への貢献できればと考えております。 

ブログの著者欄

西﨑 圭一

GMOインターネットグループ株式会社

Webディレクターとして企業サイトディレクションや、ライターとして従事。2022年GMOインターネットグループ株式会社に入社。グループ各社の開発者向け情報を発信する技術広報を担当。過去にはビジネス系メディアに寄稿も。好きな分野はAIのML/DLなど

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