ドローンに関する総合展示会である「Japan Drone 2024 / 次世代エアモビリティ EXPO 2024」が千葉県・幕張メッセで開催されました。GMOインターネットグループはプラチナスポンサーとして協賛し、空のセキュリティをテーマにブース出展を行いました。
さらに国際コンファレンスとして「ハッカー目線で徹底解説! ドローンセキュリティ最新版」と題したセッションも開催しました。GMOインターネットグループからはGMOサイバーセキュリティbyイエラエから2人の専門家が参加。経済産業省の担当者がモデレーターとなって、ドローンに対するサイバー攻撃の最新情報を解説しました。
今回はこちらの国際コンファレンスで行ったセッションのレポートをお届けします。
目次
出展概要
- 日 時:2024年6月5日(水)~7日(金)10:00~17:00
- 会 場:幕張メッセ(展示ホール5・6)千葉県千葉市美浜区中瀬2-1
- 主 催:一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)
- 共 催:株式会社コングレ
登壇者
- 山本健一氏 経済産業省製造産業局航空機武器宇宙産業課次世代空モビリティ政策室次世代空モビリティ戦略企画調整官
- 小池悠生 GMOサイバーセキュリティbyイエラエ株式会社 サイバーセキュリティ事業本部執行役員
- 三村聡志 GMOサイバーセキュリティbyイエラエ株式会社 高度解析部高度解析課
災害現場など様々な分野で活躍するドローンの規制の現状
ドローンは現在、空撮や測量、インフラ点検、物流、農業など、様々な分野で利用が拡大しています。ドローン技術の発展に伴って様々なリスクも高まっています。その1つがサイバー攻撃のリスクです。
まず冒頭、経済産業省の山本健一氏が、ドローンの活用事例として能登半島地震での活用状況を紹介。今回の地震では道路が寸断されて孤立した地域が発生して、歩いて行くにも5~6時間かかるような事例が起きていたといいます。
それに対してドローンで物資輸送したところ「わずか16分で届けられた」と山本氏は紹介。そのほかにも、壊れた家に人が入れない場合にドローンで確認する、災害住宅の建設に適した場所をドローンで上空から探す、といった活躍をしていたそうです。
こうしたドローンは、現在日本で38万機が登録されていると山本氏。現行の法規制では100g以上のドローンは登録が義務付けられており、100g未満のトイドローンなどを含めると数十万機のドローンが実際に使われていると山本氏は話します。
現行の政府の規制では、有人地帯での補助者なし目視外飛行を可能とするレベル4と立入り禁止措置(補助者、看板、道路横断時の知一停止)をおこなった目視外飛行が可能なレベル3があり、「立入り禁止措置」のハードルが高いため、「レベル3.5」という新たな制度も設けられました。
これによって、「道路を横切るときに見張りが必要だった」という状況から、ドローンのカメラで確認することで人の手間を省ける、ということになりました。こうしてドローンの利用拡大を図っているのが政府の方針だと山本氏は言います。
ただ、こうしてドローンの利用が増えると運行管理も重要になります。どのようにコントロールするか、規制、技術の両面から政府でも取り組んでいるそうです。
ドローンの運航管理技術だけでなく、性能評価、機体の安全性評価など、「政府では毎年30億円ほどの予算を使って開発している」と山本氏は説明しました。
ドローンに対するサイバー攻撃の脅威
現在、世の中のすべてのものがインターネットに接続する、いわゆるIoT(モノのインターネット)が広がっており、家電製品だけでなくドローンもIoTの1つに数えられます。そうしたインターネットに接続することで便利になる反面、危険性も高まっています。
そこで経済産業省でもIoT製品に対するセキュリティ適合性評価制度構築に向けた検討会を立ち上げるなど、セキュリティの確保に向けた取り組みを始めています。これはドローンに関しても同様で、政府はドローンの評価におけるセキュリティ適合性評価を検討していく考えです。
そうした規制の現状に対して、実際の攻撃の現状はどうなっているのでしょうか。GMOサイバーセキュリティbyイエラエの三村聡志は、ドローンに対するサイバー攻撃の脅威について次のように説明します。
「ドローンというのは、適切に対策をしないとサイバー攻撃の脅威に晒されてしまう危険性があります。例えば、第三者からの意図しない操作をドローンが受け付けてしまって、救援物資を意図しないところに運んでしまう、もしくは落とされてしまうというものです」。
これに加えて、ドローンが撮影した映像のデータを攻撃者に盗み取られてしまう、またそれを改ざんされてしまうといった、ドローンを介した攻撃というものも考えられます。
実際の攻撃手順についても三村は説明します。まずはドローン自体を把握するために分解をします。これによってWi-Fiとコントローラー間の通信など、一通りの機能を調べるのだといいます。ドローンの制御プログラムが書き込まれたチップを取り出して、プログラムを抜き出すといったことも行えます。
これによって、実際の攻撃ではどこをどのように狙えばいいのかといった部分がだんだんと見えてくると三村は指摘します。加えて、通信経路も調査します。ここで無線LAN経由での攻撃を調査した結果、攻撃の穴が見つかってドローンの映像を盗み見ることができたそうです。
過去の事例では、ドローンと接続したスマートフォンの画面を差し替えて制御を乗っ取り、PCで映像を盗むといった攻撃が成功したそうです。
こうした攻撃に対して、三村は「ドローンを守るには、まず前提として何を守らなければならないか」として2つのポイントを上げます。1つがデータ漏えい、もう1つが不正操作です。
気をつけるべきはドローンそのもの、通信経路、クラウドサーバーだと三村は指摘します。クラウドサーバーにはフライトプランなどの情報が格納されていて、録画データも伝送されている場合も多いため、クラウドの保護も重要になってくるわけです。もちろんカメラの映像を盗み見られる可能性もあり、「この3点セットの対策が重要」と三村。
基本的な対策としては初期設定パスワードを使わずに変更する、ソフトウェアアップデートを行う、通信はTLSなどにより暗号化する、不要な通信機能が存在していないか、秘密鍵や個人情報は適切に保護されているか、といった基本的な対策を適切に行うだけでも安全になると三村は説明します。
こうした対策に対して国の取り組みとしては、サイバーセキュリティガイドラインでドローンの用途ごとに、例えば点検用ドローンであればどの程度守るべきか、災害・警備のような人命に関わるドローンだとどうかなど、用途に応じてリスク分析をしてセキュリティの具体的な対策を示しています。
こうした政府のガイドラインも参考にしているとGMOサイバーセキュリティbyイエラエの小池は説明します。ドローンの開発支援をする場合も、まずはこのガイドラインを把握する必要性を紹介したり、診断の際にガイドラインに沿った説明をしたり、実際の現場で活用しているそうです。
「ドローンは、攻撃が実際の物理空間にも影響を出してしまうという側面を持ったデバイス」と三村は話します。従来のサイバー攻撃はPC内のデータが盗まれたり壊れたりといった被害は出ますが、ドローンの場合は墜落を含めて物理的な影響も出かねません。
悪用によって人命の被害が出る可能性もあるため、安全なドローンを作り上げるために、官民一丸となって取り組んでいく必要があると三村は訴えます。
小池も「ドローンは飛行高度が変わってしまうだけで何か事件が起きてしまう可能性も考えられる」と、ドローンのセキュリティ対策の重要性を指摘。ドローンの制御が奪われることで重大事件に繋がりかねないという認識は共有すべきだと強調しています。
三村は、ドローンは重要なインフラとしてセキュリティ対策は重要ですが、現時点で基本的な対策がしっかりできているドローンが増えれば、安全なプラットフォームとしてドローンがビジネスとして活用できるようになる、と説明。セキュリティ対策以上の効果が得られるとアピールします。
山本氏も、スマートフォンを購入して使うときに個人情報の漏えいに気をつけるように、ドローンを買ったら同様にセキュリティ対策に注意をする。一人一人が危機感を持って考える必要があると指摘します。
ドローンのセキュリティに取り組むことは、今後のドローンビジネスの拡大にも重要で、メーカーや政府、ユーザーそれぞれが取り組んでいくことが必要になりそうです。
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