【インタビューVol.2 前編】デザインで組織を動かす。GMO全社横断クリエイティブ改革の始まり

※こちらはデザイナー・クリエイターインタビュー連載【前編】になります。
GMOインターネットグループが今年4月から開始した、年間を通してデザイン・クリエイティブの発信を強化する施策「Creator Synergy Project」の取り組みとして、本ブログでもデザイナー・クリエイターへのインタビュー連載をスタートしています!
第2回目は、GMOインターネットグループ内のクリエイティブ責任者たちによる横断組織「クリエイターシナジー会議」にフォーカスします。
会議の議長を務める近藤貞治さんと、現場実行の中核を担う岡本くる美さんのお二人に、会議の立ち上げから現在地までを語っていただきました。

危機感から始まった、GMOインターネットグループ横断型会議体の立ち上げ

—お二人は「クリエイターシナジー会議」などを通じて、GMOインターネットグループ全体のクリエイティブを強化する取り組みを進めていらっしゃるんですよね。

近藤

はい。「クリエイターシナジー会議」は、GMOインターネットグループ内の各社クリエイティブ責任者が集まり、ナレッジ共有や取り組み方針のすり合わせを行う、全社横断の会議体です。

発足は2022年度の下半期。「GMO全体のクリエイティブ力を底上げしよう」という趣旨のもと立ち上がりました。

GMOインターネットグループには110社以上の企業がありますが、その中からクリエイティブ組織を担う各社の代表が集まり、月に2回のペースで定期的に会議を行っています。現在の参加メンバーは約30名、参加企業は19社。まだまだ発展途上ではありますが、少しずつ確かな動きになってきた手応えを感じています。

近藤 貞治|GMOインターネットグループ株式会社 グループ管理部門統括 グループクリエイティブ部 部長

GMO入社前はクリエイティブエージェンシーにてグラフィック・Webのデザイン制作に従事。インハウスでの経験を求め、2010年にGMOメイクショップへ入社。デザイン戦略部マネージャーとして、プロダクトやコミュニケーション領域のデザイン制作・管理を手がける。2019年にGMOインターネットグループへ転籍し、グループ全体のブランドマネジメント活動を担当し、全社横断のクリエイティブ強化プロジェクト「クリエイターシナジー会議」の議長も務める。

近藤

会議の目的は、大きく3つあります。1つ目はデザイナーのプレゼンス向上。2つ目はGMOインターネットグループ全体のクリエイティブ力の底上げ。3つ目が、優秀なデザイナーの採用強化です。

これらの目的に向けて、「どのようにアクションするか」「どう連携を深めるか」といった議論を、定例会を通じて重ねています。

根底にあるのは、サービスのクリエイティブやユーザー体験の質を高めること、そして“ものづくりの担い手”の価値を組織の中でしっかりと位置づけていくこと。制作に関わる人たちの力を最大限に引き出すことで、GMOインターネットグループ全体の競争力を高めたいと考えています。

—「クリエイターシナジー会議」における、近藤さんと岡本さんの役割分担は?

近藤

僕は「議長」という立場で、全体の舵取り役を担っています。会議の方針整理や社内との交渉、経営層とのコミュニケーション、年間予算の確保など、運営面全般が主な役割です。

実際のプロジェクトは、テーマごとに分科会を立ち上げて進めています。それぞれの課題に合わせたチーム編成を行い、現場で具体的に動いてくれているひとりが岡本さんです。

岡本

ありがとうございます。私はときに上層メンバーとして、分科会の立ち上げや企画にも関わっています。

中でも多いのは、会議で「こんなことをやろう」と決まったあと、それをどう実行に移すかというフェーズの役割です。具体的には、方針に沿って必要なメンバーに声をかけたり、運営設計を整えたり。決まった方針をどう実行していくかに注力していますね。

「GMOペパボだけじゃない」隠れたデザイナーたちの声が、連携のきっかけに

—「クリエイターシナジー会議」の立ち上げ前、2022年頃のGMOインターネットグループ内の雰囲気はどのようなものだったのでしょうか?

近藤

正直なところ、当時はGMOインターネットグループ内の“縦割り感”がかなり強かった印象があります。それぞれの会社にデザイナーチームは存在していたものの、クリエイター同士の横のつながりはほとんど無かったと思います。

GMOインターネット社はインターネット社、GMOメディア社はメディア社で完結、といった具合に、会社ごとに“独立した島”のような状態だったんです。各チームがそれぞれ独自にイベントを開いたり発信したりはしていましたが、全体としての一体感はほとんどなかったですよね。

岡本

そうですね。GMOインターネットグループに属する会社ごとに、認知度の差もかなり大きかったです。私の所属するGMOメディアなどは、比較的小さな組織ということもあり、あまり認知されていなくて。GMOペパボだけが抜きん出て目立っている状況でした。

社外どころか、他のGMOインターネットグループ内の会社からも「デザイナーさん? ああ、GMOペパボさんの?」と言われることが多くて(笑)。「いや、GMOペパボ以外の会社にもデザイナーはいますよ」と、毎回そこから説明していたんです。

岡本 くる美|GMOメディア株式会社 サービスデザイン部 部長 / GMOインターネットグループ エキスパート(デザインマネジメント)

2014年に新卒でGMOメディアに入社。入社後はポイ活サイト「ポイントタウン」のデザイン業務全般を担当し、そのノウハウをもとにGMOリピータスの立ち上げに参画。約5年間にわたりリードデザイナーとしてポイントサイトの構築・運用に携わった。2021年からは横断型デザイン組織「サービスデザイン部」の責任者として、DesignOps全般を担いながら、採用活動やチームの技術支援、組織マネジメントなどに従事している。2025年4月よりGMOインターネットグループ エキスパートにも着任し、デザインマネジメント領域における広報活動や、グループ横断での組織づくりに貢献し活動の幅を広げている。

近藤

認知の偏りは、採用活動にも影響していました。採用面談で応募者に「知っているGMOのサービスはありますか?」と聞くと、数あるサービスの中で返ってくるのはたいてい「GMOクリック証券」や「GMOあおぞらネット銀行」、あとは「minne byGMOペパボ」や「SUZURI byGMOペパボ」といったあたり。今もまだ課題は残っていますが、当時はもっともっと顕著でしたね。

岡本

悔しかったですよね。本当はもっと幅広いドメインで、たくさんのサービスを展開しているのに……。

そこで、「GMOインターネットグループにはデザイナーがたくさんいるんだぞ!」と知ってもらいたくて、相談したのが橋口さん(※)でした。そのまま橋口さんが旗振り役となり、「会社間でもっと情報を共有して、シナジーを生み出していこう」という趣旨でスタートしたのが、「クリエイターシナジー会議」だったんですよね。

※GMOインターネットグループ株式会社 グループ専務執行役員・CBO 橋口 誠氏

近藤

当時はまだ、「クリエイターシナジー会議」という名前すらなかったですけどね(笑)。謎の集まりというか。感覚としては、「気づいたら呼ばれていた」みたいな雰囲気でした。

岡本

参加メンバーも14人くらいでしたね。今のように全体スローガンもなく、あくまでも“情報共有の場”としてのスタートでした。各社の取り組みを1社ずつプレゼン形式で持ち寄って、「それ、いいね」「うちでもやってみようか」といった具合に、ナレッジを交換し合う場というか。

—GMOインターネットグループ全体としてクリエイティブを強化していくうえで、「各社がそれぞれ尖っていこう」ではなく、あえて「横で連携しよう」と考えた意図は?

岡本

背景にあったのは、エンジニア組織における「技術広報(DevRel/Developer Relations)」チームの存在です。エンジニアサイドは以前から、全社横断での情報発信や勉強会、イベントなどを活発に行っていました。そうした取り組みを見て、「デザイナーもちゃんと連携していこう」という機運が自然と高まっていったように感じます。

そして、もともとは各社が“草の根”で取り組んでいた勉強会やイベントに、GMOインターネットグループ全体として支援を加え、横のつながりを強化していく流れが生まれていったんです。

GMOインターネットグループのDevRelが目指す取り組み
未経験からの技術広報—GMOインターネットグループ 8か月の奮闘記

近藤

当時は、グループ内でしっかりとしたデザイン組織を持っている会社のほうが少なかったですからね。「デザインはアルバイトや外注に任せれば十分でしょ」とか、「エンジニアのお手伝い」くらいにしか見られていない現場もありました。一方で、経営に深く関わるデザイナーがいる会社もあって、温度差がかなり大きかったと思います。

岡本

私がいたGMOメディアでも、デザイナーとの距離感は「デザインの関わる範囲はお任せします」といった感じでした。専門領域としてリスペクトしてくれていたからこそ、あえて口を出さない関係に落ち着いていたのだと思います。

ただ、その分、デザイナーが熱意を持って取り組んでいることが伝わりにくく、もどかしさを感じる場面もありました。場合によっては、“いろいろ好きにやっている部門”みたいに見られていた節もあったと思います。

近藤

でも今は、ようやく「デザイナーをちゃんと評価していこう」という空気が、GMOインターネットグループ全体に芽生えてきました。全社的なスローガンのひとつとしてデザインに関する内容が掲げられるようになったのも、まさにその流れ。スローガンによって「後ろから支えてもらえている」と実感できる場面も増えてきたように感じます。

営業優位の組織文化に風穴を開けたい

—そうしてスタートした「クリエイターシナジー会議」は、どのようにして大きくなっていったのでしょうか?

岡本

手探りで会議を進めていたなかで、当時の議長だった方から、「GMOインターネットグループ全体でもっとチャレンジできることはないか」という提案がありました。

近藤

「クリエイティブのプレゼンスをもっと高めたい」という想いが、会議メンバーの間でも徐々に共有されていった頃ですよね。僕たちの熱意を汲み、GMOインターネットグループとしても後押ししてくれる雰囲気が出てきました。

ターニングポイントとなったのは、2022年12月に開催された「GMO Developers Day 2022」。ここで初めてクリエイティブ系のセッションが設けられました。登壇したのは、当時の議長と、GMOサイバーセキュリティ byイエラエのデザイン責任者。テーマは「クリエイティブリードの実践、クリエイターが活躍する組織とは?」というものでした。

GMO Developers Day 2022|クリエイティブリードの実践、クリエイターが活躍する組織とは?

岡本

あのセッションをきっかけに、全体の意識が高まったと思います。それだけでなく、「GMOには“ちゃんとしたデザイナー”がいて、デザイン組織としてもきちんと機能している」というメッセージを、外部に向けて発信する最初の一歩になりました。

近藤

それと並行して、GMOインターネットグループ全体として「サービスの品質を高めていこう」という方針が強まってきて、UI・UXの改善にも取り組んでいこうという話になったんですよね。

岡本

そう記憶しています。背景にあったのは、当時のGMOインターネットグループに対するデザイナーたちの率直な問題意識でした。正直なところ、当時はかなりマーケティング優先の組織で、有名サービスのクリエイティブでさえ、「これは本当にデザイナーが作りたかったものなのか?」「数字を優先しすぎていないか?」と疑問に思う場面が多々あったので。

近藤

以前は営業主導のカルチャーが色濃くて、「数字を取るために仕方なくこうした」というケースも多かったと思います。

GMOインターネットグループは、これまで営業力やスピードで成長してきた側面があり、それ自体を否定するつもりはありません。ただ、「すべてを数字で判断するのではなく、ユーザーが本当に幸せになれるサービスをつくるべきだ」という意識を、もっと広げていきたいという思いが高まってきて—。

デザイナー・クリエイターの環境を変えるために挑み続けた日々――その想いと歩みを熱く語る二人

後編につづく

サービスの質を変えるだけでは終わらない。目指すのは、組織そのものを変えていくこと。

デザイナーたちの課題意識から立ち上がった「クリエイターシナジー会議」は2023年以降、「UXチェックリスト」の導入を皮切りに、GMOインターネットグループ全体での共通指標づくり、対外発信の強化、そして未来の仲間との接点を生み出す取り組みへと、徐々にその活動の範囲を広げていきます。

後編では、現場の積み重ねを“全社の動き”へとつなげていった軌跡と、組織を横断するデザイナー集団がどのように育っていったのか、そのリアルに迫ります。

インタビュー後編は以下からご覧ください!
動き出した“横断連携”。UX改善から対外発信まで、組織を変えたデザイナーたちの実装力

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技術広報チーム

GMOインターネットグループ株式会社

イベント活動やSNSを通じ、開発者向けにGMOインターネットグループの製品・サービス情報を発信中

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