GMOインターネットグループが今年4月から開始する、年間を通してデザイン・クリエイティブの発信を強化する施策「Creator Synergy Project」の取り組みとして、本ブログでもデザイナー・クリエイターへのインタビュー連載をスタートしました!
第5回は、GMOインターネットグループのセキュリティ専門会社であるGMO Flatt Securityに所属し、セキュリティ診断AIエージェント「Takumi byGMO 」や「Shisho Cloud byGMO」などのプロダクトに関わるプロダクトデザイナー・春田雅貴さんのインタビューです。Photoshopとの出会いからキャリアをスタートさせ、SaaS企業での経験を経て、異業種であるセキュリティ業界に転職された理由とは。エキスパートの名に違わぬ向上心と、努力の全貌に迫ります。
目次
Photoshopとの出会いがすべてを変えた
—春田さんはそもそも、なぜデザインの領域に入られたのでしょうか?

春田
時を大学進学に遡ると、当初は強い目的があったわけではなく、「とにかく関東に出たい」気持ちが一番でした。いろいろな事情をふまえて経営学部を選びましたが、会計の勉強を進めるうちに「これは自分に向いていないな」と感じて……早い段階で、方向転換することにしました。
そこからは自分の可能性を探るために、いろんなことにチャレンジしました。セールスやメディアのライターなど、いろいろやってみたものの、どれもしっくりこなかった。そのとき、ワークショップを通じてPhotoshopを使う機会があって、「自分でもこういうものが作れるんだ」と感じたのが、デザインに興味を持った最初のきっかけです。

春田 雅貴|GMO Flatt Security株式会社 プロダクトセキュリティ事業部 イネーブルメントプラットフォーム部 プロダクトデザイナー
1994年生まれ。大学時代からデザイン領域に携わり、フリー株式会社ではSaaSプロダクトのプロダクトデザインに約8年半従事。グローバルなキャリアを志向し、2024年にGMO Flatt Security株式会社へ転職。セキュリティ×プロダクトデザインという専門性の高い領域に挑戦し、現在はセキュリティ診断AIエージェント「Takumi byGMO 」や「Shisho Cloud byGMO」のオンボーディング改善などを担当。Slack上で人のように振る舞うプロダクトの体験設計や、ユーザー理解を起点としたペルソナ設計をリードするなど、デザインを通じて技術とビジネスの架け橋を担う。2025年にはGMOインターネットグループの「エキスパート」にクリエイター枠として初めて選出され、セキュリティ・生成AIという先端分野における発信・対話・実装の第一線で活動している。
—フリー株式会社での仕事は、いかがでしたか?

春田
とても良い経験ができました。僕が入った当時、フリー株式会社の社員数は180人くらい。今ではその10倍以上ですから、めざましい成長のタイミングに居合わせましたよね。でも、当時はまだシニアの方ばかりで、ポツンと1人だけインターンとして加わったような状況でした。
フリー株式会社ではデザイン経験がなかった僕に対して、シニアデザイナーの方が本当に細かいところまで毎回レビューしてくださいました。最初の半年から1年くらいは、ほぼすべてのアウトプットが徹底的に直されていたんじゃないかな。その滑り出しといったら、しばらく経った頃に、「結構厳しく言ったけど、よく食らいついてきたね」と言われたほどでした。
でも、自分はどうしてもデザイナーになりたかったので、フィードバックが厳しくても、それがむしろ楽しかったんです。できないなりにトライしながら、「どうすればできるようになるか」と常に考え続けていました。辛さよりも、前に進みたいという気持ちの方が強かったです。
—フリー株式会社で特に印象に残っている経験はありますか?

春田
いろんなプロジェクトに関わりましたが、ひとつ挙げるとすれば、ユーザーリサーチの一環として、中小企業の経営者の方に直接インタビューさせていただいた経験ですね。
フリー株式会社には「マジ価値」というカルチャーがあり、これは、ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをやろう、という考え方でした。でも、ユーザーのことを知らなければ、その「マジ価値」が何かすら分からない。会社としてもその課題を感じていて、ちゃんとリサーチしようという流れがありました。
ちょうどその頃、ユーザーリサーチに強いデザイナーが入社して、仕組みづくりやプロセスの整備が進みはじめました。そして、自分もチームの一員として、何十人もの経営者の方々と直接お話しする機会に恵まれました。
起業のきっかけや、どんな苦労をしてこられたか、freeeを使ってどう感じたか。そうしたリアルな声に触れる中で、プロダクトがどれだけ人の役に立てるのかを強く実感したんです。プロダクトの見た目だけでなく、体験全体をデザインする視点を育ててもらえた、貴重な成長の機会でした。
越境するデザイン──CIIDとグローバルチームで得た視点
—春田さんは、グローバル志向も強いと伺いました。

春田
東京に出てきた時と同じように、「いつかはグローバルな働き方をしてみたい」という憧れが昔からありました。それがアクションとして形になったのが、デンマークへの短期留学と、「Design Matters Tokyo」へのスタッフ参加です。
まず、留学のきっかけになったのは、とある方が発信されていた留学にまつわるエピソードでした。その内容にとても感化されて……自分も絶対に留学するぞと決意し、忙しい日々の合間を縫って、英語の勉強に打ち込みました。
特に印象的だったのが、デンマークにおけるデザインの捉え方です。
たとえば、病院の現場にデザイナーが入り込み、患者さんの入院体験や治療過程を一緒に観察しながら、対話や意思決定のプロセスを改善していくような取り組みがある。デザインが見た目の美しさを超えて、社会のインフラや体験全体に関わっている。そういう実践が当たり前のように受け入れられている文化に、強い衝撃を受けました。
自分もそういう文脈で学びたい。もっとデザインの真髄を知りたい—そんな強い思いが芽生えたものの、やはり初めから年単位での留学はハードルが高くて。まずは短期から始めようと、コペンハーゲンの「Copenhagen Institute of Interaction Design(CIID)」が開く1週間のサマースクールに参加しました。
サマースクールには世界中から多様なバックグラウンドを持つ人たちが集まり、ワークショップを通じて、ひとつのものを作り上げていきます。だけど、メンバーはそれぞれ、文化も価値観も全然違う。最初は議論がまったく噛み合わなかったんです。
でも、意見のズレを埋めていくために、絵を描いたり、付箋で言葉を可視化したりと、少しずつ共通認識を築き上げていって。最終的にプロジェクトを形にできたときは、大変さと面白さの両方を感じました。


春田
こうした経験を通じて、「もっとグローバルな環境に身を置きたい」という気持ちがますます強くなった結果、グローバルカンファレンス「Design Matters Tokyo」にも関わるようになりました。初めはいち参加者だったのですが、イベント終了後のアンケートに長文の感想を書いたところ、「スタッフとして手伝ってみない?」と声をかけてもらい、運営スタッフとして関わることになったんです。
なかでも印象に残っているのが、大好きな「コーヒー」を提供する役割を任せてもらったこと。コーヒーをきっかけに世界中のデザイナーと自然な会話が生まれ、交流のハードルをぐっと下げてくれました。



春田
自分の「好き」を通じて場づくりに関われたことが嬉しかったですし、イベントの空気や人とのつながりを肌で感じられる、かけがえのない経験になりました。
—CIIDでの経験は、実際の仕事にも生きてきましたか?

春田
しっかり生かせたと思います。ちょうどその頃、海外エンジニアの採用が社内の課題になっていて、グローバルチームを立ち上げる話が出てきたんです。そのタイミングで、上長に「デザイナー1人目として自分を入れてください」と直談判しました。
その希望が受け入れられ、2022年から2023年にかけては、グローバルチームでデザイナーとして工数管理ソフトの設計をリードしたほか、iOSアプリの多言語対応にも注力。その後もグローバルデザインマネージャーとして6、7名のチームを率いながら、OKRの設計やデザインリサーチ、プロダクト戦略の立案などにも関わりました。
—グローバルなチームで、しかも1人目デザイナーとして働くとなると、コミュニケーション面で相当苦労したのでは。

春田
もちろん、大変なことはたくさんありました。文化も働き方も違うし、そもそもドキュメントはすべて日本語。言語の壁や認識のズレを乗り越えるには時間がかかりました。でもCIIDでの経験があったからこそ、「手ごわい環境こそ面白い」と思えたんです。
仕事以外でも、グローバルな環境に馴染むための仕組みづくりにも力を入れました。たとえば、月ごとに使えるチームビルディング予算を活用してイベントや飲み会を開き、自然な形で会話が生まれるようにするとか。そうした積み重ねの中で、英語力に関しても次第に自信が湧いてきましたね。
グローバルを目指し、転職を決断
—8年半も働いた職場を離れ、転職を決断された理由は何だったのでしょうか?

春田
前職にネガティブな気持ちはまったくなく、むしろ、自分がやりたかったことを一通りやりきったという実感がありました。だからこそ、次のステップを考えるようになったんです。
特に強くなっていたのが「グローバルな環境で働きたい」という思いでした。ただ、当時携わっていた会計や労務といった領域は、国ごとの制度差が大きく、グローバル展開には限界がある。だったら、自分のキャリアを次のフェーズに進める必要があると考えました。


春田
そこから転職活動を始めたのですが、いくつか譲れない軸がありました。たとえば、役割がカチッと決まりすぎている環境では自分の強みを活かせないので、幅広く手を動かせること。そして、自分はやっぱりプロダクトを作ることが好きで、現場に関わっていたいという気持ちが強かったこと。
なにより大きかったのは「英語環境で自分の力を試したい」という気持ちでした。これはずっと持ち続けていた軸で、グローバルなチームの中で、どれだけ自分が通用するのか挑戦してみたかった。そんな思いが、転職を後押ししてくれました。
—転職活動はどのように進めていかれたのでしょうか。

春田
はじめは外資系企業や、グローバルチームを持っている国内企業などに話を聞きに行きました。ただ、なかなか自分にフィットするところが見つからなかったり、そもそも選考に通らなかったりして、「やり方を変えないとな」と考えていたところに、思いがけない声がかかったんです。
連絡をくれたのは、GMO Flatt Securityの執行役員CCOである豊田恵二郎でした。彼とは大学時代からの友人で、僕がフリー株式会社でインターンを始めた頃に、彼も同じようなタイミングでキャリアをスタートさせていました。
「次の職場を探しているなら、一度話してみない?」という感じで誘ってもらって、飲みに行くことになりました。その場にはCEOの井手(康貴)やCTOの米内(貴志)もいて、視座の高さとロジカルな考え方に刺激を受けました。楽しく会話を重ねる中で、「ここでなら自分がやりたいことができる」という直感が得られました。
—セキュリティという事業ドメインについてはどうでしたか?

春田
とても魅力的でした。将来的にグローバルで働くことを視野に入れると、自分の専門に希少性があるかは重要です。そしてセキュリティという分野は、正直に言えば、デザイナーがあまり好んで飛び込む領域ではない。でも、だからこそ、そこでの経験が自分の強みになると確信しました。
しかもセキュリティは世界的な課題であり、国境を超えて共通するニーズがあります。自分の英語力がネイティブレベルでなかったとしても、セキュリティというドメインで得た専門性は、グローバルで戦うための武器になると思ったんです。
それで順調に選考を進んでいったのですが、特に印象に残っているのが、最後の最後に設けられていた『1day体験入社』です。当時はまだ、セキュリティプロダクトのデザインや、開発チームの動き方がまったくイメージできていなかったので、現場に入って体験できたのは本当にありがたかったです。
その日はオフィスに1日入り、「Shisho Cloud byGMO」というプロダクトの改善案を考えるワークを行いました。まだ専任のデザイナーがいない時期だったので、体験入社のフローも固まっておらず、開発メンバーに直接話を聞きながらプロダクトを理解していくような形でした。

春田さんのジョイン背景や入社後の活躍については、Flatt Security公式noteのインタビュー「Hello, Flattmate!|プロダクトデザイナー hal(@hrtnde)」でも詳しく紹介されています。
Shisho Cloud byGMOとは
「Shisho Cloud byGMO」は、開発組織のための脆弱性診断プラットフォームである。AWSなどのクラウド環境、Webアプリケーション、APIを対象に、プロダクト全体を自動で診断し、セキュリティの継続的な改善を支援する。SPAやGraphQLを用いたモダンな開発にも対応しており、開発初期から運用フェーズまで幅広く活用できる。
セキュリティの専門知識がなくても修正可能なレポートを提供し、必要に応じて専門家による支援も受けられる。診断対象はクラウド設定・Webアプリケーション・API・SPAソースコードなど多岐にわたり、クラウド権限管理(CIEM)や公開資産の検出・管理(ASM)なども可能。
また、GitHubの設定値検査やCIツール連携、Slack通知にも対応しており、開発プロセスの中で自然にセキュリティを取り入れることが可能である。AIを活用した認可制御の自動診断(AuthZ Assessment)機能も搭載しており、権限ごとの挙動検証を自動化することで、より深いレベルでのリスク検出を実現している。

春田
セキュリティ領域に少しずつ触れながら、自分がどう関われるかを実感できる貴重な時間でした。ちなみにこの体験入社は「稼働」扱いになるため、きちんと報酬も出ます。選考に対する本気度が伝わってくる制度ですよね。
後編につづく
セキュリティの領域で“人らしい”プロダクトをどうデザインするのか。その挑戦は、Slack上で動くAIエージェント「Takumi byGMO」や、エンジニア向けSaaS「Shisho Cloud byGMO」の体験改善へとつながっていきます。
後編では、プロダクトとの関わり方、チームビルディング、そして春田さんが選ばれた「エキスパート制度(GMOインターネットグループの技術やクリエイティブの発信を担う第一人者を支援する社内制度)」の意義についても掘り下げていきます。
▽インタビュー後編はこちらから
【インタビューVol.4 後編】ルールなき世界に価値を描く。AI×セキュリティに挑む思考と実装


ブログの著者欄
採用情報
関連記事
KEYWORD
CATEGORY
-
技術情報(491)
-
イベント(185)
-
カルチャー(43)
-
デザイン(34)
TAG
- "eVTOL"
- "Japan Drone"
- "ロボティクス"
- "空飛ぶクルマ"
- 5G
- Adam byGMO
- AI
- AI人財
- AWX
- BIT VALLEY
- Blade
- blockchain
- Canva
- ChatGPT
- ChatGPT Team
- Claude Team
- cloudflare
- cloudnative
- CloudStack
- CM
- CNDO
- CNDT
- CODEGYM Academy
- ConoHa
- ConoHa、Dify
- CS
- CSS
- CTF
- DC
- Designship
- Desiner
- DeveloperExper
- DeveloperExpert
- DevRel
- DevSecOpsThon
- Dify
- DNS
- Docker
- DTF
- Expert
- Felo
- GitLab
- GMO AIR
- GMO Developers Day
- GMO Developers Night
- GMO Developers ブログ
- GMO Flatt Security
- GMO GPUクラウド
- GMO Hacking Night
- GMO kitaQ
- GMO SONIC
- GMOアドパートナーズ
- GMOアドマーケティング
- GMOイエラエ
- GMOクラウド]
- GMOグローバルサイン
- GMOサイバーセキュリティ大会議
- GMOサイバーセキュリティ大会議&表彰式
- GMOソリューションパートナー
- GMOデジキッズ
- GMOブランドセキュリティ
- GMOペイメントゲートウェイ
- GMOペパボ
- GMOリサーチ
- Go
- GTB
- Hardning
- Harvester
- HCI
- iOS
- IoT
- ISUCON
- JapanDrone
- Java
- JJUG
- K8s
- Kaigi on Rails
- Kids VALLEY
- LLM
- MetaMask
- MySQL
- NFT
- NVIDIA
- NW構成図
- NW設定
- OpenStack
- Perl
- perplexity
- PHP
- PHPcon
- PHPerKaigi
- PHPカンファレンス
- QUIC
- Rancher
- RPA
- Ruby
- Selenium
- Slack
- Slack活用
- Spectrum Tokyo Meetup
- splunk
- SRE
- SSL
- Terraform
- TLS
- TypeScript
- UI/UX
- vibe
- VLAN
- VS Code
- Webアプリケーション
- XSS
- アドベントカレンダー
- イベントレポート
- インターンシップ
- オブジェクト指向
- オンボーディング
- お名前.com
- カルチャー
- コンテナ
- サイバーセキュリティ
- スクラム
- スペシャリスト
- セキュリティ
- ソフトウェアテスト
- チームビルディング
- デザイン
- ドローン
- ネットのセキュリティもGMO
- ネットワーク
- ヒューマノイド
- ヒューマノイドロボット
- プログラミング教育
- ブロックチェーン
- ベイズ統計学
- マルチプレイ
- ミドルウェア
- モバイル
- ゆめみらいワーク
- リモートワーク
- レンタルサーバー
- 京大ミートアップ
- 人材派遣
- 出展レポート
- 協賛レポート
- 基礎
- 多拠点開発
- 大学授業
- 宮崎オフィス
- 展示会
- 応用
- 技育プロジェクト
- 技術広報
- 新卒
- 暗号
- 業務効率化
- 業務時間削減
- 機械学習
- 決済
- 物理暗号
- 生成AI
- 視覚暗号
- 階層ベイズ
- 高機能暗号
PICKUP
-
【インタビューVol.4 後編】ルールなき世界に価値を描く。AI×セキュリティに挑む思考と実装
デザイン
-
【インタビューVol.4 前編】「ソーシャルデザインを探して。デンマークで感じた戸惑いと確かな手応え」
デザイン
-
【イベントレポート】現場の知見を1on1で共有!「DESIGN LEAD 1on1」で見えた、インハウスデザインの最前線
技術情報
-
生成AIで映像制作を加速!After Effects & Premiere Pro新ワークフロー
技術情報
-
GMOインターネットグループエキスパート黒瀧の2024年度活動レポート
技術情報
-
【技術書典18】協賛ブースでGMOインターネットグループの合同誌を頒布しました!
イベント