【イベントレポート】横浜ロボットワールド2024にて、専門セミナー「AI・ロボティクス社会の実現に向けて」を開講

GMOインターネットグループは、2024年12月5・6日にパシフィコ横浜で開催された横浜ロボットワールド2024にて専門セミナー「AI・ロボティクス社会の実現に向けて ~GMOインターネットグループが支えるインフラソリューション~」を開講。2024年6月に設立したGMO AI&ロボティクス商事株式会社の取り組みと将来の展望をご紹介しました。

本レポートではGMO AI&ロボティクス商事の金明源さん・吉田峻斎さんに加え、GMOグローバルサインホールディングスの末舛仁史さん(企画開発部DX事業推進セクション セクションチーフ)、GMOインターネットの三谷健太さん(事業統括本部 アクセス事業本部 アライアンス事業部)の4名による講演の様子をお届けします。

AIとロボティクスが主導する新時代に向けて

過去の産業革命を振り返ると、約55年周期で革新的なテクノロジーが登場し、社会や経済構造に大きな変革をもたらしてきました。

1995年にWindows 95が登場し、デジタル技術の大衆化が進んだことで始まったIT革命から27年。周期のちょうど半分のタイミングとなる2022年秋には、ChatGPTの提供が始まり、新たなフェーズに突入しました。GMOインターネットグループは、このIT革命の後半戦を「AI・ロボティクス革命」と捉え、来るべき未来へ向けた価値提供を積極的に推進しています。

GMOインターネットグループ全体で掲げる経営スローガン「AIで未来を創るNo.1企業グループ」を実現するべく、GMOではその実践的な取り組みとして、

①時間とコストの節約                                    AI活用コンテスト、AI情報ポータルサイト、AIリスキリングプログラムの提供による企業活動の効率化・自動化

②既存サービスの質向上                                   GMOグループ各社が提供するサービスにおけるAI導入を進め、品質の向上を実現

③AI産業への新サービス提供                                 AI産業で最も伸びるのは「インフラ」と考え、従来同様、インフラ提供に注力

という3つの方針を軸に据えています。セミナーではこれらの取り組みについて、①ネット回線、②画像解析、③セキュリティ、④GPUの観点から、具体的な事例をもとにご紹介しました。

ロボットに欠かせない通信インフラを提供(三谷)

まずは、GMOインターネット株式会社事業統括本部・アクセス事業本部 アライアンス事業部の三谷健太さんによる、通信インフラの提供に関するレクチャーです。

GMOインターネット株式会社事業統括本部・アクセス事業本部 アライアンス事業部 三谷健太

三谷さんは、企業で利用するインターネット環境の整備に関する提案やICT教育の進む小中学校や高校でのネット環境整備に関する課題解決に携わっています。

通信インフラの提供手法には、衛星通信、Wi-Fi、モバイルLTE、ローカル5Gという4つの主要な技術がありますが、Wi-Fi技術においては、指向性(一方向に信号を送信)と無指向性(全方向に信号を送信)を融合させたアプローチを採用しています。

また、通信の構築手法については、現在主流となっているメッシュネットワーク構築、物理的配線構築に加え、漏洩同軸ケーブル(LCX)を使用した方法も提案可能です。

メッシュネットワークの技術は、屋外での広範囲なエリアをカバーするのに適しており、例えばソーラーパネルを含む5台の機器を使用することで、大規模な農場のモニタリングを行うことが可能です。

さいたまスーパーアリーナで行われる「GMO SONIC」では、フルキャッシュレスを実現するために決済端末向けの、Wi-Fi環境を2年連続で構築しています。

三谷さんは「適宜指示を受けて動くロボットにとって、リアルタイムな通信環境はまさに生命線です。山間部やプラントなど、Wi-Fi化の需要は多岐にわたり、最適な構成などは場所や状況によって異なります。こうした個々の事情や事例に対して最適なソリューションを提案できるのも当社の強みです」と述べ、AIとロボティクスの時代に向けてのGMOの強みを強調しました。

hakaru.ai byGMOで実現する製造DXへのはじめの一歩(末舛)

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 企画開発部DX事業推進セクション セクションチーフ 末舛仁史

続いて登壇するのはGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 企画開発部DX事業推進セクション セクションチーフ 末舛仁史さん。スマートフォンを用いて、簡単に製造業のDX(デジタル変革)を実現する「hakaru.ai」について紹介しました。このシステムは、メーターをスマートフォンアプリで撮影することで、AIで数値を読み取り、自動でデータを数値化して、台帳に反映させるものです。

人手不足解消という文脈から需要が高まる製造業のDXですが、末舛さんは「そもそも、データがなければDXは困難です。さらに言えば、不正確なデータを集めるのも無意味。正確なデータをきちんと収集することが肝になります」と語ります。

人力による目視確認やチェックを行うという体制では、どれだけ対策してもミスを完全に消し去ることは難しいといえます。AIを活用して作業効率を向上させ、正確なデータを得ることがDX成功の鍵を握ると言えるでしょう。また、事業所に戻らなくてもその場で入力できるよう、クラウド管理とペーパーレスの体制を整えることも求められます。

さらに、「hakaru.ai」においては、現場でのロボットによるデータ収集も増えているとのこと。このロボットにAPIを連携させて、取得したデータをAIで分析し、メーターの値を既存のシステムやアプリに伝えるという流れも基本となっています。

末舛さんは「このアプローチを完全に取り入れるには数年かかり、その間も人の手による作業は続きます。我々はこれを支えながら、できるだけ正確なデータを集めることに尽力しています。サービス提供から5年以上経過し、認識精度はかなり向上しているものの、満足することなく新たな研究を進めています」と述べ、さらなる進化に意欲を示しました。

インターネット=インフラ時代のセキュリティを担うGMOのソリューション(金)

次に登壇したのは、2024年にGMOインターネットグループに入社した新卒の金明源さんです。入社後すぐにGMO AI&ロボティクス商事設立のプロジェクトに参加することになり、営業、戦略立案、マーケティングなど幅広い業務を経験しました。

金さんは、ロボットとセキュリティの関係性について深く掘り下げ、「ロボット領域においても、他のIoT機器と同様、ロボット・端末・サーバーの3経路全てでセキュリティを担保する必要がある」と強調。特に、LLM(大規模言語モデル)が基盤となるサービスが増える中で、情報漏洩のリスクが高まっており、セキュリティの重要性が増していると述べました。

GMO AI&ロボティクス商事 金明源

金さんはまた、国内外のセキュリティコンテストで2年連続世界No.1を獲得し、脆弱性診断・侵入テストで9,000件を超える実績を持つGMOサイバーセキュリティby イエラエについて紹介。製造業向けのホワイトハッカーによるセキュリティソリューションや、経産省「情報セキュリティサービス審査」認証済みのサービスである「LLMセキュリティ診断」の詳細にも触れました。

併せて金さんは、GPUの計算基盤について「性能を最大化するには、最適化されたマルチノード環境と導入・運用を行うための設備やノウハウが重要」と示します。

CPUベースのLLM(大規模言語モデル)開発では、使用されるGPUのメモリサイズや帯域幅にわずかな違いがあるだけで、倍以上の処理性能差が生じます。さらに、LLM開発に使うデータセットのサイズは数百TBに及ぶため、高速な読み書きが可能なストレージシステムが不可欠なのです。

現行の最新CPUサーバーでは11,700Wにもおよぶ莫大な電力を消費しますが、それに伴う排熱・騒音なども問題です。

これらのハードルをクリアし、マルチノードに最適化された高性能GPUクラスタとして、金さんはGMOが提供する「GMO GPUクラウド」を紹介します。AI・ロボティクス革命を支えるGMOのインフラソリューションとして、「GMO GPUクラウド」も必要不可欠なサービスだといえるでしょう。

AIとロボティクスの縁結び役として(吉田)

GMO AI&ロボティクス商事 吉田峻斎

最後にGMO AI&ロボティクス商事 吉田峻斎さんが全体のまとめとして、「GMOは単にAIとロボットを提供するだけでなく、これらを支えるためのインフラを提供することで、近い将来到来するAI・ロボティクス社会に貢献していく」と強調しました。

ネットインフラ商材の経験とこれまで蓄積したAI活用のノウハウを活かし、今後はリースやレンタルなどを通してロボットの普及を目指します。

具体的に目指すべき成果として、吉田さんはAIサービスロボット、四足歩行ロボット、ヒト型ロボットの開発と展開を「実現したいビジョン」に挙げます。「これらのプロジェクトは現在、実証実験や基盤モデルの構築フェーズにあるが、最終的にはこれらの技術をプロダクト化するところまで力強く進めていく」と語り、セミナーを締めくくりました。

目指すは「GMOが全てのロボットのインフラを支える」未来

セミナー終了後、登壇者の4名からはこのようなコメントが寄せられました。

三谷 :

今回のセミナーには、すでに直面している課題を持つ方だけでなく、新しい技術にまだ慣れていない方にも多くお越しいただきました。

こうした温度感が生まれるのは、多くの企業にとってはまだまだ「リアルタイムで通信を使って動かす」ことが一般的でないという背景があるためだと考えています。ロボットを活用した通信インフラに対しての解像度と熱量を上げていただくために、今後は更にアウトリーチを強化し、必要なソリューションを提供する体制を整えていくつもりです。 

末舛:

三谷さんもおっしゃったとおり、初めは参加者の中に戸惑いも感じられました。しかし、後半になるにつれて参加者の皆様がどんどん前のめりになり、我々のメッセージが伝わったという確かな手応えを感じました。今後はさらにこの活動を継続、強化していきます。

吉田 :

新卒1年目でこのような大きな舞台に立つのは、非常に緊張しましたが、多くの方が私の話に耳を傾けてくれて、非常に心強く感じました。本日のセミナーが、多くの企業との新たなつながりを生むきっかけになればと思います。

金:

私にとっては、セキュリティとGPUについて説得力のある説明を行うのが大きな挑戦でした。万全を期して準備を進める中で、GPUに関しての知識や商材理解を深められたことは、私の成長にとって非常に価値がありました。 

来たるAI・ロボティクス社会の実現に向けて、GMO AI&ロボティクス商事株式会社では、ロボットを活用する際に必要となるインターネット回線の整備や、セキュリティホール対策などを行う脆弱性診断などを提供できる体制を整えています。

GMOインターネットグループの将来像は「すべてのロボットのインフラを、GMOが支えている状態」です。これからのAI・ロボティクス時代においても、ロボットのインフラを我々が支えてまいります。

《本文中で紹介した各サービスの詳細はこちらから》

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