GMOインターネットグループは、2025年10月11日(土)・12日(日)に東京ミッドタウンで開催されたデザインカンファレンス「Designship 2025」に、昨年に続き協賛企業として参加しました。[協賛レポート・前編]でお伝えしたブース展示に続き、後編ではGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 田伐(たぎり)直子によるメインセッションを中心に、現地の熱気をお届けします。
目次
イベント概要
- 開催日時:2025年10月11日(土)・12日(日)
- 開催場所:東京ミッドタウン ホール&カンファレンス
- 対象者:デザイナー、デザイナー志望の方、デザインに興味のある方
- 参加方法:チケット購入(配信付きチケットあり)
- 主催:一般社団法人デザインシップ
- 公式サイト:https://design-ship.jp/2025
セッション「“勝つデザイン”と“やさしいデザイン”のあいだ」

本セッションでは、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 田伐直子が、自身のキャリアを通じて見つめ続けてきた「勝つデザイン」と「やさしいデザイン」という2つの価値観について語りました。
冒頭で田伐が投げかけた問いは、「誰のためのデザインか」。売上や納期などの目標に向かってデザインを追い込む日もあれば、誰かを思い浮かべながら願いを込めて手を動かす日もあるでしょう。田伐は「この問いを改めて考える時間にしたい」と語りかけ、セッションを始めました。

「勝つデザイン」と「やさしいデザイン」
田伐はまず、セッションタイトルに含まれた2つの概念を定義します。

「勝つデザイン」とは、競合優位性や市場シェアを獲得し、売上や利益といった成果を第一に考えるデザイン。
「やさしいデザイン」とは、人の心地よさや美しさを大切にし、よりよい社会や世界をつくることを目指すデザインです。
そのうえで、「この2つはトレードオフの関係ではなく、両立させていくべきもの」と断言。「状況に応じて最適なバランスをとることこそ、デザインにおいて重要な姿勢だ」と語りました。

「わたしのデザインジャーニー」数字と理想のあいだで
とはいえ、田伐も「初めからこれらを両立できたわけではない」と話します。

若手時代の田伐は、「かっこいいものをつくりたい」という純粋な動機でWebデザインの世界に飛び込みました。
しかし、ビジネスの現場では「何のためのデザインか」「数字で説明できるか」といった問いに直面します。数字を追い続けるなかで理想とのギャップに悩みながらも、デザイナーとして成果を求められる環境に向き合い続けました。
32歳のときに迎えた産休が、田伐にとっての転機になりました。仕事から一度離れたことで気持ちがリセットされ、「やっぱり気持ちのいいものをつくりたい」という原点を思い出したといいます。
ただ、復職後は育児と仕事の両立という現実的な課題が待っていました。フルタイム勤務でも残業ができない中、どうすればより良いアウトプットを出せるか。
そこで、自分で手を動かすよりもチーム全体のデザインをディレクションする立場に転向。ディレクターとして他職種のメンバーと連携する中で、組織や社会の視点からデザインを見るようになり、仕事への理解が大きく広がったそうです。

コロナ禍と「電子印鑑GMOサイン」ブランディング
2020年、2度目の産休から復帰したとき、会社はコロナ禍で大きく変わっていました。リモートワークが浸透し、電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン(旧称:GMO電子印鑑Agree)」が急成長。
急ピッチで進む事業の中で次々とクリエイティブを生み出す日々は「数字に心を売りそうになった」と表現するほどの忙しさでした。
それでも、田伐は次第に「ブランドとしての一体感を出したい」と考えるようになります。
ちょうどその頃、サービス名を変更してブランディングを再構築するタイミングがあり、田伐がそのリードを担当。「チームが一体になれるブランディングにしたい」との思いで、パーパス設計から関わりました。
リリース後は、メンバーから「このビジュアルが好き」「グッズにしたい」という声があがり、ユーザーからも「このハンコのデザインが好き」といった反応が届くように。
“勝つデザイン”として始まったブランディングが、“やさしいデザイン”を実現し、人の「好き」という感情を生み出す結果につながりました。田伐はこれを「自分にとってのターニングポイント」と語ります。
「勝つデザイン」に必要な3つの軸
経験を通じて田伐が見出したのは、「勝つデザイン」にも“やさしさ”が必要だという気づきでした。
そのうえで、成果を上げるデザインに欠かせない3つの軸として、次のポイントを挙げます。
声の大きさに細心の注意を払う

ビジュアルが強すぎると短期的には目立つが、長期的にはブランドを損なうこともある。控えめすぎても届かない。状況に合わせて“ちょうどいい声量”を見極める。
事業フェーズ・デザインの必要性を考慮する

デザインへの投資や目的は、事業の段階によって変わる。マネージャーとしては、どこにリソースを注ぐべきかを見極めることが重要。
デザイン資産を生産性向上に活かす

デザインを再利用できる仕組みを整え、デザインシステムとして共有することで、組織全体の成果を底上げする。
「やさしいデザイン」が導く未来
後半では、「やさしいデザイン」の社会的意義にも言及。
資本主義社会の中で「心地よさ」は軽視されがちだが、田伐は「もちろん必要」と断言します。
狩猟・農耕・工業の時代を経て、いま私たちは利便性と最適化を追求するSociety 4.0の時代を迎えています。「そしてこの先に訪れるのは、心が動くと資本も動く、Society 5.0の時代」であると田伐は語ります。

生成AIやChatGPTのような技術も「やさしいデザイン」の象徴だと指摘。自然言語で操作できる、チャットという人間的なインターフェースを持つ点が、人に寄り添う設計であり、世界中に受け入れられた理由だと分析しました。
最後に田伐は、改めて問いを投げかけました。
「皆さんは、誰のためにデザインをしていますか?」
GMOインターネットグループのデザイナーたちもまた、No.1商材を目指す企業の中で、「勝つこと」と「やさしさ」の最適なバランスを日々模索しています。「さまざまな発信を通じて私たちの取り組みを知っていただけたら」と結んだセッションは、拍手で幕を閉じました。

おわりに
GMOインターネットグループは「Creator Synergy Project」を軸に、社内外のクリエイターが交わり、学び合う場を増やしながら、デザインの可能性を多面的に発信する挑戦を続けています。
Designship2025への登壇や展示を通じて、グループ内で育まれる多様なデザイン文化と、その背後にあるクリエイティブな挑戦が少しでも伝われば幸いです。
今回のDesignshipで得たつながりと気づきを次のアクションへとつなげながら、GMOインターネットグループはこれからもデザインとテクノロジーの力で新たな価値を生み出していきます。これからの歩みにも、どうぞご期待ください。
▽【協賛レポート・前編】Designship 2025|参加者と“共につくる”デザインのかたち──私たちの挑戦を振り返る

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