2025年3月19日、神田明神ホールで開催された「Creators MIX 2025」におけるセッション「クリエイティブとAIの最前線 2025」にて、GMOインターネットグループの内野皓太がモデレーターを務めました。
セッションでは、アドビ株式会社の阿部成行氏と株式会社サイバーエージェントの洞ノ上茉亜子氏をパネリストに迎え、AI技術の進化によって変わりつつあるクリエイティブ業界の現状と未来についての活発な議論が行われました。
本ブログでは、講演内容を中心にレポートし、後半にてGMOインターネットグループのAI推進の取り組みについてもご紹介しています。
目次
トークセッション「クリエイティブとAIの最前線 2025」
①AI活用で進む多様性&市場拡大
まず口火を切ったのは、アドビ株式会社・阿部成行氏です。「テクノロジーとクリエイティブは非常に密接に連携している」という所感に始まり、クリエイティブ領域のフロントランナーとして、長きにわたって見つめてきた業界の変化を語りました。

阿部氏が「クリエイティブの工業化」の一例として紹介するのは、コンテンツサプライチェーンです。これは需要予測に応じてコンテンツを作成・提供し効果測定を行う仕組みであり、「予測や作成といった各工程に、非構造化データも含めた分析や提案・実行までを担う自律的AIエージェントが組み込まれることで、効率化・自動化が進むだろう」との展望を語ります。
阿部氏はパソコン登場前のデザイン会社を例に挙げ、「DTPの一般化までは、”定規で1ミリ単位の線が引けること”がクリエイティブの質に直結していた」と話します。
「ところがテクノロジーの進歩により、綺麗に線が引けるだけのデザイナーや製版業の仕事はなくなってしまった。生成AIにも、まさにこれと同じ波を感じる」と、技術発展が仕事のあり方に与える影響を熱弁しました。
クリエイティブ×分析といえば、インターネット広告事業の雄であるサイバーエージェントもまた、深い知見を有するフロントランナーです。株式会社サイバーエージェント・洞ノ上茉亜子氏は、同社でのAI活用について「”予測AI”と”生成AI”を両輪としてコンテンツ制作を行っている」と紹介。同社の「極予測AI」では、作成した成果物(広告)について、現在配信しているコンテンツよりも効果が見込めるかどうかを事前に予測できるそうです。

同社の現場ではこのスコアをベースとしたクリエイティブ体制を確立しているといい、「極予測AIで現状の広告物にスコアが勝たない(良くない)ものは納品しません、とクライアントに宣言している」(洞ノ上氏)とのこと。大量のパターンを生成できることで、広告素材を潤沢に生み出せる点も「配信スピードの速いインターネット広告には好適」と話し、AIの活用はもはや「前提」になりつつあるという実感を述べられました。

AIを活用することで、1〜2年目の若手でもベテラン以上のアウトプットを出せることもある、と語る洞ノ上氏。「極AIをリリースして以降、”人間とAIでクリエイティブを作る”ことが普通になり、いまでは文化となっている」と、AIとの共働体制の在り方を示しました。
②クリエイターに求められるスキルと心構え
これからのクリエイターに必要なスキルと心構えについて、阿部氏は「今後は経営やブランディングなど、自分の領域を飛び越えたものづくりが必要になる」と提言し、従来の分業化された役割を超えた統合的アプローチの重要性を説きます。
背景にあるのは、生成AIという「道具」がカバーする範囲の広大さです。道具としての生成AIはあくまで1つのテクノロジーですが、活用領域はクリエイティブからビジネスまで多岐にわたります。そのため阿部氏は「今までデータサイエンティストなどの専門家に任せていた領域が、生成AIによって民主化される」と予測。現在分業化されているフロントエンジニアリングやUI設計などの垣根も曖昧になり、誰もが高品質なプロトタイプングを瞬時に作成して、その優劣をデータで検証できるようになるだろうと語りました。

一方、洞ノ上氏は「AIという存在に怖さを感じるクリエイターもいる」としつつ、まずはAIを知ろうとする姿勢が大事だと強調。また、AIがアウトプットしたものが実際に使えるかどうかについては、依然として人間の判断力が求められると示します。
また、現在のインターネット広告はプラットフォーム側のアルゴリズムで品質の判断が行われるため、「人間から見て素晴らしい広告を作るのはもちろん大切だが、お客様に効果で還元するためにも、Googleやメタといったプラットフォーム側のアルゴリズムに合わせて柔軟に対応できるクリエイティビティが問われる」と話し、固定観念に縛られない表現のあり方が若手クリエイターの強みになると激励しました。
③クリエイティブ×AI領域の進化によるビジネスの変化
ビジネス面への影響については、「消費者行動の変容」が大きなポイントとして挙げられました。この点についても、阿部氏は「スマホとともにインターネットが大きく普及したことで、大多数の人々の生活スタイルが大きく変わった。これと同様に、生成AIが本格普及すれば生活スタイルが変わると予測される。顧客体験が様変わりするタイミングだ」と話します。
たとえば、ユーザーの意図に基づいて情報収集や予約などを自動で行う「パーソナルAIアシスタント」が一般化すれば、ユーザーがブラウザにアクセスしたり、スマホを操作したりする機会自体がなくなる可能性もあるとのこと。阿部氏はこうした未来も想定し、「これまでの顧客体験のあり方や、クリエイター自身の持つ素養を一から見直さなくてはならない」と警鐘を鳴らしました。一方で、顧客体験ビジネス全体を統合的にプロデュースする役割の重要性が高まることで、クリエイターとしてのチャンスも広がるとの見方を示しました。

洞ノ上氏は広告代理店の視点から、「(代理店に委託しなくとも)インハウスですべてのクリエイティブをまかなえるようになる未来」も想定し、厳しい局面に備えるようにと強調。「『広告を作る』という表面的な作業のみでなく、『テクノロジーで価値を還元する』という意識のもと、さらに強いアドテックカンパニーに生まれ変わっていくべきだ」と提言しました。
内野は、お二方のお話を時折うなずきながら拝聴するとともに、必要に応じて質問を投げかけるなど、進行をサポート。非デザイナー職であるからこその視座で、参加者の皆様にも分かりやすいセッションを実現するべく努めました。

モデレーター|GMOインターネットグループ 内野皓太
セッションにてモデレーターを務めたGMOインターネットグループ 内野皓太は、既存の枠組みに捉われない自由な発想で新しい事業やサービスを生み出すなど、高いパフォーマンスが期待できる優秀な人財に対して年収710万円(2年間)をお約束する「新卒年収710万プログラム」で入社したスペシャリストの1人です。
2023年に新卒入社後、GMOインターネットグループ全体のAI活用推進プロジェクトや「AI 熊谷正寿」用のデータセット作成など、AI領域全般を担当しています。

GMOインターネットグループのAI推進の取り組み
さて、そんな内野が在籍するGMOインターネットグループでは、
2024年2月新キャッチコピー「AIで未来を創るNo.1企業グループへ」を発表すると同時に、AIによる業務効率化目標や100億円規模のGPUサーバー取得も公表しました。
GMOインターネットグループは2015年から本格的なAI研究開発に着手しており、とりわけChatGPTのサービス開始以降は全社を挙げてさまざまなAI活用施策を推進しています。内野が現在注力している業務も、まさにこの流れのなかに位置付けられます。ここではセッションが実現した背景として、取り組みの一部をご紹介します。
AI(愛)しあおうぜ!ChatGPT業務活用コンテスト
GMOインターネットグループ全体でのAI活用推進の第一歩は、AI活用実例やアイデア、PoC開発や商材へのAI導入事例などをグループから集める「コンテスト」でした。賞金総額1,000万円という規模で行われたコンテストはグループ全体でのAI活用の起爆剤となり、パートナー(社員)の関心を高め、実践的な活用事例を共有する場を創出することができました。
そして、このコンテストをきっかけに、AI活用を推進するプロジェクトとして「AI(愛)しあおうぜ!」がスタートしました。内野は入社直後よりこのプロジェクトにおける実務の大部分を担っており、「生成AIに対する全パートナーの盛り上げや啓蒙活動が達成でき、手応えを感じている」と話します。
賞金総額1,000万円超!4つの部門で毎月開催!「AI(愛)しあおうぜ!ChatGPT業務活用コンテスト」開始!
全社で行うAI教育
GMOインターネットグループでは、AI活用促進のため上述した「AI(愛)しあおうぜ!」の一環として、最新情報をリアルタイムで共有するSlackチャンネルの開設や、定期的なAIセミナーなどを開催しています。とくにセミナーに関しては、必須参加/任意参加の両方を設けることで、全パートナーがそれぞれの興味・関心に応じてAIリテラシーを高められる環境を整えました。
さらにGMOインターネットグループ全体では、AI活用に必須の知識を問うオリジナルテスト「GMO AIパスポート」を実施し、AIリテラシーの底上げ・向上のため、在籍・入社するパートナー全員の合格必須を徹底してきました。
加えて、今後はどんな職種・業種の人財でもAI活用が必須になるという考えから、非エンジニア向けリスキリング施策「虎の穴」を開始。3ヶ月間の短期AI人財育成プログラムとして、基礎知識からプロンプトエンジニアリング、実践的業務活用までを学べる内容を提供しています。
なお、2025年4月からは対象範囲を拡大し、エンジニアやデザイナーにより有用な講義も充実させたうえ、オンデマンドで必要な分だけ受けられるように改善し提供する予定です。
GMO AI&ロボティクス商事株式会社
2024年6月には、「GMO AI&ロボティクス商事」(通称:GMO AIR)を設立しAI・ロボット事業に本格参入しました。内野はこの会社にも出向中で、AI関連領域全般を担当しています。この新会社では、AIとロボット技術を活用した製品・サービスを通じて、日本企業のDX推進や人手不足解消に貢献していきます。
AI 熊谷正寿『GMOイズムくん』
さらに直近(2024年12月)では、GMOインターネットグループ代表・熊谷の経営ノウハウや意思決定プロセスをAIに学習させた「AI 熊谷正寿『GMOイズムくん』」をグループ内向けにリリースしました。熊谷代表の思考や判断基準をAI化することで組織文化の維持・発展を図るとともに、パートナーの「相談役」として、日々の業務における意思決定の質と速度向上を目指しています。
セッション終了後にはAsk the Speaker(登壇者への質疑応答タイム)が設けられましたが、参加者から内野へは、やはりこの「AI 熊谷正寿『GMOイズムくん』」に関する質問が多く寄せられました。

今回のセッションを振り返って
セッション終了後、モデレーターを務めた内野さんに感想を聞きました!

内野
今回のセッションでは、自分の専門ではないデザインの領域について、プロフェッショナルのお話を近くで聞くことができ、非常に大きな学びを得ました。
特に印象に残ったのは、AIに対する向き合い方として「AI時代のデザイナーが価値を発揮していくためには、データやAIの力を借りて、既存の業務や知識の領域から抜け出していくことが重要」という旨のご提言でした。
さらには、ある意味でAIの台頭に危機感を募らせておられるからこその、「AIと上手に付き合い、ディレクションやオーケストレーション(指揮)を行う、あるいは自分の経験以上の成果を出せるようにならなければならない」というお言葉にも、大変気が引き締まりました。
AIによって自らの能力を拡張できる時代は夢があるようでいて、知識の守備範囲を広げなければならないというプレッシャーもあります。クリエイティブの最前線でバリューを発揮されている2社様から貴重なお話を伺えたことで、気が引き締まりました。
すでにGMOインターネットグループではAIに関する取り組みを多数行っていますが、今後も気を抜かずに、全パートナーの意識・スキル向上に向けて尽力していきます!

まとめ
Stable DiffusionやDALL-Eをはじめとする画像生成AIの台頭以降、予測モデルの作成など、クリエイティビティにおいてもAIが存在感を発揮するようになったことが緊張感を持って語られた本セッション。日進月歩で新たなテクノロジーが生み出される領域だけに参加者の熱意も高く、熱心に講演に聞き入る方が多かったのがとても印象的でした。
GMOインターネットグループは、これからもAI活用のトップランナーとして、「AIで未来を創るNo.1企業グループへ」というキャッチコピーのもと、クリエイティブ領域を含めたさまざまな分野でAI技術の可能性を追求していきます!
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