【後編】産休から復帰、コロナ禍の荒波を越えて描く「2040年の設計図」

GMOインターネットグループのデザイン組織を支えるメンバーへのインタビュー連載。【前編】“変える勇気”がキャリアを動かす。未経験から産休、そしてチーフへ—田伐直子の足跡では「デザイナーとしての原点」から「産休と復帰」「ディレクターへの転身」までを伺いました。
今回の【後編】では、2018年のチーフ就任から組織拡大、コロナ禍での「電子印鑑GMOサイン」ブランド刷新、さらに長期ビジョン「Next 2040」への参画やIR活動など、会社の未来を形づくる取り組みまで。田伐(たぎり)直子さんが語る“成果を出すデザインと、人に寄り添うデザインの両立”への思いをお届けします。

「誰もやらないなら私がやる」チーフ就任への決意

—努力が認められて、2018年にはチーフに就任されたそうですね。

田伐

当時、チーフを務めていた尊敬する先輩が、諸事情で現場を離れることになったんです。けれど、代わりを担える人が周りに見当たらなかった。「私がやるって言ったらどう思う?」と周囲に相談すると、賛同してくれる人が多く、そのまま引き受けることになりました。どうせ引き受けるなら、「より良いデザインチームにしていきたい」という気持ちで臨みましたね。

田伐 直子(たぎり なおこ)|GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 企画開発部 デザインセクション チーフ

大阪府出身。Webサービス事業会社のカスタマーサポートからキャリアをスタートし、2011年にGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社へ入社。2015年にディレクターへ転身、2018年にはチーフへ就任し、チームを16名規模に拡大。クラウドインフラ事業のリブランディングを推進した。2019年には「Designサークル」を設立し、hakaru.ai byGMOの立ち上げでグッドデザイン賞を受賞。二度の産休を経て、電子印鑑GMOサインのUI/UXやブランドデザイン全般を牽引し、2025年には長期ビジョン「Next 2040」策定チームに参画。成果を出す「勝つデザイン」と、使う人に寄り添う「やさしいデザイン」の両立を目指し、次世代リーダーの育成やグローバル対応UI/UXの強化にも取り組んでいる。

—当時の会社のデザイン環境はどうだったのでしょうか。

田伐

当時のデザインチームで担当していたのは一つの事業だけでした。他の事業部は、マーケティングや開発担当者が都度デザインを外注で対応していたため、統一されない構造となっていました。これでは「会社の顔」を作れない、と強く感じました。

だからこそ、事業部を横断してデザインを担えるほど強い組織にしたいと考え、6名体制だったところから、毎年2〜3人ずつ仲間を増やしていったんです。結果的に16名規模にまで拡大しました。「いいものを作るためにはリソースが必要だ」という、シンプルで強い思いに突き動かされていましたね。

—人数が増える中で、マネージャーとしての視座はどのように築かれていきましたか。

田伐

チーフになって1年ほど経った頃、会社がホラクラシー(上下の階層をなくし、役割ベースで自律的に運営する組織モデル)を導入しました。この体制はデザイナー職と相性がよく、「これは活かせる」と思ったんです。

ちょうどその頃、デザインチームも課題を抱えていました。それまでは、良い意味で個人事業主みたいに自立して動ける人が多く、それぞれの判断で回っていた。ところが人数が増えてくると、限界が見えてきたんです。「育成や共有の仕組みを整えないと、チームとしては成り立たない」と。

デザインチームを6名から16名へ。拡大と仕組みづくりに挑んだ日々

田伐

そこで「Designサークル」という形に再編して、経営直下に置きました。これにより、従来は間接的に届いていた情報が直接入ってくるようになりましたし、自ら取りにいきやすくもなりました。
さらに、ホラクラシーの仕組みではサークルを比較的自由に新設・削除できるため、Designサークル内のチーム編成もトライアンドエラーを繰り返しながら柔軟に体制づくりを進めることができました。

もちろん、仕組みを変えたからといって、すぐに結果が出るわけではありません。それでも、この仕組みにメリットを感じている仲間は確かにいて、手応えも感じます。最適なチームのあり方は、今も粘り強く取り組み続けているテーマですね。

コロナ禍到来、怒涛のコミットも「面白くて仕方なかった」

—そして、2回目の産休に入られたそうですね。

田伐

2人目のときは年齢的なこともあり、少し長めに7か月で復帰しました。1回目は「浦島太郎になりたくない」と5か月で戻ったんですが、結局わからないものはわからなかった(笑)。だから2回目は、むしろ落ち着いて産休に入れた気がします。

ただ、このときに起こった変化は、そんな個人的なレベルではなかったんです。新型コロナウィルスが流行し始めて。

—その時期だったんですね。

田伐

はい。病院でテレビを見ていたら「新種のウイルスが…」と報道されていて、前代未聞のパンデミックが始まりました。

外出自粛のなか、リモートワークが一気に広がり、「脱はんこ」も喫緊の課題になりました。そうした時勢を受けて、電子署名サービスである「電子印鑑GMOサイン」(旧称:GMO電子印鑑Agree)への需要が急に高まったんです。

社会の変化を追い風に、UXデザインの真価を発揮した時期

田伐

産休から復帰したときには、「電子印鑑GMOサイン」がグループ代表直轄の案件になっていました。まさに一刻を争う状況。全社的に「今が勝負」という空気が漂っていました。

—その時期はどのツールでも、どこがデファクトを取るか、競争になっていた記憶があります。

田伐

まさに。あの頃は睡眠時間が4時間くらいしか取れませんでした。でも不思議とつらい感覚はなくて、むしろ面白くて仕方なかったんです。

もともと当社の主力商材はクラウドやレンタルサーバーです。これらのサービスではお客様がコントロールパネルを操作する機会が少なく、UI/UXよりもサーバーの安定・高速運用に投資するという事業判断がありました。

一方、電子印鑑GMOサインのようなSaaS(クラウド型ソフトウェアサービス)では、「操作感」「わかりやすさ」「親しみやすさ」といったUXやブランドが重視され、デザインが必要とされるようになったのです。

良いデザイン、良い体験をお客様に届けたいと常々願っていた私にとって、これは絶好のチャンスでした。2年ほどの期間ではありましたが、この時期に学んだことは非常に多く、自分自身が飛躍的に成長できたと感じています。

2040年を設計する。Next 2040とIR発信の新しいかたち

—会社としても、ご自身としても成長を遂げた時期を経て、今はどのようなことに取り組まれていますか。

田伐

2025年の年初から、会社の長期ビジョン「Next 2040」の策定チームに参画していました。

「Next 2040」策定のきっかけは、「どんな会社を目指すべきか」という問い。GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社には「コトをITで変えていく。」というミッションがありますが、その一言だけでは具体的な未来像を描ききれないと。そこで、15年後にあたる「2040年」にどんな会社になっているべきかを考えるプロジェクトが立ち上がったんです。

特徴的なのは、経営層だけではなく、有志の社員もメンバーに加わっていること。私自身もその一員として議論に参加し、「信頼を設計し、世界をつなぐ」というビジョンに辿り着きました。信頼は目に見えないものですが、ITの力でそれを再現可能にし、だれもが安心して利用できる社会インフラをつくる。その挑戦の一端を担えたのは大きな経験でした。

“信頼を設計する”未来を描き、Next 2040に挑む

田伐

また同じ年に、IRの領域でも新しい取り組みを始めました。会社の情報を投資家に届けるため、noteの「IR noteマガジン」に参画したんです。これまでの発信に加えてnoteやSNSなども活用することで、もっと幅広い投資家に日々の取り組みを知っていただきたいと考えています。

長期ビジョンもIRも、どちらも会社の未来に貢献できる仕事です。私個人のモチベーションは、パートナー(従業員)の皆さんに自分の会社を誇りに思っていただける状態をつくること。そのためには、かっこよさやスマートな表現が欠かせないと考えています。その思いを軸に、日々さまざまな領域に首を突っ込ませてもらっています。

—どんどんパワフルになっている田伐さんですが、エネルギーの源泉は何なのでしょう。

田伐

私を突き動かすのは、デザイナーとして「いいものを作りたい」という使命感だけ。そして、チャンスが来たら迷わず掴みにいく。その繰り返しなんです。

人生の選択も基本的にはシンプルで、「やらない理由がないものはやる」。やればマイナスになることは避け、そうでなければ挑戦する。ただそれだけです。

—役割が広がる中で、一人のデザイナーとして向き合っている課題は。

田伐

成果を生むデザインと、ユーザーに寄り添うデザインをどう両立させるかですね。たとえばA/Bテストの結果だけを見れば、大きくて目立つボタンの方がクリック率は上がるものです。でも、単眼的にそれだけを突き詰めていくと、いわゆるダークパターンのような、人をだますようなデザインに行き着いてしまう危険があります。

一方で「人に優しい」だけを追いかけると、確かに美しく上品なデザインにはなるけれど、ビジネスに直結しないこともある。そのバランスを探求し続けることが、デザイナーの役割だと思っています。

ユーザーも人間ですから、気持ちのよい体験を求めているはず。「売上を出せるなら、ダサくてもいい」ではなく、「美しくて、信頼できて、成果も出せる」デザイン。それこそが自分の理想であり、目指すべき姿です。

手を挙げる人、面白がれる人とともに

—「ご縁がめぐりめぐって」GMOインターネットグループにジョインされた田伐さんですが、今、率直に「GMOインターネットグループにいて良かった」と感じるところはありますか。

田伐

いちデザイナーとしては、やはりグループの規模感は大きな魅力です。市場の波が来たときに「全力でやれ」と一気に動けるのは、大きな会社だからこそ。加えて、GMOインターネットグループのエンジニア・クリエイター向けカンファレンス「GMO Developers Day」や「Designship 2025」などの大きなイベントに登壇できるのも、グループの後ろ盾があることが大きいです。

さらに、GMOインターネットグループ全体でも、デザイナーの存在感が年々高まっているのは嬉しいですね。全社横断の「クリエイターシナジー会議」(※)を中心に、デザイナーが前に出る機会が増えてきていて、それに加われるのも光栄なことです。

※GMOインターネットグループ各社のデザイン責任者が集まり、組成された横断的な組織

田伐

また、ひとりの「親」の視点からも、GMOインターネットグループは本当にありがたい環境です。大企業ならではの福利厚生が整っていて、安心して産休を取れるし、マタハラとは無縁。その一方で、中身は「ベンチャー精神」が強い。だからこそパフォーマンスへの要求は高いですが、チャレンジを妨げられることもないんです。この「いいとこ取り」の環境が、GMOインターネットグループならではの面白さだと思います。

—そんな田伐さんが、これから加わる仲間に望むことはありますか。

田伐

今のスキルの完成度よりも、「自分がやります」と手を挙げられるかどうか。加えて、チームで取り組める人。そういう方にぜひ来ていただきたいです。

この会社に合っているのは、何事も面白がれる人だと思います。来るもの拒まず、手を挙げれば必ず応えてくれる組織ですから。その傾向はこれからますます強まっていくはずなので、チャレンジ精神旺盛な方なら、きっとそのポテンシャルを最大限に発揮できることでしょう。

私たちGMOグローバルサイン・ホールディングスのミッションは「コトをITで変えていく」。人々の生活をもっと新しく、便利にしていきたい。その思いを私自身も強く持っていますので、一緒に未来を実現していける仲間と出会いたいですね。

▽GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社|採用情報

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【前編】“変える勇気”がキャリアを動かす。未経験から産休、そしてチーフへ—田伐直子の足跡

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