2025年12月9日(火)夜、GMOインターネットグループ主催の「GMO Developers Day 2025 -Creators Night-」がGMOインターネットグループ第二本社 GMO Yours・フクラスにて開催されました。
「AI時代のデザイン・クリエイティブ」をテーマに、グループ各社からデザイナー・クリエイターが登壇し、最新の実践事例と知見を共有。
本レポートでは、イベント前半に実施した3つのセッションの様子をお届けします。
目次
AIで変わったデザイナーの業務 —100件の検証で得られた実務の指針
登壇者:大澤健太郎(GMOメディア)
最初に登壇したのは、デザイナーとして働きながら、2025年に社内で発足した技術推進チームでAI推進の取り組みを行っているGMOメディアの大澤さん。

このチームで「業務の余白を生み出す」「デザイナーの役割を広げる」「アウトプットの表現を増やす」の3点をミッションに掲げ、AIをはじめとするさまざまな技術の先行調査やツール選定を行いつつ、事業へ活かすための導入サポートなども行っています。
取り組みの具体的な事例として、「クリエイティブ生成」「UI」「コード生成」の3軸で100件以上の事例検証の実施が挙げられました。

大澤さんが特に注力したのが、Figmaで作成したデザインのコード生成です。Claude Codeなどのコーディングエージェントを全デザイナーに導入し、プロンプトと生成結果のまとめなどをポータルで参照できる体制も整えました。
「活動時間の半分以上をデザインシステムやドキュメントといったコンテクストの整備に費やしていた」と振り返る大澤さん。「このコンテクストの整備指針まで整えて発信していかないと、事業の中でなかなかAIが稼働しない」と実感を語ります。
丁寧な環境整備が実を結び、3ヶ月でコーディングをはじめとする実装業務においては、業務の半分以上でAIが活用されるなど変革が進みました。

タスクの見積もり時間に対する実績値の減少率にもAIが大きく貢献する一方、クリエイティブ生成やUI領域は「まだ整備の余地がある状況」だと所感を述べる大澤さん。
急速にAIの業務活用が進む中、課題として挙げられたのは2点。1つ目は「メンバー間のアウトプットの差」です。大澤さんはツールの性能差も挙げつつ、「事前情報をどれだけ丁寧に整えられるかというコンテクストや、何を表現したいのか・その生成結果に何が足りないのかといった洞察力・審美眼の言語化力」が作用していると分析します。
2つ目は「効率化で生まれた余白」の問題です。削減した時間でメンバーが何をしているのか追いづらく、生み出した時間を品質向上や新領域への挑戦などに充てられるよう、組織としての指針が必要になっていると語ります。
最後に、大澤さんはGMOメディアが目指す組織像について「デザインから付加価値を作る組織」だと示し、「今後はAIで素早く作り、専門性でクオリティを引き上げ、デザインそれ自体が事業の優位性になるというサイクルを回していきたい」と展望を述べました。

AIと育てるデザインシステム──実践で見えた価値と変化
登壇者:小林茜(GMOグローバルサイン・ホールディングス)
GMOグローバルサイン・ホールディングス小林さんは「デザインとコードの間の溝を埋めるエンジニア」として、デザインシステム・One:Dの開発・運用を担当しています。今回紹介されたのは、数百ページのリニューアル案件でAIを「ぶん回した」事例です。

Figmaのデザインを小分けにしてAIに渡せばうまくいくことは分かっていたものの、長いデザインを毎回小分けにしてプロンプトを打っていくと、手作業より遅くなってしまいます。
そんな時に「どうにかしたら丸ごとできんじゃね?」とひらめいた小林さん。Figma・One:Dのコンポーネントライブラリ・Claude Codeの組み合わせで、MCP(Model Context Protocol)を介してやり取りさせる仕組みを構築しました。

ポイントは、デザインとコードが完全一致していなくてもAIの類推に委ねたこと。「これは一番上にあるから見出しだろう、これは押せるからボタンだろう」といった推測をAIに任せています。
こうした連携を自動化することで、「デザインURLを貼り付けてエンターを押し、数分待つだけでコーディングが完了する」(小林さん)環境を実現したのです。
「デザインとコードの間に溝がある時、どちらから距離を寄せるか」。小林さんはこの命題に対し、Figmaのアップデート速度やデザインデータ修正にかかる工数を考慮し、まずはコードから寄せるアプローチを選びました。実際に、「2025年8月頃までに構築したこの仕組みは、その後のFigma MakeやClaude Codeの新機能、各種新モデルなどの登場で、すでにやや古い手法になってきている」といいます。
取り組みの成果は明確です。シンプルなページは3分、長いLPでも手直し含めて90分でコーディングが完了。2つのサイトリニューアルの300ページ超のコーディングを、2ヶ月ほどで終えることに成功しました。

また、AIが使い方を間違えるたびに修正とドキュメンテーションを行うというサイクルが高速で回ったことでデザインシステムが磨かれていきました。ウェブサイトが徹底的にコンポーネントベースの構成になったことで、デザイン・コード双方の一貫性も向上したといいます。
小林さんは「デザインシステムが、やっと『規律』から『道具』に代わり始めた」と、システムが自動的に磨かれていくという経験から得た実感を語ります。
そして「デザインという分野は、AI以前から正解や限界のない分野。さらにAI関連ツールの進歩の速度は速く、私が紹介した仕組みもすでに少し古くなってきています」と続けました。
最後に、「AIは賢いし速いしすごいけど、始めることだけはやってくれない。人間が始めるしかないんです。日頃から考えて、『できんじゃね?』と思ったらやることが効く場合が多いからこそ、始めることが大事」と示し、笑顔で講演を締めました。

デザインを信じていますか
登壇者:関口裕(GMOペパボ)
GMOペパボ関口さんのセッションは、生成AIの波の中で日々必要なことをやっていると自負しているのにモヤモヤしている、そんな人に向けた内容。持ち帰ってほしいのは「すでにやっている仕事・役割の再認識」だと示します。

2025年1月に入社し、それまでのフルリモートからフル出社に変わった関口さんは、オフィス出社によって「元気になった」といいます。そしてその変化は、五感で得られる情報量の増加が関係しているのではないかと分析しました。
一般向けの生成AIツールを「もっともらしさ生成器」と表現した関口さんは、生成AIを「偏りのあるアイデアを汎用的にした『普通』を、手っ取り早く得るには最適なツール」と評します。
一方で、量産化された「普通」が世界にあふれることで「エントロピーの均質化」が起こるかもしれないと警鐘を鳴らします。
これは、生成AIの利用の仕方によっては似たような「普通」が大量生産され、情報の画一性が高まることによって引き起こされる「エントロピーの低下」により、本来あったはずの「ふつう」が失われてしまうのではないかという懸念です。
こうした「情報の画一性問題」に対処すべく、関口さんは「文脈化が必要になる」と訴えます。この「文脈化」のひとつとして引き合いに出されたのが、「間テクスト性」の概念です。
「無数にある表現・情報から何を見るか、どう読むかが接続されることで、初めて意味付けがなされる」と、間テクストの重要性を訴える関口さん。

「こうした行為全体を“センスメイキング”と言ってもいいのではないか。価値を提供するためには、五感全てを使ってコンテクストを取得することが重要」と説きました。
GMOペパボでは「わかり手」が活躍しています。これはセンスメイキングを実践しながら、曖昧な「いい感じ」へプロジェクトを着地させ、専門性を基盤とした形式知のさらに先で価値を出すデザイナーのこと。

「自分の中で分かっているだけではダメで、周囲から認められて初めてわかり手になれる。社会や事業の変化は今、デザインの検証速度よりもずっと早く動いている。だからこそ、『誰がどのような考えで判断するか』への信任で現場は動いていく」のです。
最後に、関口さんは「トラストホスティング」という自身のコンセプトを紹介しました。これは「わかり手」が形式知の先で信任を集めてラストワンマイルを担い、顧客へ価値を提供するという実務の積み重ねが、社会からの信頼・企業価値につながっていくという考えです。
「仕事で信任を得ることはプリミティブなデザイナーの喜びでもある。個人の楽しさが社会に資する」と説く関口さん。
GMOペパボの理念「もっとおもしろくできる」を体現するメッセージで、セッションを締めくくりました。

▼GMOペパボ関口さんの登壇資料全編はこちらから
まとめ
AIをどう使うかだけでなく、どう活かしていくか。
今回のセッションでは、そんな問いに向き合いながら、日々試行錯誤を重ねている現場の声が印象的でした。
ツールや仕組みを整えるだけでなく、最終的な価値を生み出すのは、人の視点や言葉、そして思考の力であることが改めて示されました。
次回の 【イベントレポート・中編】GMO Developers Day 2025 -Creators Night-|AI時代を生き抜く力と、広がるクリエイターの役割 では、変化の大きい時代において、
デザイナーがどのようにキャリアを築き、力を磨いているのかをご紹介します。
続けてぜひご覧ください!
▼本イベントのアーカイブ映像はこちらから
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