【インタビュー前編】育休明けに直面したAI時代―GMOペパボプリンシパルデザイナー・佐藤咲が歩む「共創」の道

我々の暮らしや仕事の在り方を大きく変えた生成AI。デザインやエンジニアリングの現場でも、AIに作業を任せる場面が増えています。そして、押し寄せるAIの波は組織変革や業務効率化の取り組みにつながることも珍しくありません。

GMOペパボ株式会社でプリンシパルデザイナーを務める佐藤咲さんも、こうした大きな変化に遭遇したひとりです。2024年4月から25年4月にかけて取得した育休の前後で、所属部署や日々の業務が大きく変わるなか、AIを使ってさまざまなツールを作り業務効率化を図っています。

インタビュー前編では、育休復帰後に制作したツールの開発背景や、15年のキャリアで培ったスキルの活かし方などを伺いました。

佐藤咲(さとう・しょう)GMOペパボ株式会社 コーポレートコミュニケーション室コーポレートデザインチーム プリンシパルデザイナー

2011年、paperboy&co.に新卒1期生として入社。GMO参画後は「ロリポップ!レンタルサーバーのリブランディング」などに携わり、2017年から全社横断的な取り組みを行うデザイン部デザイン戦略チームに在籍。1年間の育休を経て、現在はプリンシパルデザイナーとしてコーポレートブランディングや事業部支援の取り組みを行う。

「時間のある限り働く」から「AIで悩む時間を圧縮する」へ

—まず、佐藤さんのご経歴と現在の業務について教えてください。

佐藤

2011年にpaperboy&co.(現GMOペパボ株式会社・以下、GMOペパボ)に新卒1期生として入社しました。入社時はデザイナーとしてホスティング事業に携わっていたのですが、この事業が福岡支社に移転する際に東京に残る選択をしたことで、新規事業や「ロリポップ!レンタルサーバー」のリブランディングに関わるようになりました。

その後は事業部を横断したデザイン組織として2017年に発足した、「デザイン戦略チーム」の設立メンバーとして在籍していました。

その後このチームが「デザイン部」へと発展したのですが、私が育休に入っている間に部長が転職されてしまって、この部署自体がなくなってしまったんです。育休から帰ってきたら上司も所属部署もなくなっていたという状況でした(笑)。

部長とは数年間一緒に仕事をさせていただきましたが、ともに働く中で教えていただいた知識は私の大切な財産になっています。退職された際に託された意志とともに、今後の私を支えてくれると思いますね。

現在はコーポレートコミュニケーション室に移り、GMOペパボのコーポレートブランディングや事業部支援の取り組みを行っています。

—育休中にGeminiやClaudeなどのAIが台頭した形になりましたが、AIに対する抵抗感はなかったのでしょうか。働き方や意識の変化などもあればお教えください。

佐藤

1人のクリエイターとして、自分のイラストの絵柄がAIに模倣されてしまうことへの不安や嫌悪感は理解できますし、周囲のクリエイターも同じような懸念を抱いていました。私自身もそうした使い方に対して「嫌だな」という気持ちはありましたが、 普段の業務を楽にするという部分に関しては、もうすべてウェルカムの状態で活用していましたね。

育休前後では、時間への意識が大きく変わりましたね。育休前は何か問題が発生しても、時間をかければ解決できることが多かったため、時間のある限り働いてしまっていたところがありました。しかし育休明けになると使える時間がどうしても限られてしまうので、いかに効率よく進めるかが重要になったんです。

アウトプットの質を下げるのではなく、育休前と同じクオリティのものを出したいという気持ちがあったので、当時はとにかく「どこで時間短縮できるか」を探していました。そこにちょうどAIが現れたという感じですね。

—AIを活用することで、とくに影響のあった業務やワークフローは何だったのでしょうか。

佐藤

リサーチの部分はかなり時間を短縮できましたね。たとえば「高級感のあるデザイン」を作りたいとなった時、これまでは「高級感」が一般的にどう表現されているかのリファレンスを集めて、さらにそこから色や余白、フォントなどの共通点を洗い出して思考を重ねていくというプロセスを踏んでいました。

以前はここにじっくり時間をかけていましたが、今はリファレンス収集や、集めた画像の共通点についてAIで言語化しようと試みています。たとえば、自分の中で具体的なイメージはあるものの言語化できない表現をAIに聞くと、「Y2Kっぽい」とか「多色ノイズグラデーション」のようなワードを引き出してくれます。

「こういうことを言いたかったんだ」という回答が出てくるので、特徴やポイントを自分の中で整理するとっかかりが早くなりました。

またGMOペパボではウェブデザイナーがグラフィック制作だけでなく、プロダクトのUIやWebサイトのコーディングにも携わるのですが、こうしたコーディング周りでも効率化を実現しました。

たとえばNextで作られているのかPHPで作られているのかによって変わるお作法の確認、開発環境の立ち上げ方を一から調べる作業、うまくいかなかった時のトラブルシューティングなどさまざまな場面でAIが非常に役立っています。「ここで困ったので解決してください」と伝えると対処してくれるので、悩む時間を大幅に短縮できましたね。

リサーチとコーディングの両面で「悩む時間」を圧縮できたことが、育休後の限られた時間のなかで大きな助けになりました。

「AIにできること」を見定め、人間がコントロールする

—時間短縮を図る中で、自分で使うための「最小ロゴチェックツール」を作られたそうですが、これはどのようなツールなのでしょうか。

佐藤

私が所属しているコーポレートデザインチームでは、GMOペパボのロゴを含む制作物の確認作業があるのですが、ロゴチェックツールはそのロゴの使い方が正しいか、最小サイズを下回っていないかといった確認を行うものです。

従来はこれを人間が手作業で「大丈夫です」「ちょっと小さいです」と判定していたのですが、現在は画像をチェックツールにかければロゴの大きさを自動で測定して、基準をクリアしているかどうかを判定できます。

人間だとルールに対する受け取り方に個人差が出てしまうことがありますが、AIはそこが比較的ブレにくいように思いますね。なので、ガイドラインで「何ピクセル以上にする」「この周囲には何も置かない」といった形で明確にルールが決まっている作業は、AIでも人間と同じようにできるだろうという当たりがついていたんです。

ルールに基づくチェックにおいては、そのルールに対する受け取り方に誤差が出にくい分、状況によってはAIの方が理解力は高いケースもあるように思います。

佐藤さんが作成した最小ロゴチェックツール

—その後、AIを使ってプロダクトのライティングを行う「ブランドトーン・テキストジェネレーター」を開発されましたが、この開発背景を教えてください。

佐藤

従来は、文章で書かれたブランドパーソナリティを人間が読んで解釈し、そこからテキストを考えていました。ですが人間の解釈を挟む以上、どうしても担当者によって受け取り方にブレが生じてしまいます。

そこでブランドのパーソナリティ自体をAIに理解させて、そのブランドになりきってテキストを出力してもらえれば、大人数でブランドを管理する状態でも一定の出力が出せるのではないかと考えたのが開発のきっかけです。

またデザイナーとして「作りたいものが作れる」という段階に到達した後に、「自分が作ったものは本当にいいんだろうか?」という疑問を持ったことも、開発背景の1つですね。

制作したデザインの良さをAIが理解できるのかを考えたときに、実際にAIにデザインレビューをさせて言語化してみようと思い立ったんです。聞き方を変えたりプロンプトをひねったりしながら何度も試しましたね。

佐藤さんが作成したブランドトーンテキストジェネレーター

―ブランドトーン・テキストジェネレーターは、「AIを使って言語化する」という新しいアプローチを実践するツールのように思いますが、開発に当たって工夫された点があれば教えてください。

佐藤

ブランドにはロゴやカラー、ライティングのトーンがあります。そのテキストのトーンは何で決まるかというと、ブランドのパーソナリティです。

人間も、性格や立場によって言葉遣いは変わりますよね。丁寧語を崩さない人もいれば、すぐにタメ口になる人もいる。そうしたパーソナリティが根幹にあって、テキスト表現につながるという考え方です。

そのため、AIに対して「ブランドを文章で説明するのではなく、パラメータという数値で表現する」という点を工夫しました。たとえば「面白い」と「真面目」という対極の概念を設定して、そのブランドがどちらにどの程度寄っているかを数値で表すんです。

文章だと受け取り方に幅が出てしまいますが、数値でグラフ上のどちらに寄っているかを示す方がブレにくいだろうと考えました。

こうした対極の概念は6項目の軸になっており、この軸上でそれぞれの温度感を「寄せる」ことで、ブランドパーソナリティを体現したテキストを生成するという仕組みです。

▼佐藤さんが作成したブランドトーン・テキストジェネレーターの裏側はこちらから
https://note.com/satosio/n/n0a6af6a84634

15年のキャリアスキルはAI時代にどう活きるのか?

—AIも使いながらデザインする機会がかなり増えたのではないかと思いますが、デザイナーとして15年のキャリアのなかで培ったスキルはどのように生かされていますか。

佐藤

制作途中でAIを使ったとしても、最終的なアウトプットが「デザインとしていいものかどうか」をジャッジするのは、やはりこれまでの経験に基づいています。

「これは良いデザインだ」といった正解を見つけられる感性はもちろんですが、「ここがおかしいのではないか」「何かが違うぞ」といった違和感に気づきやすいこと、そして何を変えたらさらに良くなるかがわかることが、15年の経験の強みではないかと思いますね。

たとえばデザイナーとしてコーディングに携わる場面において、言語レベルでは概ね正しいものの視覚に特性がある方が利用しにくいというものが出力された際、「利用しやすいUIを実現するコードを書かなければならない」という知識がなければ、「アクセシビリティを高めたい」という発想は出てきません。

ここは人間が指示を出さなければAIが対応してくれない領域なので、Webサイトのコーディングとして何がベストに近いのかという周辺知識は引き続き追っていく必要があります。

ブランドトーンジェネレーターにおいても、出力されたテキストを手直ししたり、パラメータを再調整して出し直したりといった工程は外せません。

またAIを活用して何かを作る際も、自分自身で最新情報を探し出して「これに則ってやってください」と教えていくような、アップデートの補助も欠かせないと思います。

その点、デザイナーの多くはAIを便利なツールとして使う段階に留まっているように感じます。抵抗感こそ薄いものの、今やっている作業を代わりにやってもらおうとか、面倒なことを全部やってもらおうといった形で、AIを「従えている」ような使い方ですね。

私は、AIを使う最大のメリットは「自分の考えを拡張してくれる」ところにあると思っています。自分だけでは気づかなかった視点を与えてくれるからこそ、一緒にものを作っている感覚があるんです。なので、私にとってAIは「共同創作者」なのです。

後編につづく

育休という大きなライフイベントの最中に訪れたAI時代の波。佐藤さんは15年のキャリアで培った感性を生かしながら、その変化に柔軟に対応しています。

後編ではAIとの「共創」や、何をもって自分の成果物というのかというマインドセットに加え、佐藤さんのキャリア観やプリンシパルデザイナーとしての展望を詳しく語っていただきました。

GMOインターネットグループでは、今後もこうしたクリエイターが価値を発揮し続けられる環境を実現しつつ、グループ全体で積極的にAI活用を推進する体制を強化していきます!


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