GMOインターネットグループが今年4月から開始する、年間を通してデザイン・クリエイティブの発信を強化する施策「Creator Synergy Project」の取り組みとして、本ブログでもデザイナー・クリエイターへのインタビュー連載をスタートしました!
【前編】「GMOイエラエらしさって何?」バラバラな組織を束ねる共通言語を求めてに続き、後編ではGMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社の大倉太一が取り組んだ、ブランドコアの策定と社内外への浸透施策にフォーカス。
「変化を仕掛ける異物=ウイルス」として挑戦を続けるその姿から、デザイン文化を育てるリアルと覚悟を紐解きます。
目次
「GMOイエラエらしさ」って何?競合分析で方向性を探る
—社内ヒアリングを通じて現状が見えてきたあと、次にどのようなステップに進まれたのでしょうか。

大倉
競合分析に取り組みました。目的は、自社の絶対的なブランド像を考えることに加えて、「他社と比べて自分たちはどこに位置づけられるのか」という相対的な立ち位置を明確にすることでした。競合がどのような価値観や言葉で自社を表現しているのかを把握しなければ、自分たちの目指す方向も定まりません。

大倉 太一|GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社 ブランドマネジメント室 室長
情報科学芸術大学院大学(IAMAS)でメディア表現を研究。卒業後は東京のデザイン事務所に入社し、Web・グラフィック・映像分野の制作に従事。アートディレクターとして6年間活動したのち、「OHAKO」へ転職。同社が「IERAE Security」との合併を経てGMOインターネットグループにジョイン。現在は、GMOイエラエにおけるブランド戦略の策定からクリエイティブディレクション、グループ横断イベントのビジュアル開発まで幅広く手がけ、組織内外に向けたブランド価値の浸透をリードしている。

大倉
サイバーセキュリティの会社は日本国内にも意外と多く、14社ほどピックアップできました。各社について、MVVや提供サービス、コーポレートサイトのトーンなどを徹底的に調査・整理。そのうえで、社内ヒアリングで得られた声と突き合わせながら、「自分たちはどこを目指すべきか」というブランドコアの構想に入っていきました。
それができたら、いよいよ絶対的な軸をつくるフェーズです。外からの視点ではなく、自分たちの内側から湧き出る価値観や思いを言語化していくプロセスに入りました。
当初は、一般的なMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定を考えていたのですが、Googleの事例などを参考にするなかで、「カルチャー」まで含めて再設計すべきではないかという話になって。最終的には、パーパス、ビジョン、バリュー、カルチャーの4要素を定めることにしました。
パーパスからカルチャーまで。定まった4つの軸
—ブランドコア(パーパス、ビジョン、バリュー、カルチャー)の構築にあたって、どのように議論を重ね、最終的な形へとまとめていったのでしょうか?

大倉
まずは、僕とブランドコンサルの2人でブランドコアのたたき台をつくり、それをもとに経営層との議論を重ねていきました。検討会議には役員クラスを中心に10数名が参加し、予想はしていたものの、意見はすぐにはまとまりませんでした。
何度も会議を開いて丁寧に説明を重ねましたが、議論はなかなか収束せず、最終的には牧田が方向性を示し、チームとしても腹落ちするかたちでまとまりました。
こうして定まった新しいブランドコアは、以下の通りです。


大倉
Purposeは、僕たちGMOイエラエの思いを端的に表現しています。議論のなかでは「サイバーセキュリティ」という言葉を入れる案も出ましたが、もともとセキュリティ以外の領域にいた人たちが距離を感じてしまう懸念があったため、誰が見ても共感できる言葉として、あえて使わないことにしました。
一方、Visionはかなりセキュリティ寄りの表現にしています。ここは会社として中長期的に目指す未来像を示す部分なので、ある程度の具体性を持たせることが必要だと考えました。
Valueについては、「ワークプレイス」「パーソン」「クオリティ」「プライス」の4つの要素に分けて図解的に整理しました。これは牧田が以前から大切にしてきた考え方で、社内でもすでに暗黙的に共有されていたものでしたが、今回あらためて正式に言語化し、全員が共通して理解できるようにしました。
最後のCultureは、イエラエ(IERAE)の5文字の頭文字を用いて構成しました。重視したのは、とにかく覚えやすいこと。どんなに良いブランドコアを定めても、日々の業務で思い出されなければ意味がない——そう考えて、社内の人たちが自然と馴染めるような形を目指したんです。
—それを展開していく方法として、どのような取り組みを行われたのでしょうか。

大倉
まずは、ブランドコア全体を1冊にまとめた「カルチャーデック」を制作し、社内のパートナーに展開しました。これは新しく入社してくださる方々にも配布するもので、「まずはこれを読めば、GMOイエラエの考え方がわかる」というツールとして機能しています。
表紙に込めたのは、「さまざまな才能が一つの方向に向かって進んでいく」イメージ。牧田がよく、「各分野で尖った人たちが集まって、強い会社をつくっていく」と話していたのですが、その理想像をビジュアルで表現したいと考えました。

大倉
もう一つ、ブランド浸透のための施策として気に入っているのが「カルチャーステッカー」です。GMOイエラエのカルチャー5つをそれぞれモチーフ化してデザインしました。
IT業界では、社名やロゴをあしらったステッカーを配る文化がありますが、ちょっとした遊び心を加えたデザインにすることで、気軽に配れて、話題になると考えました。いまでは「GMOイエラエらしさ」を象徴するアイテムのひとつになっています。

ブランドを軸に、挑戦と変化を育てていく
—ブランドコアについての、社内での手応えは?

大倉
苦労して策定したこともあり、社内では9割ほどが「これはいい」「納得できる」と前向きに受け止めてくれました。残る1割ほどは当初「仕方ないか」と感じていたかもしれませんが、今では自然と受け入れてもらえています。
とはいえ、「これで完成」といった感覚はまったくなく、むしろ「ここからが本番だな」という意識のほうが強かったですね。ブランドは一度決めたら終わりではなく、繰り返し伝え続けないと簡単に忘れられてしまう。だからこそ、言い続ける仕組みを整えようと考えました。
その一環として現在は、毎月開催している全社会の中で、「今月はこういう施策があった」「こんなふるまいが見られた」といった事例を、カルチャーの項目と結びつけて紹介する時間を設けています。それも僕一人ではなく、各事業部のトップが紹介役を担うことで、組織のさまざまな場所から自然に「言葉が響く」状態ができてきたと感じています。
こうした取り組みを続けるなかで、組織としての方向性の不明瞭さが次第に解消され、これまであった混乱がすっと収まっていく感覚がありました。「軸ができた」という安心感がもたらした効果は非常に大きかったと思います。
—社外へのブランディングについては、いかがでしたか?

大倉
ブランドコアを策定したことで、社外に向けた取り組みも一気に動き出せるようになりました。たとえばGMOイエラエとして主催した「GMO サイバーセキュリティカンファレンス IERAE DAYS 2023」や、GMOインターネットグループ全体としての「GMO Developers Day」など、認知拡大を目的としたイベントを開催する土台が整ったんです。
なかでも特に印象深いのが、最初に手がけた「IERAE DAYS 2023」です。ブースの設計、グッズやLPのデザインなどを一通り担当しました。良くも悪くも「GMOっぽくない」デザインだったので、反応が気になるところでもありましたが、社内では非常に好評で、「これぐらい自由にやっていいんだ」と感じられた出来事でした。

GMO Developers Day 2024


大倉
2024年も「IERAE DAYS 2024」を開催し、昼の部に加えて、夜の部として学生やエンジニア向けのネットワーキングイベント「IERAE NIGHT 2024」も実施しました。ここでGMOイエラエの文化を直接伝えることができたことが功を奏し、インターンとして5〜7名ほどの学生が参加してくれるようになりました。
今の時代、学生インターンの獲得は決して容易ではありませんが、「マッチする人たちが自然と集まってくれる」ようになったのは、ブランドコアという土台がしっかり機能している証拠だと感じています。
【開催レポート】「サイバーセキュリティカンファレンスIERAE DAYS2024」を開催しました!
—たしかに、「IERAE DAYS」のデザインには、従来のGMOらしさとは違う印象もあります。

大倉
そうなんです。僕は仕事は真面目にやりますが、もともとやんちゃな性質というか、変化を起こしたいタイプなんですよね。「これやったら怒られちゃうかな」と思いつつも、どうしても挑戦してみたくなる。ちょうどその頃、GMOインターネットグループとしても「クリエイティブでNo.1を目指す」という方針が掲げられたタイミングだったので、「それなら、変わる覚悟もセットで持ってほしい」と思いながら取り組んでいました。


大倉
もちろん、挑戦すればするほど反応の振れ幅も大きくなります。例えば、「GMOインターネットTOWER(世田谷ビジネススクエア)」の「GMOイエラエSOC 用賀」のデザインは熊谷代表からも「これはいい!」と高評価だった一方で、「IERAE DAYS 2024」は「GMOっぽさがない」と言われてしまいました。少し攻めすぎた部分があったのかもしれません。


大倉
でも、そうした挑戦は誰かがやらなければ始まらないと思っています。枠に収まってばかりでは、No.1を目指すだけのエネルギーは生まれない。
だから僕は、自らを異物のような存在として勝手に位置付けています。組織という有機体のなかに入り込み、あえて異物として作用することで、内側から変化を起こしていきたい。そんな気持ちで動いていますね。
No. 1を目指し、「変化の種」をまき続ける
—さまざまな取り組みを経て、社内にはどのような変化が生まれましたか?

大倉
ブランドコアを中心にした取り組みを続けるなかで、社内からの信頼が確実に高まってきたと感じています。以前は社内にデザイナーがいることすらあまり認知されていない状態でしたが、今では「相談できる」「一緒に考えてくれる」と思ってもらえるようになり、依頼も明らかに増えています。
そのぶん、正直なところ手が回りきらない部分もあります(笑)。たとえば現状のコーポレートサイトなどは、まだ過去のデザインのままで、新しいブランドイメージには切り替えられていません。これから少しずつ刷新していくフェーズに入っていく予定です。
—今後に向けて、GMOイエラエとしてはどのような組織を目指していきたいと考えていますか?

大倉
まずは、仲間を増やすことですね。現在、GMOイエラエのデザイン組織は6名体制ですが、今後は5年かけて20名規模の組織にしていきたいという思いがあります。
僕は最近、デザイン組織を「行政・立法・司法」に例えて考えています戦略を立てたりルールを作る“立法”、現場で実行していく“行政”、ブランドを監督・維持する“司法”。この3つがそれぞれ機能することで、安定した強い組織がつくれる、と。
今は僕がそれを全部担っているような状態ですが、本来はそれぞれに責任者がいた方が良い。特に僕は“行政タイプ”で、現場で手を動かす実行部隊なので、戦略やマネジメントを担ってくれる人が仲間に加わってくれると、チームとして大きな力が発揮できそうです。
—GMOインターネットグループに所属するデザイナーとしての立場では、どのような思いがありますか?

大倉
GMOインターネットグループには、グループとしてのブランド方針・ブランド戦略が存在し、これだけの規模の企業を作り上げてきた一助となっています。今やグループ104社、7,500名を超えるパートナー(社員)が所属する当社は、世の中に対して素晴らしいデザインとともに素晴らしいサービスを生み出し、価値を提供できていることは僕自身も十分に理解しています。
そのうえで、更にその先を見据えたときに、もっとデザイナーが表現の幅を広げられるような環境づくりにも貢献していきたいと考えているんです。
—なるほど。過去にGMOインターネットグループとしてのブランドのガイドラインをアップデートした事例はあるのでしょうか?

大倉
「GMO Developers Day」というイベントのロゴをきっかけに、グループロゴのガイドラインが実際に変更された事例があります。
もともとGMOインターネットグループのブランドガイドラインでは、「黒背景に白い文字・または青い文字のロゴ表記」は使用NGとされていました。しかし、本イベントの先進的で洗練された世界観を表現するにあたり、ネガティブ表示ロゴの表現について、ブランドマネジメントを担うGMOインターネットグループの担当者に提案し、協力してもらえることになりました。
この案を最終的にグループ代表の熊谷に担当者からプレゼンし、ブランドの方向性としての意義を共有したところ、結果的に承認され、GMOインターネットグループのブランドに関するガイドライン自体がアップデートされることになったんです。
この一件は、GMOインターネットグループにおいても、目的や文脈に応じてデザイン表現が進化していけるという前例になったと感じています。

—GMOインターネットグループという大きな組織の中で、デザインに携わる立場として、どのような役割や可能性を感じていますか?

大倉
GMOインターネットグループの一員として、僕には「この場所をもっとクリエイティブな土壌にしたい」という強い思いがあります。挑戦的なデザイナーが、より自分らしく力を発揮できるような空気をつくりたいし、結果として「GMOインターネットグループ=デザインに強い組織」というイメージを社内外に根付かせたいんです。
実際、「クリエイティブNo.1」というビジョンに共感して、「もっと自分も挑戦してみたい」と思ってくれている人も、きっといると思います。でも、その一歩を踏み出すのって簡単じゃないですよね。だからこそ僕は、常識にとらわれない表現やアプローチを仕掛けて、「こういうのもアリなんだ」と思ってもらえるきっかけをつくっていきたいんです。その積み重ねが、今いる仲間の背中を押し、まだ見ぬ仲間を惹きつける力になるんじゃないかな、と。
能力あるデザイナーが自然と集まり、「GMOインターネットグループで働くのって面白そう」と思ってもらえるような環境をつくる。その実現に向けて僕ができるのは、GMOインターネットグループにおける「デザインの新しい顔」をつくっていくことです。
いつか「GMOインターネットグループといえばデザインだよね」と言われる日まで、これからも「変化の種」をまき続けていきます。

▽インタビュー前編はこちらから
【インタビューVol.3 前編】「GMOイエラエらしさって何?」バラバラな組織を束ねる共通言語を求めて


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