【開催レポート・前編】第6回 京大ミートアップ|フィジカルAIとAI時代の知性

2026年6月25日、京都大学 学術情報メディアセンター 南館4Fにて、「第6回 京大ミートアップ supported by GMO」が開催されました。このイベントは、京都大学 首藤研究室とGMOインターネットグループが共催し、アカデミアとビジネスの垣根を越え、AI・ブロックチェーン・サイバーセキュリティなど先端テクノロジーの「実践知」を学ぶことを目的としています。 今回は、こちらのイベント開催レポート前編・後編に分けてお届けします。

イベント概要

第6回 京大ミートアップ supported by GMO
考え・人と共生し・走るAI:ヒューマノイド競技大会への挑戦

日時:2026年6月25日(木) 17:30-20:30
場所:京都大学 学術情報メディアセンター南館4F 首藤研究室(現地+オンライン配信)
参加費:無料(学生限定) 現地参加者のみ懇親会あり(飲食提供)
URL:https://kmu.connpass.com/event/395849/

Session1『強化学習で挑むヒューマノイドの高速走行 ― ヒューマノイド運動会への取り組み』

高橋 勇哉|GMOインターネットグループ株式会社 グループ研究開発本部

最初の発表は、GMOインターネットグループの高橋より「強化学習によるヒューマノイドの高速走行」と題した取り組みが紹介されました。高橋は大阪大学大学院情報科学研究科出身で、2021年の入社後はビッグデータ基盤の運用やデータ解析に携わり、現在はAIロボティクス領域でロボットの研究開発を担当しています。

GMOインターネットグループには陸上部があり、2026年のニューイヤー駅伝では大会新記録で優勝するなど高い実力を誇ります。この陸上部選手の走行データを、ヒューマノイドロボットの運動性能向上に活かせないかという発想から始まったのが、今回紹介された「陸上部×ロボット」の取り組みです。直近の目標として掲げられているのは、昨年北京で初開催され注目を集めた「世界ヒューマノイドロボット運動会」。人間と同じトラックを使用して実施されるもので、GMOでは100m・400m・1500mの3種目にエントリー予定です。

データ収集は、モーションキャプチャで選手の走行を記録し「リターゲティング」という変換処理でロボットの関節構造に合わせて動きを変換するという流れ。人間とロボットで異なる関節の自由度を逆運動学的に解き直すことで、選手ごとの走行の個性までしっかり再現されるといいます。

学習には強化学習(PPO)を採用し、報酬設計の細かなチューニングと、目標速度を段階的に上げていく「カリキュラム学習」によって高速走行を実現。モーションデータの特徴を取り込む手法(AMP)も組み合わせています。現状では直線で秒速5メートル以上の安定走行が確認されている一方、左右のブレや旋回性能には課題が残るとのこと。また、高速走行を続けるとモーターが発熱して安全機能が働いてしまうというハードウェア面の課題も紹介され、今後は制御アルゴリズムの改善や自律走行システムとの統合を進めていく予定です。

高橋の講演資料・映像は以下よりご覧いただけます。

Session2『拡張知能:AI時代における知性の再定義と基盤技術』

石丸 翔也 氏|大阪公立大学 研究推進機構 教授

2人目の登壇者は、大阪公立大学の石丸氏。日本とドイツを行き来しながら研究を続けてきたキャリアを持ち、修士時代に「IPA未踏事業」に採択された経験を経て、博士課程からドイツへ。博士号取得後もポスドク・大学教員として計7年間ドイツに滞在し、帰国後は大阪公立大学の教授として、大阪・関西万博の展示に関わる共同研究にも参画してきました。学生時代には、大阪で週の半分を学生として過ごし、半分は京都でアルバイトやインターンをしながらプログラミングを学んだという原体験があり、それが現在、大学近くで学生とともにソフトウェア開発を行う会社を設立した動機になっているそうです。

石丸氏が主宰する「拡張知能研究グループ」は、人の知性が頭の中に留まらず、AIなどの技術によって押し広げられていくというビジョンのもとに活動しています。講演は「AIによって人の知性はどのように拡張されるか」「人とAIの融合や共進化は、人の心にどのような影響を与えるか」という2つのテーマで構成されました。

代表的な研究として、アイトラッカーと顔の表面温度センサーで読書中の理解度・興味度を推定し、必要なタイミングで補助教材を提示する「HyperMind」を紹介。生成AIを組み合わせることで、テキストの内容と読者の状態に応じた補助教材を動的に生成する発展版も開発されています。視線から解答の確信度を推定し、復習の優先順位づけに使うシステムはリクルートの「スタディサプリ ラボ」に導入された実績もあるとのことです。

そのほか、メガネ型デバイスで日々の読書量を可視化する「WordoMeter」、複数のセンサーからストレスを推定し「体温」のような直感的な指標で提示する「心のエアコン」的プロジェクト、会議中の顔の映像から発話・うなずき・関与度(エンゲージメント)を推定し、雰囲気に応じてBGMを変えるインタラクションシステムなど、「学ぶ力・考える力・伝える力」を拡張する取り組みが次々と紹介されました。

講演の終盤では、「人間が道具を発明したという考えは半分正解で、より正確には道具が人間を発明したのである」という言葉を引きながら、AIを次の「道具」として捉えるか、自分自身を拡張・増強する存在として捉えるかで、できることの幅が変わってくると指摘。一方で、AIに仕事を渡すことで人が自分の能力を保持する機会が減り、経済格差が能力の格差につながるリスクにも触れ、「賢さ」の定義自体が人とAIの関係性の中で変わりつつあるという問いを投げかけました。

石丸氏の映像は以下より全編ご覧いただけます。

前編はここまでです。お読みいただきありがとうございました! 後編では、京都大学 谷口氏のセッションを中心にご紹介します。

後編はこちらから

ブログの著者欄

加藤 由香子

GMOインターネットグループ株式会社

グループ広報部 技術広報チーム マネージャー
エンジニア・デザイナーの魅力を届ける仕事をしています。

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