2026年6月8日(月)から12日(金)にかけて群馬県高崎市のGメッセ群馬およびオンラインで開催された人工知能学会全国大会。40回目の開催となる本大会に、GMOインターネットグループと、AIインフラサービス「GMO GPUクラウド」を提供するGMOインターネット株式会社がそれぞれプレゼンティングスポンサーとして協賛しました。レポート後編では6月10日(水)から11日(木)にかけて行われた講演の模様を、GMOインターネットグループ特設ブースの様子とあわせてご紹介します。
前編はこちらから
GMOインターネットグループ特設ブース
会場の一角には、GMOインターネットグループの特設ブースが設けられました。今回、グループ会社となるGMOインターネット株式会社も「GMO GPUクラウド」を紹介するべく本イベントに協賛しており、同ブース内での共同出展となりました。
ブース内で来場者の目をひときわ引いていたのが、GMO AI&ロボティクス商事株式会社が提供する人型ロボット(ヒューマノイド)です。講演で行われたデモ走行の反響もあり、写真や動画を撮る姿もあちこちで見られました。
ノベルティの入ったバッグをロボットが手渡しすると、受け取った来場者が思わず笑顔を見せる場面も。名刺交換をした方には、豪華景品が当たるガチャガチャも用意されるなど、ブースは終始にぎわいを見せていました。
展示も趣向を凝らしたものでした。「人型ロボット(ヒューマノイド)が家庭で使われ始めるのはいつ頃だと思う?」「論文の執筆にAIをどれくらい使った?」といった、イベント参加者へのアンケートも実施。参加者は、思い思いの選択肢にシールを貼っていく姿が見られ、中には前日の回答結果を見に来てくださる方もいらっしゃいました。
またブース内に展示したパネルでは、グループ各社で行われている研究成果の展示なども行われ、パートナー(社員)の説明に聞き入ったり、積極的に質問を投げかけたりする参加者も数多くいました。
とくにブースの半分を占める「GMO GPUクラウド」のサービス紹介や、さまざまな業種での導入事例には多くの研究者や企業担当者の方が足を止め、AI先端開発事例の深堀りやNVIDIA推奨構成からなるサービススペックへの質問も数多くいただきました。
ブースは連日の大盛況となり、人工知能研究に関わるさまざまな立場の方に「GMO GPUクラウド」を認知いただいたことは大きな収穫でした。多くの学生や研究者や企業との新たなつながりを、今後のサービスに活かしてまいります!
生成AIの開発の最前線を支える「GMO GPUクラウド」
登壇者:大川将史(GMOインターネット株式会社)
3日目の特別講演に先立つスポンサー講演として、「GMO GPUクラウド」の開発を統括する大川によるサービス紹介が行われました。
大川はまず、GMOインターネットがプレゼンティングスポンサーとして協賛した狙いを紹介。AI開発基盤の重要性を多くの方に知ってもらいたいこと、AI開発に携わる方々や学生・エンジニアと交流して学び合っていきたいことの2点を挙げました。
今後も計算資源の規模が拡大していくことが予想されるなか、GMOインターネットでは日本の計算資源力を引き上げるべく、2024年から国内クラウド事業者としてAIインフラの提供を開始しています。
「GMO GPUクラウド」にはNVIDIA社のH200やB300などが搭載されており、大規模なマルチノード学習に適した構成を整えています。さらにNVIDIA社が推奨するネットワーキングプラットフォームのSpectrum-Xや高性能ストレージにもこだわっているのも大きな特長です。
経済産業省によるクラウドプログラム認定を受けて100億円規模の設備投資を行い、「GMO GPUクラウド」の名でサービスを展開してきたGMOインターネットですが、大川は「単にGPUを提供するだけではありません」と、開発責任者の立場から強調します。
「GMO GPUクラウド」では、24時間365日の高可用性や故障時の即時交換といったエンタープライズレベルのサポートを志向し、用途に応じてマネージド型のHPCクラスタやベアメタル型などを選択可能です。
こうした取り組みは外部評価にも表れており、TOP500やGreen500のランキングで国内最高水準とされるほか、SemiAnalysis社によるGPUクラウドのベンチマーク「ClusterMAX」では、国内最高位のシルバー認定を取得しています。
最後に、大川はGMOインターネットグループのブースやこの後に控えるランチョンセッションへの来訪を呼びかけ、短くも密度の高い講演を締めくくりました。
チューリングが目指す完全自動運転の世界と、それを支える計算基盤「GMO GPUクラウド」の強みとは?
登壇者:山口祐CTO(チューリング株式会社)、大川将史(GMOインターネット株式会社)
3日目の午後には、GMOインターネットとチューリング株式会社の共催でランチョンセミナーが開かれました。Gメッセ高崎での開催ということもあり、参加者は高崎の名物「だるま弁当」を楽しみながら耳を傾けました。
スポンサー講演で「GMO GPUクラウド」を紹介した大川と、「GMO GPUクラウド」を使って完全自動運転技術の開発を進めるチューリングの山口CTOによる講演は、「We overtake Tesla」のスローガンを掲げるチューリングが取り組むE2E自動運転の紹介から始まりました。これは車載カメラの入力画像から車を直接制御するというもので、歩行者や信号といった物体検知をタスクとして挟まない非常にシンプルな構成が特徴です。
学習データのない場所でも安定走行ができるようになりつつある一方、現状の課題として山口CTOが例に挙げたのは、道路工事で左折レーンが塞がれている状況で、誘導員が赤信号でも「行け」と促すシーンです。
人間ならば誘導員の意図を自然に汲み取れますが、こうした誘導員のジェスチャーなども含めた判断を自動運転システムに落とし込むのは非常に難しいため、人間と同じように思考して判断する「完全自動運転」を実現するための大規模な基盤モデルが必要になるといいます。
車載GPUのSoCは過酷な温度や振動・電磁波などにさらされるため、GPU性能を落としてでもこうした環境に耐えられるものでなくてはなりません。そして通信に頼ってGPU性能を補いたくとも、時速100キロメートルでは1秒間に約28メートル進むためレイテンシが致命的になり、トンネルや高架下では電波も途切れます。
そうしたなかで車載GPUの推論をより向上させるためには、データと計算リソースのさらなる拡大が不可欠です。実際に、現在チューリング社の計算リソースは約1エクサフロップス(1秒間に10¹⁸ 回)の計算資源を使っていることが示されました。
こうした状況を、山口CTOは「もう通信では太刀打ちできなくて、あくまでローカルのエッジ推論に頼りつつ、めちゃくちゃ早く推論しなきゃいけない。LLMのような大規模モデルとは違うアプローチが必要になってくる」と総括しています。
こうしたアプローチの実現を支えているのが「GMO GPUクラウド」です。チューリングはNVIDIA H200とB300の両方を活用しており、山口CTOは大規模モデルの学習や大きなバッチサイズでの高速な学習が可能になった点を大きな導入メリットとして挙げました。
加えて、「GMO GPUクラウド」で利用可能なBlackwellは車載計算機のThorと同じアーキテクチャであるため、FP8やFP4といった低精度演算がそのまま使えるのも、自動運転技術の研究開発におけるメリットです。量子化の工程を経ずに低精度で学習したものを低精度で推論できるのも大きな利点だと紹介いただきました。
ここでマイクを受け取った大川は、「GMO GPUクラウド」の保守の工夫を紹介しました。GPUは高負荷での連続稼働により発熱や電力ストレスが蓄積し、どうしても故障が避けられない ものですが、壊れてから交換するのではなく、お客様のノードから収集したメトリクスを監視しているのが「GMO GPUクラウド」の大きな特長であり、故障の兆候を捉えて事前に交換するプロアクティブな保守に取り組んでいると示します。
「HPC型の設計思想で、かついわゆるエンタープライズを意識した使いやすいクラウドサービスを提供したい」という構想を語る大川。その実践として、「お客様が契約しているリソースに異常が起きた際には、夜中や早朝であっても即時の交換を行い、一定のリソースが常に保たれている状況を常時維持できます」と、お客様が故障を意識することなくAI開発に専念できる体制を作っていると語りました。
さらに「GMO GPUクラウド」では、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)が構築した国内最大級のAI(人工知能)計算基盤「ABCI(AI Bridging Cloud Infrastructure)」 Iを運用するAIST Solutionsの支援も受けており、ABCIの知見とGMOインターネットが培ってきたインフラサービスのDNAを一体化させた形で提供していることをアピールします。
山口CTOからも、「調子の悪いサーバーで処理が落ちても、すぐに綺麗なものが返ってきて投げ直せるので非常に助かっている」と、国際基準で見ても高いサービスレベルだと評価いただきました。
対談の最後に山口CTOは、日本の基幹産業である自動車産業を、日本のAIと計算基盤でリードしていきたいという展望を語りました。大川も、インフラ面からチューリングを支え、その実現に貢献したいと応じます。学生の参加者が多かったことから両社の採用・インターン情報の案内も行われ、和やかな雰囲気のうちにセッションは幕を閉じました。
遷移統計グラフを用いたモーション遷移の効率的な学習と運用
登壇者:真次彰平(GMOインターネットグループ株式会社 / 博士(工学) )
4日目の一般セッション「ロボットと実世界:ロボット学習と制御」では、真次が人型ロボット(ヒューマノイド)のモーション遷移に関する研究を発表しました。前編で紹介した常盤・高橋の研究と連なるロボティクスのテーマとあって、熱心に聞き入る参加者の姿が印象的でした。
真次が扱うのは、人間の参照モーションを追従するポリシーを強化学習で獲得する、モーション模倣学習と呼ばれる分野です。開発運用の現場においては、動かす過程で生じた失敗を解析する際などに、モーションの再生中に別の姿勢やモーションへ強制的に切り替えたいという「モーション遷移」の需要が生じます。
複数のモーションの取り扱う模倣学習は、DeepMimicといった近年の手法の発展により高精度な遷移がある程度現実的なものになりつつあります。その一方で、真次は「多くの手法が『十分に高精度な模倣を達成すれば、自然と安全性も向上する』という価値観で提案されており、今手元にある学習済みポリシーに対して、危険な遷移を入力した際の評価・対策についての議論が十分ではない」と課題を指摘しました。
たとえば、あるモーションの途中のフレームからいきなり再生しようとすると、本来前提としていた姿勢の準備ができていないため、転倒のリスクが上がる上、そもそもその入力がどの程度危険が知ることができません。そこで真次は「モーションの各フレームをノード、遷移・遷移成功率をエッジ・エッジ重みとしたグラフを構築し、安全な遷移を最短経路問題に帰着させる」という手法です。
これは姿勢と姿勢の間の「遷移」をグラフとして表現し、それぞれの遷移がどれくらいの確率で成功するかを学習によって明らかにしていくというもの。
検証ではUnitree G1(29自由度)のモデルを用い、NVIDIA Isaac LabおよびMuJoCo上で2種類のダンスモーションによる学習・評価を行いました。
検証の結果、従来は難しかった遷移も可能になり、平均的な遷移の成功率が12ポイント上昇したといいます。今後の課題としては、モーション数のスケーリングへの対策や、最先端のモーション模倣学習手法との接続によるさらなる精度向上を挙げました。
まとめ
後編では、GMO GPUクラウドが支える計算基盤から、人型ロボット(ヒューマノイド)のモーション遷移、そしてVLMの公平性まで、AI開発を足元から支えるインフラから応用に至る幅広いテーマが示されました。
なかでも大規模なAI開発に不可欠な計算資源をめぐっては、チューリングとの対談を通じて、GMO GPUクラウドが完全自動運転という最先端の挑戦を実際に下支えしている様子が浮き彫りになりました。
高性能なGPUやネットワーキングだけでなく、故障を予兆段階で捉えるプロアクティブな保守をはじめとする「開発を止めないための工夫」が、AIに挑む現場から高く評価されています。
GMOインターネットグループ、そしてGMO GPUクラウドを提供するGMOインターネット株式会社では、これからも研究開発と計算基盤の両面から、AIが社会に根づく未来の実現に向けて取り組んでまいります。