【イベントレポート・後編】インハウス動画サミット2026|インハウスにおける「指標」と「AIの可能性」

前編に続く本記事では、「インハウス動画サミット2026」後半セッションの模様をレポート。
動画内製化を推進するGMOインターネットグループ2社の実践事例をもとに、ワークフロー設計やSNS活用、AIとの向き合い方など、リアルな現場知見満載のセッションレポートをお届けいたします!

はじめに

100名以上が社内外から来場し、インハウス動画への関心の高さがうかがえた「インハウス動画サミット2026」。「事業成長を加速させる『動画内製化』のリアル」では、動画内製化に取り組む企業担当者が登壇しました。

GMOインターネットグループからは、GMOペパボ株式会社 コーポレートコミュニケーション室 コーポレートデザインチームの住友順、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 デザインセクション クリエイティブデザインGの江本仁の2名が登壇。AIの台頭で動画制作の環境も大きく変わりつつある中、これからさらにAIの活用が進んでいく時代を、どのような意識や工夫で乗り切るのかを議論しました。

イベント発起人である、GMOインターネットグループエキスパート(映像領域)の加藤が執筆したイベントレポートはこちら

https://developers.gmo.jp/technology/81641

セッション①:インハウス動画制作の立ち上げ方と最適解

  • 所属:GMOペパボ株式会社 コーポレートコミュニケーション室 コーポレートデザインチーム
  • 氏名:住友 順

動画の内製化に取り組む企業4社が登壇したセッション「インハウス動画制作の立ち上げ方と最適解①」では、GMOペパボ株式会社の住友が登壇。同社が掲げる「表現者のためのインフラを提供する」というビジョンのもと、インハウス動画制作の取り組みと実践知が共有されました。

レンタルサーバー「ロリポップ!」をはじめ、「インターネットの力で障壁を取り除き、人類のアウトプットを増やす」サービスを展開する同社において、住友はデザイナーとして動画制作に取り組んでいます。本セッションでは、自身のワークフローやAIとの向き合い方について語られました。

「全社にバリューを出す」ことがキャリアの転機に

セッション冒頭、住友は「口下手なので動画を作ってきました」と切り出し、自身の取り組みを紹介する動画を上映。その完成度の高さに、登壇者からも驚きの声が上がりました。

もともとECカートサービスのディレクターとして入社した住友は、当初は映像制作の経験がなかったものの、チュートリアル動画で成果を創出。その実績が評価され、「デザインチームに加わり、全社に価値を提供する役割」を担うことになったといいます。

ワークフロー整備が価値最大化の鍵

住友は、インハウス制作の最大の強みを「サービスを熟知した自分たちが、直接ステークホルダーにアウトプットできる点」にあると説明します。この価値を最大化するために、同社では徹底したワークフロー整備を実施しています。

  • Why(何のためにやるのか)
  • Who(誰のためにやるのか)
  • What(何をやるのか)
  • Where(どこでやるのか)
  • How(どう実現するのか)

具体的には、Slackを依頼窓口とし、テンプレート入力だけで制作依頼が完了する仕組みを構築。また、制作前のオリエンテーションでは以下の4W1Hを用いて方針を明確化します。

これにより関係者間の認識齟齬を最小限に抑えてるだけでなく、さらにNotionによる進行管理や、制作途中でのこまめな共有を徹底することで、手戻り防止やスピード向上、信頼関係の構築を実現しています。

住友は動画を「情報と感情のバランスを設計できるコミュニケーション手段」と定義します。

そのうえで、「目的達成のためには、動画をあえて作らない選択も重要」と語り、手段に縛られない姿勢の重要性を示しました。

立ちはだかる「定量化」の壁

セッションでは登壇者全員に共通するテーマとして、「成果をどう数字で測るか」という定量評価の難しさについての議論も交わされました。

初年度から金額目標を設定し、試行錯誤しながら計測方法を磨いてきた事例もあるなか、住友は「やった成果を定量化するのは永遠の課題なのかもしれない」と率直な感想を述べます。

背景にあるのは「置き換えの難しさ」です。
事業からの利益を考える際に、制作期間やコストといった定量的な数字は社内外の事例を参考にしたい一方で「今自分たちが提供しているものや、現在置かれている状況と過去の事例とを比較した際の違いが大きい」ため、同じ物差しを当てて考えることが難しいと示しました。

AIは「無理やり使っていたら楽しくなってきた」

AIを活用するために、必ず1日1回はAIを使うようにしているという住友。

「無理やり使っていたら楽しくなってきました」と所感を述べつつ、「映像のことを知らない人にどうやって企画を説明するか相談したり、映像制作の現場でもアプリのスクリプトやコードを書いてくれたりします。あらゆるプロセスで使っている感じですね」と、AIの汎用性を実感していることを語ります。

今後の展望として、住友は「利益にいくら貢献できたか?といったインパクトを、組織として出していくこと」「AIを活用していくこと」の2点を挙げました。

とくにAIについては「世の中のコンテンツ数が無限になる中で、作ることの価値を考えると寂しくなってしまいます。それでも、そういう時代を楽しみながらAIを使っていきたい」とクリエイターとしての心構えを示しました。

セッション②:インハウス化の裏側・YouTubeなどのSNS活用事例・AIとの付き合い方

  • 所属:GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 デザインセクション クリエイティブデザインG
  • 氏名:江本 仁

動画制作体制やSNS活用事例、AI活用の実践などについて、約1時間にわたる議論が繰り広げられたパネルディスカッション「インハウス動画制作の立ち上げ方と最適解②」では、電子印鑑「GMOサイン」をはじめとしたクラウドインフラ事業を展開しているGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社所属の江本が登壇しました。

2002年から映像制作に従事してきたベテランが、AIを活用したインハウス動画制作の手法を伝授しました。

ワークフロー整備で月20本の動画を作成

セッションの冒頭、もともとはGMOグローバルサイン・ホールディングスでも外注で動画作成をしていたと振り返る江本。「スピード感やコスト、品質に課題があった」ために内製化への舵を切ったと背景を語りました。

ワークフローとしては、最初は企画や営業・マーケティングなどの部署から「こういうものを作りたい」という提案が入り、江本自身が構成を行います。

構成後はデザイナーに絵コンテを渡し、アウトプットされたデザインに対して江本がBGM選定などの編集を行うというのが全体の流れです。

現状では1人体制ながら月20本以上の動画を制作するなど引っ張りだこな江本ですが、YouTube運用では業界ワーストの状態からわずか3年でナンバーワンに到達したり、チュートリアル動画を中心に据えた戦略では問い合わせが30倍に増加するなど目覚ましい成果を上げています。

「映える」動画がニーズにコミットするとは限らない

そんな江本が、こうした普段の業務における課題として挙げたのは「属人化」です。

江本はこの属人化について、「これからは5Gの時代だ!と大声で叫んだら、やってみたら?みたいな感じで立ち上がりました。なので、基本的には私1人で粛々とやっています」と、1人チームの立ち上げ経緯を説明。そしてこの属人化が、新しい価値がなかなか出てこないという「価値創出の停滞」を招いていると指摘しました。

しかし、多彩な表現を盛りだくさんにした「映える」動画が新たな価値創出につながるわけではないというのも江本の持論です。

「アニメーションを盛り込んだ『映える』動画を作った際に、視聴維持率が15%程度しか得られなかった」という自身の経験を語り、視聴維持率と動画の見栄えが相関するわけではないことを示します。

加えて、全体の再生時間は1分程度ながら視聴維持率90%超を記録している短尺動画を例に出し、「短い動画であっても、視聴者のニーズを満たしていれば、動画制作が初めてという方が作った動画でも視聴維持率は取れる」と力説。

制作技術の巧拙ではなく、いかに視聴者のニーズを理解して動画に落とし込むかが重要だと説明しました。

営業面にも貢献するチュートリアル動画

パネルディスカッションは、SNS活用やKPIの設定といったテーマへと移ります。

江本はCV(コンバージョン)をKPIに設定しており、YouTubeの説明欄にどこからもリンクされていないページへのURLを貼り、そこからの流入数をカウントすることでYouTubeの効果測定を行っているとのこと。

こうした運用の中で、toB領域のプロダクトやサービスのチュートリアル動画はサポートへの問い合わせを削減するだけではなく、売上の貢献にもつながっていると示します。

この背景にあるのは、「検討段階の顧客は『納得できる判断材料』を求めており、チュートリアルを通じてどのように課題を解決するか納得させることができれば、営業への問い合わせというアクションにつながる」というロジックです。

チュートリアル動画は今現在困っている人だけではなく、購入プロセスにおける検討段階のリードも含まれるため、問い合わせ削減・売上増加という2つのメリットがある取り組みなのです。

チュートリアル動画の有用性を示す江本さんですが、「それだけで問い合わせが増える、というわけではないですね」と注意を促します。

「たとえばナーチャリングの動画や認知拡大の動画も作り、それら動画とチュートリアルが一本の線になったときに弾けるのです」と、あくまでも既存の施策における「プラスアルファの要素」として活用できるよう考えながらコンテンツを制作していると強調しました。

3時間で開発した独自アプリで作業効率強化

後半のハイライトとなったのが、AI活用に関するディスカッションです。

江本のAI活用は「普段はGeminiを活用しつつ、自ら開発したオリジナルのAIアプリを運用する」という形ですが、デザイン組織に所属する江本が独自アプリを開発したことに会場からは驚きの声があがりました。

独自AIについて、「映像制作をしたことがない新人が、絵コンテを切れるようになるまで3カ月かかったんです。これではまずいと感じたので、絵コンテを切るまでをAIで自動的にできるよう開発しました」と開発経緯を語ります。
KPIと目的を入力するだけでシナリオの骨子を自動生成する「シナリオ生成君」と、シナリオとカット数を入力すると絵コンテが出来上がる「絵コンテ生成君」の2つのアプリで業務効率化を実現していると紹介されました。

とくに「絵コンテ生成君」については、修正したい絵コンテの下に書かれたスクリプトを変更することで直し作業を行えるほか、ボタン1つでスクリプトとプロンプトをパワーポイントに書き出して、デザイナー向けの要件定義まで実行するという機能も備えているとのこと。

「このアプリ自体もAIを使って3時間で開発しました」と語る江本ですが、今後はナレーションや編集工程も自動化したいと意欲を見せます。こうした効率化を突き詰める理由については「上司もいるので大きな声では言いづらいんですが、サボりたいんですよね」と笑い、会場の参加者からも笑顔が見られました。

AIをパートナーとして活用することが「当たり前」に

セッション終盤は、インハウス動画に今後どのような人材が求められるかというテーマで締めくくられました。

江本は「AI活用は『当たり前』という前提が非常に大きい」と断言します。少人数でありながら多くの動画をさばき、より良い顧客体験を提供するためには、AIの知識が欠かせないのです。

その例として挙げられたのは、江本が2025年に作成したAIチャットボット。5年前から課題感を感じていた「動画の中身で検索をかける」ことがAI技術で可能になり、社内サービスとして導入したことで、顧客に対してピンポイントな情報を提供できるようになったと実感を述べます。

「適材適所で情報提供できるというのがAI技術のいいところ。今後はどんどんアンテナを張って知識を蓄え、それを試していくという姿勢が必要になってきます」と、AIの活用を推奨しました。

今後の展望として、「AIをパートナーとして使うことで、一人で千人分の『一騎当千』の力を最大限発揮していけたら」「動画を通じた良質な顧客体験を提供し続けたい」と力強く語りました。

まとめ

住友が実践する4W1Hの羅針盤や、江本が実践する「AIをパートナーに、一人で千人分の仕事をこなす」というアプローチは、業務効率化に悩むクリエイターやリソースに制約のあるインハウス動画チームにとって大きなヒントとなったのではないでしょうか。

AIツールの自社開発やチャットボットへの動画検索機能の実装など、単なる効率化にとどまらない「顧客体験の向上」まで視野に入れた取り組みは、動画内製化を推進してきた知見の結晶と言えるでしょう。

GMOインターネットグループでは、これからもAIを活用した動画内製化をはじめとしたクリエイティブの価値を最大化するための取り組みを、グループ全体で進めてまいります!

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技術広報チーム

GMOインターネットグループ株式会社

イベント活動やSNSを通じ、開発者向けにGMOインターネットグループの製品・サービス情報を発信中

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