【エキスパート座談会 #3】AIエージェント、何を作ってどう活用してる?:それぞれの制約の中で「手綱を握る」仕事へ

GMOインターネットグループのエキスパートが、毎回ひとつのテーマについて語り合う「エキスパート座談会」。今回のテーマは「『AIエージェント』何を作って、どう活用してる?」です。開発、セキュリティ、FinTech、デザイン、映像制作と、領域の違うメンバーが実際に作って使っているエージェントを持ち寄りました。

はじめに

こんにちは。GMOインターネットグループ エキスパートの加藤優真です。

GMOインターネットグループでは、専門分野の第一人者を「エキスパート」として認定し、技術広報活動を支援しています。エキスパートは月に一度「エキスパート定例」に集まり、今年度からはメンバーが持ち回りでテーマを決めて進行しています。今回は私の担当回で、2026年6月12日に開催しました。

テーマを「AIエージェント」にしたのには理由があります。グループでは2025年11月に「AIエージェント活用・一騎当千プロジェクト」を始めました。一人あたりが活用するAIエージェントの数を「APP(Agents Per Person)」という指標で追っています。とはいえ、一口にAIエージェントといっても、何を作りどう使うかは領域によってさまざまです。エキスパートのみんなは実際に何を作り、どう使っているのか。今回はそこを率直に聞いてみることにしました。

参加メンバー

氏名所属領域
石丸 智輝GMOインターネットWebアプリケーション開発
黒瀧 悠太GMOペパボ次世代IoTシステム
武田 大佑GMOペパボAI for DevOps
山林 茜GMOペパボデザイン組織マネジメント
三村 聡志GMOサイバーセキュリティ byイエラエローレイヤセキュリティ
中谷 仁貴GMOペイメントゲートウェイFinTech
相原 知栄子GMOプライム・ストラテジーWebセキュリティ × WordPress(OSS)
加藤 優真GMOインターネット映像制作

作って、試して、育てていく

最初に話題になったのは、グループの目標でいう「エージェント」とは何を指すのか、という点でした。グループには、AIの知見を共有する社内ナレッジ共有サイト「GMO Genius」があり、作ったエージェントを登録してフィードバックを受けながら改善していけます。

相原

GMO Geniusには10体以上を登録しています。実は、エージェントを作ること自体をエージェントに相談しているんです。登録してフィードバックをもらって、作り直してより良くしていく。そのサイクルを回しながら育てています。

業務では、マーケティングの自動化に取り組んでいます。既存の動画やコラムから新しい動画を自動で生成したり、お知らせを月に一度コラムにまとめたり、クラウドから毎日情報を集めて精査したりしています。ちょうど新しいモデルのClaude Fableも試しているところで、めちゃめちゃ賢いですね。

導入の段階は会社ごとに違います。ゼロからエージェントを作り始めるのは簡単ではないので、メンバー同士で情報を共有し、教え合いながら進めることが大切だ。そんな実感がこの場で共有されました。

黒瀧

開発ではClaude CodeやCodexを使っていますが、個人でも自律型のエージェントを動かして、チャットで会話しながら試しています。仕事というより、普通に遊びで使っているぐらいですね。

コマンドを打つだけで、チケットからレビューまで進む

開発の現場から事例を紹介してくれたのは石丸さんです。

石丸

一つめは「日報作成エージェント」です。GitHubのPR履歴、Googleカレンダーの予定、クローリングしたAIニュースをまとめて、Slackに日報を自動で投稿します。

二つめは、チームのAI活用状況の可視化です。Claude Codeのコミット署名、Devinのセッション数、GitHub Copilotのリクエスト数などを集めて、活用の度合いを見えるようにしています。まだ使いこなせていない人を見つけて支援するのに役立てています。

三つめは、開発フローそのものの自動化です。チケット番号を渡して /develop を実行するだけで、次の工程が順に進みます。

  • MCP経由でチケットを取得する
  • 作業ブランチを作る
  • フロントエンドとバックエンドのサブエージェントが実装する
  • ローカルでテストしてpushする
  • AIレビューの指摘を受けて自動で修正する

石丸

エンジニアの仕事は、フローを作ることと、最終判断と、ちゃんと設計することになってきています。

武田

いま注力しているのは、AIが業務時間外に自律的に動いたときに、マージできるPRをどこまで作れるかです。人が何も言わなくても正しく動くように、やってはいけないことは指示ではなく仕組みのほうで禁止する。そういうガードレールの作り方を考えています。

自律させてはいけない領域もある

中谷

社内の申請書類をレビューするエージェントを作りました。経営層が重視するレビューの観点を学ばせていて、書類を渡すと、コストメリットや投資回収計画の弱いところを事前に指摘してくれます。

金融の業務には、AIに自律的に任せるべきではない領域があります。なので、AIに任せる範囲は慎重に設計しています。AIの行動をシステム側で制御するハーネスエンジニアリングは、そこの知見がたまったら、すごく価値のある情報になると思います。

セキュリティの三村さんの事情もまた違います。

三村

顧客の著作物や機密情報を扱うので、AIに入力できる情報には明確な線引きがあります。顧客の本番診断には使いませんが、OSSや公開情報を対象にした脆弱性の調査や基礎研究では積極的に使っています。

当日は、意図的にバグを埋め込んだプログラムに対し、脅威モデルの作成から脆弱性の検出までを自動で行い、レポートにまとめる仕組みを画面共有で見せてくれました。

生データを置くだけで、インサイトがたまっていく

山林

手元では12体のエージェントが動いています。数はClaudeに聞いて数えました(笑)。Notionのタスクを見て、1日に2〜3回、AIが先回りして作業を進めてくれるものもあります。

なかでも力を入れているのが、インサイトを管理する基盤です。営業の商談、ユーザーインタビュー、CSへの問い合わせなどの生データを置くだけで、AIがファクトを抽出してリサーチ用のデータベースに蓄積します。人によってファクトの粒度がばらつき、情報が独り歩きしてしまう。その課題への答えとして作りました。Slackの要望チャンネルも定期的に拾ってデータベースに入れています。EC事業部で先行して運用して、ほかの事業部へ広げていく予定です。

目指しているのは、マーケティングやプロダクトなど各チームの文脈に合ったインサイトを、AIのほうから届けてくれる状態です。AIとつながるツールを少しずつ増やしている段階で、「寝ている間に勝手に作ってくれる」ところが次の目標です。

クリエイティブの最後の壁は「文字」

山林

制作の領域でも変化が出ています。デザイナーがUIやコードを書けるようになりましたし、月次のキャンペーン更新は、ディレクターの依頼を受けてPRの作成からデプロイまで自動で進むケースが増えてきました。一方で、ゼロから何かを生成する部分はまだ発展途上ですね。

加藤

私はSNS動画広告の量産に取り組んでいます。SNS広告では、多くのクリエイティブを継続して出し続けることが求められます。そこで制作の手順をスキルとして固め、MCP経由で画像生成と動画生成につなぎました。以前は1本に2〜3週間かかっていましたが、大枠まではAIで作れるようになっています。

ただ、最後のテロップ入れ、音楽合わせ、編集は人がやるしかなく、いまは人がボトルネックです。生成AIは画面に文字を焼き込んでしまうので、文字を1か所直すだけでも最初から生成し直しになります。既存の編集ツールとAIのワークフローをどうつなぐか。そこが最後の課題だと感じています。

黒瀧

AIによる確率的な画像生成と、ベクターデータなどを使った確実な文字処理を、最初から分けて扱えばいいんじゃないでしょうか。

武田

実際にそうしている新入社員がいます。文字と背景を分けて生成して、文字は決まった処理で載せることで、スライドを作れているんです。

ボトルネックがはっきりした分、次に何をすべきかの解像度は確実に上がっています。

まとめ

座談会で分かったのは、エージェントの最適な使い方は領域ごとに違うということです。開発の自律化を突き詰める人もいれば、金融やセキュリティのように「任せてはいけない領域」の線引きから考える人もいます。情報をためる仕組みに価値を見いだす人もいます。それぞれが自分の領域に合ったかたちを工夫していました。

AIが進化して出力の質が追いついても、全体を設計してAIの手綱を握る役割は残ります。デザイナーとそうでない人が作るものは、やはり違ったものになる。座談会の最後には、山林さんからそんな声も上がりました。何をAIに任せて、どこを人が握るのか。その判断こそが、これからのプロの仕事になっていくのだと思います。

ブログの著者欄

加藤 優真

GMOインターネット株式会社 ドメイン・クラウド事業本部 クリエイティブ部 映像チーム リーダー / GMOインターネットグループ エキスパート(映像)

映像クリエイター。 2022年にGMOインターネット株式会社へ新卒入社。 企画から撮影・編集・運用までを一気通貫で行うビデオグラファースタイルで業務に従事。 お名前.com byGMOやConoHa byGMO、GMOとくとくBBをはじめとした自社商材の映像制作からグループ全体に関わる映像の制作・配信を担当。 2025年春から映像チームのリーダーも担当。 圧倒的ねこ派。

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