【イベントレポート】JSAI2026にGMOインターネットグループが登壇|オープニング挨拶と最前線の研究発表

2026年6月8日(月)から12日(金)にかけて、群馬県高崎市のGメッセ群馬およびオンラインにて「2026年度 人工知能学会全国大会(第40回)」(JSAI2026)が開催されました。第40回という節目を迎えた本大会に、GMOインターネットグループはプレゼンティングスポンサーとして協賛し、企業展示への出展に加えて複数のセッションに登壇しました。
本レポートでは、オープニングでのスポンサー挨拶と、6月8日から9日にかけて講演を行ったグループのエンジニアによる3つの研究発表の模様をお届けします。
6月10日から11日にかけて行われた講演や、GMOインターネットグループ特設ブースの様子をレポートした後編もぜひご覧ください!


ロボティクス時代を開拓する「GMOロボッツ」プロジェクト

登壇者:栗林健太郎(GMOペパボ株式会社 取締役CTO / 博士(情報科学))

オープニングを飾ったプレナリーセッションでは、GMOインターネットグループを代表して、GMOペパボ株式会社の栗林CTOが登壇し、グループが本大会を応援する理由を語りました。講演冒頭には人型ロボット(ヒューマノイド)の走行デモが披露され、舞台上を疾走する様子が会場の視線を集めました。

こうした人型ロボット(ヒューマノイド)開発の背景にあるのは、2026年のニューイヤー駅伝で初優勝を果たしたGMOインターネットグループ陸上部の存在です。栗林は、この陸上部の知見をロボットのモデル開発に活かし、2026年8月に中国で開催される世界ヒューマノイドの運動会での優勝を目指す「GMOインターネットグループ陸上部 – GMOロボッツ」プロジェクトを紹介しました。

ロボティクスへの取り組みはスポーツにとどまりません。栗林は、2026年4月からGMOインターネットグループが日本航空と進めている、空港におけるヒューマノイドロボット活用の実証実験を開始したエピソードも紹介。
観光需要で荷物の取り扱いが増える一方で担い手は減っていくというのが現状ですが、栗林は「これは航空産業だけに限った問題ではなく、全産業で人口が減るにつれてますます大きくなる課題です」と警鐘を鳴らします。
「我々GMOインターネットグループとしては、人型ロボット(ヒューマノイド)をもっと支援していくことによって、この課題解決にインパクトを残したいと思っております」と、GMOインターネットグループが30年以上培ってきたノウハウを「AI+ロボティクス」の領域へ展開していく構想を語りました。
さらに今後の展望として、「これからはフィジカルAIと言われるロボットが、インターネット上のアプリケーションを動かす大きなインフラになる」と示しました。

そしてJSAIではAIに取り組む学生さんも来場されていることから、栗林は渋谷に開設したGMOヒューマノイド・ラボの紹介とともに、インターンや共同研究を担う研究者の募集も呼びかけます。
最後に、「スポンサーをするだけでなく、我々のエンジニアや研究者がこの大会でさまざまな発表をします」と続く各セッションへと聴衆をいざない、講演を終えました。

強化学習を用いたヒューマノイドによる高速走行の実機検証 「GMOインターネットグループ陸上部 – GMOロボッツ」

登壇者:高橋勇哉(GMOインターネットグループ株式会社 / 修士 (情報科学))

栗林が予告した研究発表のひとつが、インダストリアルセッションにて高橋が登壇した「GMOインターネットグループ陸上部 – GMOロボッツ」の技術的な中身です。プロジェクトのコンセプトは「駅伝日本一の走りをするロボットへ」。駅伝日本一のグループ陸上部の走行データを、人型ロボット(ヒューマノイド)の走りに反映させる取り組みです。

直近の目標は、中国で開催される「世界ヒューマノイドロボット運動会」への出場です。GMOインターネットグループが予定するのは100メートル走・400メートル走・1500メートル走の3種目。人間と同じトラックを使い、自律走行であればタイムにボーナスが付くため、速さに加えて安定してレーン内を走る自律性も求められます。

出発点となったのは、GMOインターネットグループ 陸上部で活躍する駅伝ランナーのモーションキャプチャです。高橋は「トップクラスのアスリートはフォームが安定しており、疲労によるデータの劣化もないため、学習データとしての品質が高い」と説明し、陸上競技場で選手のモーションキャプチャを行ったことを紹介しました。
直線・カーブ、加速・減速など、関節の動かし方が異なる多様な状況を撮影して集めたモーションデータは、「ジェネラルモーションリターゲティング」という手法を用いて人型ロボット(ヒューマノイド)に移したと紹介しています。
実際にリターゲティングした映像では、嶋津選手と今江選手それぞれの走りが再現され、選手からも「陸上部のメンバーなら誰の走りか分かるくらい特徴が取れている」との声が寄せられたとのこと。

「最初から高い目標速度を与えるとロボットが転んでばかりで探索が進まないため、目標速度を低いところから段階的に引き上げていく必要があった」と振り返る高橋。「転倒率や最高速度が一定の基準を超えたら、目標の速度をわずかに増やす」形で、上下動の抑制や足を上げる高さの制約を緩めるなど、報酬を走りに合わせて細かく調整していったと語りました。

なかでもAMPについては、「これを素朴に適用したところ、めちゃくちゃ転んだ」とのこと。姿勢が崩れた状態からの復帰や、急旋回といった挙動はモーションデータに含まれていないため対応が難しく、さらにリターゲティングの際に内股気味のモーションになってしまっていたことが転倒を招いたと分析しました。
繊細なモーションに苦心しつつも、最終的には毎秒5メートル以上の速度で左右のブレのない直線走行に成功。速度に応じた自然な歩様や滑らかな旋回が観察できるようになりました。
今後の展望として、高橋は安定性や旋回性能の向上に加え、レーンを認識して経路を追従するという形での「自律走行との統合」を挙げました。
さらにセッション終盤には急きょスライドを追加し、ハードウェア側の課題にも言及。激しい走行ではモーターの制御で電流指令が高速に振動し、異常発熱から機体がシャットダウンしてしまうという課題を示しつつ、放熱や制御の改善にも取り組んでいく考えを示して講演を終えました。

適応的スパムフィルタのための軽量な類似メッセージカウンタ

登壇者:三宅悠介(GMOペパボ株式会社/ 博士(情報科学)・ ペパボ研究所 研究員/シニア・プリンシパルエンジニア)

2日目には、GMOペパボ株式会社のシニア・プリンシパルエンジニアである三宅が登壇。Webサービスのメッセージング機能に混入するスパムに対して、機械学習モデルによる既知スパムのスコアリングを、テキストと画像それぞれの「類似メッセージの出現頻度」のカウントで補完するという手法を提案しました。

他サイトへ誘導するようなスパムに対して、機械学習モデルによる検出で対応を行うところも珍しくありません。しかし、新たなパターンを検知してから再学習・反映するまでの期間、システムは未知のスパムに対して脆弱になります。かといって大規模言語モデルをそのまま判定に使えば、処理時間やホスティングなどにかかるコストは膨大なものになってしまうというのが現状です。

三宅はこの隙間を補う仕組みとして、
「似たようなメッセージや画像がグルーピングされて同一のハッシュ値が得られるとなったら、そのハッシュ値ごとにカウントすればいい」と提言。この方式であれば、QRコードへ誘導する画像スパムや、複数アカウントから発信されるスパムメッセージの亜種にも対応できると示しました。

実際のスパムキャンペーンを想定したシミュレーション評価では、新しいスパムの発生から平均3〜4件目程度で検出でき、処理時間は1件あたり36〜42マイクロ秒、メモリ使用量は4〜7メガバイトという軽量さを示しました。

誤検出率はテキストで3%、画像で0%。この結果について、三宅は「パフォーマンスの評価で、マイクロセカンド単位で1件あたりの処理ができ、要したメモリも数メガ程度だったので、我々が求める要件は満たせたと思います」と所感を述べました。

発表後の質疑では2つの質問が寄せられました。1つは、機械学習モデルが分離できなかったデータを前提にしているのか、実際にどれだけ違うのかという問いです。三宅は、そうした前提は置かずに実施したとしたうえで、機械学習が弱いパターンを提案手法が、 提案手法が弱いパターンを機械学習が補う、という相互補完の関係が見られたと答えました。
もう1つは、ハッシュの構成が知られると敵対的に衝突を回避されないかという懸念です。これに対しては、TF-IDFの前処理にあたる特徴量が非公開である限り、研究を公開しても攻撃者は対応しにくいと回答して講演を終えました。

VLAモデルにおけるカメラ配置がタスク成功率に与える影響の定量的評価

登壇者:常盤晟(GMOインターネットグループ株式会社 / 博士(物理学) )

オーガナイズドセッション「基盤モデル時代におけるPhysical AI」では、常盤がVLA(Vision-Language-Action)モデルのカメラ配置に関する研究を発表しました。

VLAモデルでロボットを動かす際、カメラをどこに置くかはタスクの成功率を左右する重要な要素です。一般には手先に1台と俯瞰に1台という構成が定番ですが、俯瞰が取れない複雑な環境では死角を減らす経験則的な配置が主流で、成功率の観点から定量的に比較した研究は限られていました。常盤はこの課題に正面から取り組みます。

実験では、シミュレーター上でオープンソースのロボットアームSO101を使用。そして半径1メートルの半天球上に32台の固定カメラを等間隔で離散配置し、同一のエピソードからカメラ構成だけを変えて学習データを生成することで、視点の違い以外の要因を揃えた比較を実現しました。

評価スコアは視野カバレッジ・視線直交性・ROI中心性の3点からなっており、結果は3点に整理されました。
1つ目は、固定カメラを単純に2台へ増やすと学習効率がかえって低下しうること。常盤は「同じ組み合わせでも、2台目のカメラから得られた情報が冗長となってしまう」と分析しています。
2つ目は、手先カメラを追加すると成功率が底上げされる形で均質化され、外部カメラの配置への依存が質的に低減すること。ただし手先カメラ併用時には、固定1台の構成が2台の構成を上回るケースもみられました。
3つ目は、ROI中心性が成功率と負の相関を示したことです。これはアーム自身が画面中心に来て自己遮蔽を起こすためで、手先カメラの追加によってこの「負の相関」は解消されました。実機による検証は今回間に合わず映像イメージでの提示にとどまったといい、今後シミュレーション通りの結果が得られるかを実機で確かめていく予定です。

質疑では2つの質問が挙がりました。1つは、成功率が高くなるカメラ配置を探索的に探していく方向は考えているかという問いです。常盤は「そうした研究にも関心はあるものの、まずは現在使われている構成を検証したい」とし、提案手法の検討はこれからだと答えました。
もう1つは、RGBフレームを入力すると処理が重くなる点について、カメラ周りで工夫しているかという質問です。これに対しては、今回はマシンパワーで対応したとしたうえで、ベースとなるモデルの改善が課題だと回答しました。

まとめ

オープニングで描いたフィジカルAIの大きなビジョンから、人型ロボット(ヒューマノイド)走行、VLAモデル研究、そしてスパムフィルタまで。今回のJSAI2026では、GMOインターネットグループのAI・ロボティクスへの取り組みが、構想と現場の両面から多層的に示されました。

スポンサーとしての協賛にとどまらず、GMOインターネットグループのエンジニア自身が学会という場で成果を問い、質疑を通じて議論を深めていく姿に、産学連携の確かな手応えがうかがえる大会となりました。

GMOインターネットグループでは、これからもAIへの研究開発を通じ、人型ロボット(ヒューマノイド)が広く社会実装されるロボティクス社会の実現に向けて取り組んでまいります!


後編はこちらから

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