AIがAIを開発し、AIが利用する。「最速」と「安全」を両立したConoHa VPS MCP開発の裏側

AIエージェントに「サーバーを作って」と伝えるだけで、VPSの構築が完了する。そんな「未来」のインフラ像は、もうすでに「現在」へと置き換わっています。

2026年7月7日、GMOインターネット株式会社は国内のクラウド事業者としては初となる、AIエージェントから自然言語で操作できるリモートMCPサーバー「ConoHa VPS MCP」をリリースしました。

今回は、製品企画を主導したGMOインターネット株式会社・ドメインクラウド事業本部のプロダクトマネジメントチームに所属する松本佑樹さん、企画の立ち上げから開発責任者までを務めたGMOインターネット株式会社システム本部ConoHa開発部・ConoHaバックエンドチームの平野空暉さん、同じく開発を担当したGMOインターネット株式会社システム本部・ConoHa開発部 ConoHaバックエンドチームの馬場純一郎さんの3名に、提供までの「速さ」と「安全」の両立など、AIと人の協働体制による製品開発の舞台裏を聞きました。

AIとインフラのあいだにあったギャップ

——まず、「ConoHa VPS MCP」とはどのようなプロダクトなのでしょうか。

松本

「ConoHa VPS MCP」は、我々が提供するConoHa VPSをAIエージェントから自然言語で操作できるようにするMCPサーバーです。インフラ運用における「情報へのアクセスコスト」を大きく下げる仕組みだといえますね。

サーバーを作ったりプランを変更したり……といった操作は、これまで人がコントロールパネルや公開APIを操作して行うものでした。そこをAIエージェントに任せられるようにしたのがこの「ConoHa VPS MCP」です。

2026年7月7日の七夕リリースとなりましたが、おかげさまでリクエスト数もドキュメントサイトへのアクセス数も伸びています。現状では手応えのある実績が作れているかなと感じますね。

——開発の背景もあわせて教えてください。

松本

最も大きかったのは、開発とインフラ管理のあいだに生まれたギャップですね。AIによってアプリ開発がとても簡単になった一方、それを動かすインフラの管理はまだまだ人間が中心となっています。しかしAIが開発をするのであれば、いずれAIがインフラも操作する時代が来るはずです。「ConoHa VPS MCP」はその1歩として企画したサービスだといえますね。

2025年7月にOSS版の提供を開始していますが、企画した当時は、まだ大半の方が「MCPってなんだろう?」という段階でしたね。

我々としても「まずは作ってみよう」という先行投資的な意味合いも兼ねてスタートしたのですが、MCPサーバーが一般ユーザーに広まっていくようになったことで、多くの方がMCPサーバーを受け入れてくれる時代になったと感じました。そこでリモート版の方にも可能性を見出し、開発しようという流れになったんです。

———OSS版から約1年を経てリモート版がリリースされましたが、当初から「2本立て」にすることが決められていたのでしょうか。

松本

最初から決まっていたわけではないんです。GMOインターネットとしてOSSでプロダクトを出すこと自体が初の試みだったので、公開までのスケジュールも最初はほとんど決めていませんでした。

技術がバズったタイミングで早期に出そうという見立てはあったので、「今だ!」というタイミングで短期集中で取り組んだ結果、この時期のリリースになったという形です。

平野

OSS版は初期セットアップが大変で、サーバー設定に明るくないユーザーにとってはハードルが高かったため、多数のユーザーに使っていただくところまで至らなかったという反省点もありました。社内でもPoC用途で利用していたのですが、そこからのフィードバックでも同じ課題が挙がりましたね。

そこでリモート版では極力簡単に、可能な限りクリックだけでセットアップが完了できることを意識して設計しています。

——具体的に、どういった使い方を想定されているのでしょうか。

松本

たとえば、複数のサーバーに設定されているセキュリティグループを確認したい場合、これまではコントロールパネルを開いたりAPIのレスポンスを個別に確認する必要がありました。しかしConoHa MCPでは、AIエージェントに自然言語で依頼するだけで、必要な情報を横断的に取得できます。

単にAPIを呼び出せるという話ではなく、「知りたいことを日本語で質問するだけで答えが返ってくる」という体験そのものが新しい価値だと思っています。

平野

社内で使う業務効率化ツールを作る、といった場面にも向いています。社内ネットワークからしかアクセスできないようにするといった制限を加えることもできますから、手軽さと安全性を両立しやすいんです。

企画段階で「こんなものができたらいいよね」と話しているものを形にしてみんなで見てみたり、本格的に開発するかどうかを判断するために試作を作ってみたり……。そうしたアジャイル的な使い方にも適しているサービスです。

——OSS版/リモート版の使い分けイメージなどお教えください。

平野

使い分けについても、最初はリモート版を選んでいただきたいなと思います。セキュリティ面でも使い勝手の面でも、MCPサーバーをリリースしている他の国内クラウド事業者と比べても一段抜けているという自負があります。

一方、自分でカスタマイズしたい場合や、MCP Apps(AI上にグラフィカルなUIを埋め込む技術)などの新技術を試したい場合にはOSS版が適していますね。

またIaCとのすみ分けもよく聞かれるのですが、大規模なプロダクトであれば、システムの構成をすべてコードとして定義するTerraformなどのIaCのほうが向いています。一方で「バイブコーディングで作ったWebアプリをとりあえず使ってもらい、フィードバックを得る」といった用途においては、「ConoHa VPS MCP」の方がいいですね。

「AIが使う」を前提に、速さと安全を両立させる

——今回の開発は、Claude Codeとの協働体制で行われたと伺いました。AIを「チームメイト」として加えるにあたり、どのような土台づくりや体制構築を行ったのでしょうか。

平野

まず、会社の規則やセキュリティ上絶対に守らなければならない部分をしっかり定義することから始めました。そのうえでAIがどう頑張っても逸脱できない仕組みをハーネスとして整え、あとは自由に開発してもらうという流れをとりましたね。

開発中もこうしたハーネスやバイブコーディングの有用性を実感する場面が多かったです。たとえばOSS版で機能を追加したいというときに、当初に敷いたルールをそのまま使い、1回のプロンプトでほぼ完璧な状態まで持っていけることが何度もあったんです。最初に「どうあるべきか」を定義することの重要性を改めて認識しました。

馬場

プロジェクト固有の品質ルールが準備されていたので、ハーネスエンジニアリングの仕組みは自分のように途中からプロジェクトに入った人間にとっても助かりました。以前なら先輩が細かく説明していた部分が環境側に組み込まれているので立ち上がりが早く、全体のスピード感も上がっていると感じます。

AI自体はコードの生成速度も速いですし、精度も新しいものが出てくるたびに飛躍的に上がっている印象があります。しかし実装には「絶対的な正解」が存在しないので、AIはさまざまな実装方法を提案してしまいます。なので人がルールを作り、それをAIに守らせる仕組みを作るところに難しさがありましたね。
またAIと人間の棲み分けについても、大きく以下の3点を組み合わせています。

1.Claude CodeとCodexによるソースコードのレビュー
2.Takumiによるセキュリティレビュー
3.人間の専門家が集まったSOCチームによるペネトレーションテストとレビュー

Claude CodeにCodexを組み合わせたのは、単一のAIに依存しない体制をつくるためです。Claude Codeが書いた成果物をClaude Code自身にレビューさせると、どうしてもレビューが甘くなります。なのでまったく関係のないAIによるレビューは何度も繰り返し行いましたし、セキュリティ周りについてはさらに何度も重ねました。
開発においては「脆弱性を出してなるものか」という意気込みで臨んでいましたし、最後は気合でローンチまでもっていきました(笑)。

——AIエージェントが直接の利用者となるプロダクトですが、抽象的な指示の解釈や内容の取り違え等にかかる安全性はどう担保されたのでしょうか。

平野

AIは「暗黙の了解」があるとうまく機能しません。そのため人間が使うプロダクトは視覚的な分かりやすさを重視しますが、今回は暗黙知がないよう可能な限りすべての情報を言語化して埋め込み、予備知識なしでもAIがサーバー設定を行えるよう意識しました。

そのうえで「やり直せる操作は変ではない」という考え方をベースに、サーバーの作成や情報の取得にはそこまで強い制限を設けず、ユーザーがあえて制限を入れられる予防線を用意するにとどめています。一方でサーバーの削除のようなクリティカルな操作は、削除前に本当に削除してよいかを聞くなどより慎重な設定にしました。

たとえばサーバーがいきなり消えてしまっては、利用者にとっては障害に匹敵する大問題になるので、危険な操作は慎重に行えるよう十分に用意しました。AI側にAPI認証情報を保存することなく利用できる設計も、こうしたリスク対策の1つですね。

他にもMCPサーバー上に「よくある間違い」をプロンプトとして書いて予防できるようにしたり、Skills(AIがMCPサーバーを利用する際のドキュメントや手順書にあたるもの)をセットで使っていただくことで指示通りの操作が正確に行えるようにしたりと言った形で作りこんでいます。

馬場

開発中には、AIの挙動に驚かされる場面もありました。スタートアップスクリプト(アプリケーションやフレームワークのテンプレートにあたるもの)を使ってサーバーを構築するよう指示したときのことですが、各種テンプレートの取得から入るかと思いきや、いきなりWeb検索を始めたんですよ。

少し考えてみると、別の分野に同じ名前のアプリケーションが存在することもあるため、認識の齟齬をなくすために下調べをしたうえで適切なものを選択していたんじゃないかと思うんです。AI自身に任された操作についてはかなり念入りに、慎重に調べているのだなという印象を受けました。

確率的な問題でもあるので「このモデルだから必ずこうなる」とは言えないのですが、自分が検証で使ってみた限りでは、性能の高いモデルほどこうした慎重な下調べが走りやすい印象がありますね。

——セキュリティを突き詰めるほど工数がかかってしまうものだと思いますが、今回の開発においてはどこで区切りをつけたのでしょうか。

平野

今回は改善すべきクリティカルな指摘が出なくなるまで繰り返し検証して、指摘が収束したところを区切りとしました。コードレビュー系は2〜3日で終わっていますが、一方で動作確認については先行事例がなかったこともあり、1ヶ月かけて入念に行いました。
多層のレビュー体制を組んでも想定を超える攻撃が成立してしまう時代ですし、やればやるほど開発工数はかかるうえ、守ろうとするほどシステムも複雑になって運用・保守が大変になります。なので、実はこの「セキュリティをどこまでやるのか」という部分が、個人的には1番難しかったところです。

馬場

現在は細かくコードを確認するのはAIの領域とし、我々は実装方針やプロジェクトのルールに反していないか、という視点でコードを見るようにしています。こうした人間側の意識の変化も、品質や安全性と実装の速さを両立させられた理由ですね。
我々エンジニアも、AIが出力したものを適切に活かして評価するために、技術力や知識は常に磨いていかなければならないと実感しました。

自然言語でインフラを操作できる未来へ

——前例のない挑戦を続ける原動力は、何だったのでしょうか。

平野

OSS版もリモート版も、国内のクラウド事業者としては初のMCPサーバーです。この「初を取りたい」という目標が、個人的には1番のモチベーションでした。MCPサーバーの利用者が増えていることもあり、安全で良いものを速くユーザーに届けたいという想いも原動力になりましたね。

松本

これからの時代は、インフラのサービスもAIの進化速度に追従できるかどうかが競争力に直結すると考えています。単発でVPSを使っていただくのではなく、AI開発のサイクルの中に入れるプロダクトへ成長する必要があるのではないか。そうした危機感が、モチベーションにつながっていました。

——今後、「ConoHa VPS MCP」はどのような存在になっていくのでしょうか。

松本

現状はサーバーの作成やプラン変更など、サーバー単体の操作にとどまっています。今後はオブジェクトストレージや、ロードバランサー、プライベートネットワークといったVPSのネットワークサービスについても、MCPを介して自然言語で操作できるよう機能を拡充していく考えです。
将来的にはTerraformなどのIaCとも連携して、インフラ全体を自然言語で便利に操作できるようにしたいですね。

また、MCPサーバー自体は無料で利用できるんですよ。作成したサーバーには通常の利用料金がかかりますが、インフラを操作するためのインターフェースについては無償で提供して広げていく考えです。

——最後に、この記事をご覧の方へメッセージをお願いします。

松本

私自身、当初は「IaCがあれば十分ではないか」と考えていました。しかし実際に使ってみると、IaCがインフラを定義するためのものだとすれば、ConoHa VPS MCPはインフラを理解し、対話するためのものだと感じています。
両者は競合するものではなく、むしろ補完関係にあります。
AIに自然言語で質問するだけで必要な情報へ辿り着ける体験は、一度使うと元には戻れない便利さがあります。ぜひ多くの方に体験していただきたいです。

平野

私も使っていて、何かを形にして誰かに共有するまでの速度が格段に速くなったことを実感しています。長期運用するならIaCなど他の手段がありますが、短期でいろいろ試し、作ったものをレビューしてもらうスタイルには、リモートMCPサーバーがとてもマッチしています。

たとえば、いま話題のAIエージェントを24時間動かしたいといった場合も、極論を言えばChatGPTに「ConoHaでこれを動かしたい」と伝えるだけで、あとは全部設定してくれます。Claudeからも利用できますから、VPSがよく分からない方でもある程度扱えるようになってきました。

馬場

私はインフラ周りの知識や構築経験がない方にこそ、使ってほしいなと思っています。AIでアプリやサイトを作るという方は自分の周りでも増えたのですが、「これってどうやって共有すればいいの?」という声もよく聞かれるようになっています。

「ConoHa VPS MCP」を使えば、この規模ならメモリはこのくらい……というところまでAIエージェントが決めてくれますし、サーバーの完成からアプリの公開まで誰でも到達できます。

「こんなアプリを公開したいので、サーバーを作って」といった曖昧な指示でも、MCPとつながっていれば対話形式で構築できるんです。インフラ周りの構築までAIがやってくれることはまだ十分に知られていないと思いますが、「こんなに簡単に作ったものを公開できるんだ!」という感動を、ぜひ体験してみてください。

まとめ

AIがコードを書く時代に、インフラの担い手も人間とAIの共存体制へと変わろうとしています。「ConoHa VPS MCP」は、これからのインフラをどのように担うかという問いから出発したプロダクトでした。

誰もが開発者として自分の作ったものを公開できる環境を実現する、安全で便利なサービスを提供するにあたり、提供までの速さを支えたのはClaude Codeという新しいチームメイトでした。そして安全を支えたのは、AIが逸脱できない土台を先に定義しておくという人間側の設計です。

「ConoHa VPS MCP」が広げようとしているのは、開発の速さだけではなく、開発に関われる人の裾野そのものです。アイデアを形にして届けるまでの距離は、確実に近づいています。

GMOインターネットグループでは、 これからもAIと人が協働する開発体制を磨き、安全で新しい体験をいち早くお届けできるよう取り組んでまいります!


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