「うちのグループ、100社以上あるのに、隣の会社に動画チームがあることすら知らない」。そう気づいたとき、正直ちょっとゾッとしました。エキスパートとして「グループの動画制作を盛り上げよう」と意気込んでいたのに、そもそも仲間がどこにいるかが見えていない。土台が何もない状態でスタートを切った話です。
目次
自己紹介
はじめまして(前回の記事を読んでくださった方はお久しぶりです)。GMOインターネットグループ エキスパート(映像領域)の加藤優真です。
普段はGMOインターネット株式会社 ドメイン・クラウド事業本部 クリエイティブ部 映像チームのリーダーとして、ConoHa byGMOやお名前.com byGMOなど自社に関わる映像制作を手がけています。前回は「ほぼ生成AIだけで動画を作ってみた」という話を書きましたが、今回はちょっと毛色が違います。技術の話ではなく、人と人を繋げた話。地味に聞こえるかもしれませんが、個人的にはこの活動は大事なものの一つだと感じています。
「エキスパート」になって最初にぶつかった壁
GMOインターネットグループには「エキスパート」という制度があります。特定の専門分野において高い専門性を持ち、対外活動(登壇・執筆・情報発信等)を通じた技術広報活動への貢献と、グループの垣根を超えた社内コミュニティの醸成を担う役割です。エンジニアだけでなくクリエイターも対象で、年に一度の公募制で選出されます。
映像制作の領域でこのエキスパートに任命されたとき、「グループ全体のインハウス動画制作を盛り上げていくぞ!」と意気込んでいました。
ところが、いざ動き出そうとして気づいたことがあります。
そもそも、グループ内のどこに、どんな動画クリエイターがいるのかわからない。
ナレッジを共有する相手が見えていない。誰に声をかければいいかもわからない。これはけっこう致命的な問題でした。
100社以上のグループなのに「見えない」問題
GMOインターネットグループは、インターネットインフラ、広告、金融、暗号資産など多岐にわたる事業を展開する100社以上のグループです。各社がそれぞれの事業のために動画コンテンツを制作しているはずなのですが、グループ全体を見渡したとき、動画制作に関わっている人がどこにどれだけいるのか、正直誰もわかっていませんでした。(おそらく、自分の知る範囲では)
同じグループなのに、隣の会社に動画チームがあることを知らない。似たような制作上の悩みを、まったく別の場所でそれぞれ抱えている。せっかくのノウハウや知見が共有されずに眠っている。いわゆる「サイロ化」です。
近年、多くの企業で動画制作のインハウス化が進んでいます。コスト面やスピード面のメリットから社内に映像制作機能を持つ企業が増えていますが、組織が大きくなるほどこのサイロ化は起きやすくなります。同じような課題に対して、別々のチームがそれぞれ車輪の再発明をしている状態、とでも言えばいいでしょうか。
エキスパートとして最初にやるべきことは何か。技術を教えることでも、制作フローを標準化することでもなく、まず人と人を繋げることだと考えました。
Slackチャンネル「#off-動画クリエイター」を立ち上げた
横のつながりを作る第一歩として、2025年6月にグループ共通のSlackにチャンネルを立ち上げました。
チャンネル名は「#off-動画クリエイター」。堅い公式チャンネルではなく、気軽にコミュニケーションできる場にしたかったので、説明文には「GMOインターネットグループの映像/動画制作に関わるすべての方のためのチャンネルです。専業・兼業問わず、動画に関わっている方であればどんな方でもWelcome!」と書きました。グループ横断で誰でもアクセスできる設定にしています。
チャンネルの雰囲気としては、例えばこんな感じのやり取りがほぼ毎日飛び交っています。
- 「このクオリティはやばい」「3秒で400円くらいするけどリップシンクの性能がいい」── 動画生成AIの新サービスに対するリアルな使用感
- SUNOを使ったAI音楽生成の実験結果や、モーショングラフィックスとAIを組み合わせた制作事例
- スタジオ設備の更新情報、新しいミキサーやカメラの機材情報
- 「この効果音生成サービスが便利」といったツール紹介
- グループの社内勉強会の登壇情報や、社内ナレッジ共有プラットフォームへの投稿の紹介
現在、チャンネルには90名以上が参加しています。GMOインターネットグループ株式会社、GMOインターネット株式会社、GMOペパボ株式会社、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社、GMO NIKKO株式会社、GMOグローバルスタジオ株式会社、GMO ENGINE株式会社など、多様な事業会社から映像チーム、配信スタジオの運用メンバー、兼業で動画制作に関わっている方まで、想定より幅広い層が集まってきました。「繋がりたいと思っていた人が、想像以上に多かった」というのが率直な感想です。
実際に会う:動画クリエイター交流会
オンラインでのやり取りが定着してきたタイミングで、実際に顔を合わせる場も作りたいと考えました。
最初の一歩は、渋谷フクラスにあるGMOインターネットグループのコミュニケーションスペース「GMO Yours」で毎週行われているバータイムでの「プレ交流会」でした。「まず手軽にバータイムで」という軽いノリで企画して、みんなでワイワイ話しながら今後の交流会の形を一緒に作っていく場としてスタートしました。

東京だけでなく、GMOインターネットグループの宮崎拠点(GMO hinataオフィス)でも「動画クリエイターオフ会」を開催しました。「何作ってる?どう作ってる?困っていることは?」など、ざっくばらんに話す会です。宮崎勤務のメンバーにメンションしたところ、なんと熊本から参加してくれた方もいて驚きました。参加者からは「思っていた数倍楽しい時間だった」「意外と宮崎が近いことがわかった」という声をいただき、拠点を超えた繋がりの可能性を実感しました。

年末には忘年会も兼ねた交流会を開催し、回を重ねるごとに参加者の輪が広がっていきました。交流会で一番印象的だったのは、参加者から何度も聞こえてきた「同じグループにこんな人がいたんですね」という声です。サービス紹介動画、採用動画、SNS向けショート動画、IR向け映像、イベント配信……各社の事業特性に合わせた多様な映像制作が行われていて、だからこそお互いの引き出しを共有することに価値があると感じました。
アンケートで見えてきたリアルな現状
チャンネルメンバーにアンケートを実施したところ、インハウス動画クリエイターたちのリアルな状況が浮かび上がってきました(22名回答)。
専任は意外と少数派
「動画制作が主な業務」という専任は6名(27%)。「他の業務と兼ねている」が9名(41%)、「必要に応じて関与」が7名(32%)という結果で、実は専任で動画制作をしている人は少数派でした。さらに、1つの組織あたりの制作人数は「1〜3人」が11名で最多。少人数で企画・撮影・編集・配信まで幅広くカバーしているという実態が見えてきました。
共通の課題は「効果測定」と「ノウハウ不足」
課題として最も多く挙がったのが「効果の測定が難しい」(13名)と「制作ノウハウの不足」(12名)。続いて「制作にかける時間がない」「他チームとの交流が少ない」「機材の選定・購入」がそれぞれ8名、「社内に相談できる相手がいない」が7名という結果でした。
動画を作ったはいいけれど、それがどれだけビジネスに貢献しているのか見えにくい。制作にかけられる時間も限られている。社内に相談できる相手がいない。こういった悩みが会社を超えて共通していました。それぞれが独立して抱えていた課題が、繋がることで「自分たちだけの問題ではなかった」と気づける。課題を共有するだけでも、精神的な負担は確実に軽くなります。
求められているのは「他社の制作事例」と「勉強会」
チャンネルへの期待として最も多かったのが「他社の制作事例の共有」(15名)と「勉強会」(14名)、「機材・ツールの情報共有」(13名)。参加したいイベントについては「勉強会」(16名)と「制作事例の発表・共有」(15名)が上位でした。
同じGMOインターネットグループという近い環境で制作している仲間の知見は、外部のセミナーで得る情報よりも実践的で取り入れやすい——そんな声もあり、ナレッジ共有へのニーズの高さを実感しました。
繋がりが「環境改善」と「モチベーション」に変わってきた
こうした繋がりは、情報交換にとどまらず具体的なアクションにも発展しています。チャンネルを通じて各社の制作環境に関する悩みやニーズを集約し、社内の収録スペース整備の検討材料として活用するなど、横のつながりが実際の環境改善に繋がり始めました。個々のチームでは声を上げにくかった課題も、グループ横断でデータとして集めることで、説得力のある提案材料になります。
そして、もうひとつ感じているのがモチベーションの変化です。インハウスの動画クリエイターは、社内に同じ職種が自分ひとりか数人しかいないことも珍しくありません。日常的にクリエイティブの話ができる相手が少ない中で、グループを超えた仲間の存在はかなり大きい。「自分の仕事を理解してくれる人がいる」という安心感は、日々の制作モチベーションにも確実に繋がっていると感じています。
そして「インハウス動画サミット」へ
グループ内でこれだけ同じ悩みを抱えているメンバーがいるとわかったとき、ふと思いました。グループの外にも、同じ状況の人たちがいるんじゃないか。
インハウスのクリエイターは、商材やサービスの向こう側にいる存在です。制作会社やフリーランスとは違い、なかなか表に出てくる機会がありません。グループの中の人と外の人が出会える場を作れないか。インハウスクリエイターが主役になれるイベントがあってもいいだろう。そんな思いから「インハウス動画サミット」の企画がスタートし、2026年2月に開催しました。
サミットの詳しい内容については、次回の記事でお届けします。お楽しみに!

おわりに
「横のつながりを作る」というのは、一見すると地味で即効性のない活動に見えるかもしれません。でも、大きな組織でクリエイターの力を引き出すためには、まず人と人を繋げることが出発点になると実感しています。
Slackチャンネルをひとつ作る。交流会を一度開いてみる。そんな小さな一歩から、予想外の展開が生まれることもあります。
インハウスで動画制作に取り組んでいる方、これからインハウスの動画組織を立ち上げようとしている方、社内のクリエイター同士の連携に課題を感じている方。何かひとつでもヒントになれば幸いです。
次回は「インハウス動画サミット」の開催レポートをお届けします!
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