【Expert cross #3・後編】組織と業界を動かすエキスパートへ GMOサイバーセキュリティ byイエラエ・三村聡志が描く、「安全なロボット」を実現する世界

ソフトとハードの両面に通じる「話せるエンジニア」として、周囲から「親方」の愛称で親しまれるのは、GMOサイバーセキュリティ byイエラエ(以下、GMOイエラエ)でIoT・ハードウェアの診断を担う三村聡志さん。その発信は、社内外の幅広い層に届いています。
後編では、そうした活動が組織にどのような影響を与えているのか、他領域のエキスパートとどう連携していきたいのか、そして「人型ロボット(ヒューマノイド) が安心・安全に働く未来のため、いつかじっくり解析してみたい」 という三村さんの野心的なビジョンについて、三村さんの「上長の上長」でもあるCTOの小池悠生さんとともに伺いました。

前編はこちら

現場に立って気づいた「本当の課題」

———エキスパートとして活動するなかで、ご自身に変化はありましたか。

三村

他のエキスパートやパートナーと意見交換をするなかで、自分自身の視野が広がったと感じています。自分が知らない分野のエキスパートの方が持つ見識に触れることもできますし、そうした刺激を受けられるのが1つの大きな変化ですね。

また展示会などの現場に立つことで、「やらなければならないことの多さ」を痛感したこともポイントでした。診断のご相談に来られるお客さまは、その時点ですでにレベルが高いんです。そこに至らない層や実際の現状にこそ課題があるので、現場でそれに触れられたのは大きかったです。

こうした現場では「うちは知られていないから狙われない」「中小企業だからサイバー攻撃なんて関係ない」といった声や、「対策の優先順位はいつ考えればいいのか」「対策して何かいいことがあるのか」という疑問もよく出てくるんです。

セキュリティの本質的な価値は「この製品は安全だから使おう」という信頼・信用の向上や保全にあると思っています。こうした意識を基礎から底上げしていくにはどうすればいいのかを、現場で話すたびに考えさせられますね。

———小池さんから見て、三村さんの存在は組織にどんな影響を与えていますか。

小池

外部へ発信する技術者は、GMOイエラエでもそこまで多くありません。会社として営業が発信することはあっても、技術者自身が語る例はあまりないのですが、そのなかで技術者として情報を発信し続けている三村さんは社内外で高い認知度があります。

中には三村さんのファンもいらっしゃるので、GMOイエラエという枠を超えた、IoTセキュリティ分野におけるシンボル的な存在になってくれていると思いますね。

何より三村さんは安心感のある語り手なので、あまりIoTなどに詳しくない相手にも「この人の話なら聞いてみようかな」と思わせられるのも三村さんの素晴らしさです。社内のジュニアや若手のメンターにもいい影響を与えていますし、取引先の企業からも「三村さんと話していると安心感がある」とよく言っていただけるんですよ。

またハードもソフトも分かるというのは、情報の全レイヤーを下から上まで理解しているという証です。こうした知識に裏打ちされた語り口で安心感を与えられる三村さんだからこそ、他のエキスパートやグループ各社から相談されやすいのだと思いますし、人と人・会社と会社をつなぐ「ハブ」になり得る存在だと感じています。

———広報や発信の面では、三村さんにどのような役割を期待していますか。

小池

社内に対しては、グループ各社に「GMOイエラエでこんなことまでできるのか」を知ってもらうことですね。GMOインターネットグループはグループ内の会社がとても多いので、私たちが手伝えることが十分に伝わっていない場面もあるんです。

「こういう相談にも乗れますよ」という部分の発信もそうですが、グループ内の動向や課題感を拾ったうえで、GMOイエラエとしてこういう解決手段がありますという相互理解を深めるというのをとくに大事にしてほしいなと考えています。

社外に対しては、専門であるIoTに集中してもらい、その重要性の発信や「今後はこれが重要になる」という提唱を続けてほしいですね。ドローンやロボットの展示会なども通じて、IoTセキュリティの「ご意見番」、ゆくゆくは「重鎮」と呼ばれる存在になってもらえたらと思っています。

AI・ロボティクス社会実現のために「人型ロボット(ヒューマノイド)を解析したい」

———今後取り組みたい課題と、これから挑みたいビジョンを教えてください。

三村

積極的に取り組んでいきたいのは、まずAIの利活用をより具体的に現場へ落とし込んでいくことですね。これはGMOインターネットグループ全体の課題でもあり、一昨年あたりからじわじわ出ている話なんです。

もう1つは、外部サービスへの依存リスクです。たとえばClaudeのFable 5が規制の対象となり使えなくなる、といった事態も現実に起きましたよね。外部サービスに依存していると、そこにリスクが生まれてしまうんです。

依存そのものを減らすという考え方もあれば、リスクを抑えた形でうまく使いこなすという方向もあるので、その両面でしっかり備えを固めていかなければならないなと。

小池

AI時代への対応は会社の存続にも関わりますし、私たちの高度解析部が扱うIoT周りにも、いままさにAIが入りつつあります。この領域はまだ誰も正解を持っていないからこそ、自分たちで打ち出していくしかない。エキスパートとして、自分の考えをどんどん発信していってほしいですね。

三村

私の領域で取り組みたいビジョンの面では、IoT診断が1つの軸になります。機器の中からデータを取り出したあとは従来の診断と同じなのですが、ハードウェアからソフトウェアにデータを移すまでの「ハードウェアの壁」の越え方が今の課題なんです。

たとえばIoT機器とスマートフォンなどをつなぐ「ラストワンマイル」の部分がこれにあたりますね。組み込みデバイスの限られたリソースのなかで推論を走らせる領域は、車載や自動運転の知見とも交わっていくと考えています。ここはいろいろとキャッチアップしている最中ですね。

小池

挑みたいビジョンですよね?せっかくですし、人型ロボット(ヒューマノイド) を解析したいですって言っちゃいましょうよ。

三村

いい機会ですよね(笑)。実はGMO AI&ロボティクス商事株式会社の方とは、様々な展示会で一緒にやらせていただくことが多いんです。この前のドローンの展示会「Japan Drone」でも一緒にロボットの展示があったんですけども、そういう時にも都度「これ解析していいですか?」って笑顔で聞きにいったり。

JALグランドサービス様との実証実験も進んでいますが、人型ロボット(ヒューマノイド) やロボットは「これまでPCの中で動いていたもの」が現実の世界に飛び出してくる存在です。なので、安全なパソコンを作るためにウイルスの挙動を解析するのと同じように、人型ロボット(ヒューマノイド) をさらに安全なものにするべく、調査したいんです。

人型ロボット(ヒューマノイド) を解析して攻撃者目線からどのような攻撃が考えられるかを調べ、その攻撃をどう守るかを考えることは、エキスパートとしての知見を深めるという研究的な面でも、より良いサービスを共に作るという面でも大きな意味があります。ぜひ解析させてほしいです!

———他領域のエキスパートとは、どう連携していきたいですか。

三村

エキスパートには多様な分野の方がいますので、まずはPoCレベルで面白いサービスを作り、骨太にしていく段階でGMOイエラエの技術も使う……といった広がりがあるなと感じていまして。領域をまたいで人と技術を組み合わせていけることこそ、多様なエキスパートが集まっている意味だと思うんです。

たとえば「安全に通信する」なら暗号技術の酒見さんがいらっしゃいますし、「その上に何かを載せる」ならものづくりの面々……というように、組み合わせて展開していければなと。

小池

サービスを作る時はぜひ我々も呼んでほしいですね(笑)。

マクロな視点からの話になりますが、私個人はセキュリティを「副次的なもの」だと思っています。便利なものが先に広まって、後から安全を考えるというのは、歴史的にも自然な流れですよね。私はそれでいいと思っているのですが、だからこそないがしろにされやすい面もあるなとも考えているんです。

セキュリティは「早め早めの相談」がとても重要で、設計が終わってからでは手遅れになりがちです。金融やブロックチェーンのように、設計の段階からセキュリティを織り込むべきサービスも少なくありません。サービス立ち上げの際にセキュリティ面を監修したりといった形で協力できるので、ぜひ我々GMOイエラエに頼ってほしいなと。

エキスパート制度は、そうした横のつながりを作る場として有効だと実感しています。GMOインターネットグループの取り組む面白いことや新しいことを応援したいと思っているので、ぜひ早い段階で相談していただきたいですね。三村さんには、こうしたセキュリティの重要性の周知や横のつながりづくりにも期待しています。

———通常業務とエキスパート活動は、どうバランスを取っているのでしょうか。

三村

特別にバランスを取っている意識はなく、「うまくやっている」というのが正直な答えです。普段の業務は締め日が決まっているので、その合間にエキスパートの予定が入れば、自分のなかでマイルストーンを少し前倒しして、最後に軽い作業を残しておく。そうやって柔軟に調整しています。

小池

本人がハンドルできていることが最も大事で、現状はきちんと両立できています。三村さんは登壇の予定が早く決まるので、本人からの連携をもとに、早めに業務を調整していますね。

この手の活動は、通常業務をこなしながらのプラスアルファの取り組みになりがちです。もちろん本人の頑張りが前提ではありますが、だからこそ部署全体でもバックアップするようにしています。

自分の好きを伸ばして「尖った人」へ

———エキスパート制度が今後さらに広がるためには、何が必要だと思いますか。

三村

もっと「開かれた」制度になるといいなと思っています。今のエキスパートには、私から見てもすごい方ばかりが揃っているので、外から見ると「あの輪に入れるんだろうか」とハードルの高さを感じてしまうかもしれません。何かを変えるというより、「片足を突っ込んでみてもいいんじゃない?」と思える空気感が大事になるんじゃないでしょうか。

小池

私は「連携」が大事になると思いますね。エキスパート同士のシナジーはもちろん、グループ各社の状況を踏まえて、適切に連携できることが大切だと思います。

さらに、エンジニアやクリエイターとしての技術を高めることも重要です。エキスパートの選考においては、卓越した技術力や外部からの一定の評価を重視しています。今年の選考に関わった実感としても、「開かれていること」は大事な一方、エキスパートの前提である「技術で尖っていること」自体はやはり欠かせないと感じますね。

そのうえで、エキスパートだけではなく多くの皆さんとの交流や知見共有をもっと増やせるといいと思っています。現状はCTOを対象とした勉強会のようなクローズドな交流になりがちなので、エキスパートとしての活動が外から見えにくい面があるんです。

過去の好例としては、同じくエキスパートの加藤優真さんが開催した「インハウス動画サミット2026」のような、他社とタイアップして参加者を募るイベントがあります。こうした連携を、これからも強めていけるといいですね。

【インハウス動画サミットイベントレポート前編】
【インハウス動画サミットイベントレポート後編】

三村

エキスパートの定例会でも同じ課題が出ているんですよね。イベント1つ取っても、内容や性質によっては敷居の高さや障壁を感じてしまう人もいるので、万人が参加したいと思えるものをいろいろ考えていきたいです。

———最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

三村

自分の中にある「好き」をどんどん伸ばしてほしいですね。自分自身で何かを見つけて、楽しめる人がエキスパートになれると思います。またAIの利活用がこれから重要になるからこそ、AIへの「問いの出し方」や構想を広げる土台として、自分自身の基礎となる技術知識が必要になるでしょうね。

時には一見まったく無関係なものが、突然つながることもあります。だからこそ幅広く物事に触れて、頭のなかで「ああでもない、こうでもない」とこねられるようなプラットフォームを持っている。そういう方にぜひGMOインターネットグループに、そしてエキスパートとして来ていただけると、大きなシナジーが生まれると思います。

小池

ここまで連携の話を強調してきましたが、CTOとして、また一人の技術者としての本音を言えば「技術で尖っている人が好き」です。分野を問わず、「この人はすごい、尊敬できる」と思える人を見るのが私自身はとても好きなので、この制度もそうした人材を求めている面が多分にあると思います。

ですから、「我こそは」という方には、ぜひ積極的にエキスパートに応募してほしいですね。やる気やモチベーション、積極性さえあれば、結果は後からついてくるものだと思っています。

まとめ

「マイナスを防ぐ」にとどまらず、信頼と信用につなげる。三村さんのセキュリティ観は、エキスパートとしての発信を通じて、より広い射程を持つようになりました。現場に立ち、まだ課題に気づいていない層にこそ目を向ける姿勢が、その視野を支えています。

ハードとソフトを横断する視点を武器に、他領域のエキスパートと手を組みながら、「安全なロボット」を提供できる世界を実現する。その野心的なビジョンの根本にあるのは、終始一貫する「いい世の中を作りたい」という思いです。

三村さんの経歴や「伝え方」の流儀について語った前編もぜひご覧ください。

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技術広報チーム

GMOインターネットグループ株式会社

イベント活動やSNSを通じ、開発者向けにGMOインターネットグループの製品・サービス情報を発信中

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