【Expert Cross #3・前編】ソフト・ハードの両面から「話せる」エンジニアの流儀 GMOサイバーセキュリティ byイエラエ・三村聡志が語る、「伝えることで世界を良くする」エキスパートの在り方

スマート家電から産業用ロボットまで、あらゆる機器がネットワークにつながる時代になりました。IoTの潮流が大きなうねりとなって私たちの生活を変えつつあるなか、そうした機器のセキュリティの重要性は、まだ十分に理解されているとは言えません。
こうした領域で「セキュリティを語れる人」として社内外を飛び回っているのが、GMOサイバーセキュリティ byイエラエでIoT・ハードウェアの診断を担う三村聡志さんです。
GMOインターネットグループでは、特定の専門分野における第一人者を「エキスパート」として認定し、エキスパートによる情報発信やイベントの開催といった技術広報活動への支援を行っています。エキスパートはグループ内におけるコミュニティの活性化はもちろん、業界全体の発展に貢献する取り組みを行っており、活動費用として年間で最大100万円が支給されます。
今回はそんな三村さんと、三村さんの上長でもあるGMOサイバーセキュリティ byイエラエCTO・小池悠生さんのお二人に、エキスパート就任の経緯やこれまでの活動、そして三村さんが大切にしている「伝え方」について伺いました。

「話せるエンジニア」として、情報発信から教育までを幅広く行う

三村聡志(みむら さとし)|GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社

ソフトウェア開発やマルウェアの解析、コンシューマーサポートなど幅広い業務を経験した後、現在はGMOサイバーセキュリティ byイエラエでIoT・ハードウェアのセキュリティ診断を担当。手を動かす技術者としての一面を持ちながら、セキュリティの重要性を社内外に伝える「話せるエンジニア」としても活動。GMOインターネットグループのエキスパートとして、ローレイヤセキュリティの領域で現在5期目を継続して務めている。

小池 悠生(こいけ ゆうき)|GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社 上席執行役員CTO 兼 高度解析部 部長

2020年、サイバーセキュリティのスタートアップ創業メンバー。2023年、GMOイエラエ(現 GMOサイバーセキュリティ byイエラエ)サイバーセキュリティ事業本部の上席執行役員に就任し、現在はCTOと高度解析部部長を兼務している。ファジングを中心としたサイバーセキュリティに関する研究、コンサルティング、ペネトレーションテストなどに従事。日本を代表するCTFチーム「binja」のキャプテンとして国際CTFで数々の受賞実績を持ち、CODE BLUE 2015ではU25スピーカーとして登壇。

———まず、お二方のご経歴と現在のお仕事をお聞かせください。

三村

GMOサイバーセキュリティ byイエラエで、IoTやハードウェアの診断を担当しています。もともとはソフトウェアの開発やマルウェアの解析をしていて、コンシューマーサポートに携わっていた時期もありました。黙々と手を動かすのも好きなのですが、どちらかといえば「話せるエンジニア」だと思っていますね。

そうした幅広い経験があったからこそ、今こうしてエキスパートとして外向きの活動をしながら、エンジニアリングの力も高めていくという形で会社から任せてもらえているのかなと考えてます。

小池

同じくGMOサイバーセキュリティ byイエラエの小池です。もともとはセキュリティのスタートアップを立ち上げから3年半ほど手がけ、研究や実務に取り組んでいました。2023年末に当社へ執行役員としてジョインし、現在はCTO兼高度解析部の部長を務めています。

IoT周りやスマートフォンアプリなど、いわば「手元にあるもの」のセキュリティ診断を担う部署の責任者ですね。

———三村さんは今回で5期目になりますが、そもそもなぜエキスパートに就任されたのでしょうか。

三村

一番最初は、エキスパートという制度を作るという話が出たときに、「活きのいいやつはいないか」という感じで声がかかったんです。「三村さんならとりあえずいいんじゃないか」という形で話が下りてきて、「空き時間でいいから一度やってみては」と誘われました。

そこから毎年「来年もぜひ」とお声がけいただき、ずっと続いているという流れですね。

小池

補足すると、三村さんは私がジョインする前から活動していたんです。今は私が上長でCTOでもあるので、制度上は私からの推薦という形になっていますが、実際には三村さんが一番はじめからいて、きちんと活動してくれている。だから「そのまま続けていいよね」という確認をいただくだけで、私としてもぜひ続けてほしいと思っています。

———三村さんは「親方」という愛称でも知られていますが、その由来はどこにあるのでしょうか。

三村

正直なところ、私が言い出した言葉ではないので、いまだに由来はよくわかっていないんです。周りから呼ばれることが増えて、「まあいいか、これで」と放っておいたら定着してしまいました。本当にそんなものですね。

以前に落語鑑賞が好きだと話したら、グループの遊び心で「寄席を借りて撮影をしよう!」という企画が持ち上がったこともありました(笑)。

「いい世の中を作る」が原動力

———小池さんから見て、エキスパートとしての三村さんの強みはどこにあると感じますか。

小池

ひとことで言うと「外に伝える力」ですね。当社のメンバーはみんな技術力が強いので、三村さん以外にも優れたエンジニアは何人もいます。しかし、そのなかでGMOインターネットグループ内外に向けて技術力を伝え、つなげていく力がとても強いのが三村さんの素晴らしいところなんです。

三村さんには、こうした特性をさらに発揮してもらうべく、社内でももともとの所属部署である高度解析部 高度解析課 に加え、外部の方々に講師として何かを教えていく業務を担う「教育課」という部署にも所属してもらっています。そうした仕事も兼ねているので、本人の言う「話せるエンジニア」という言葉どおり、伝える力が社内外でしっかり生きているなと感じていますね。

三村

根っこにあるのは「いい世の中を作りたい」という思いです。そのためには、お客さまにどういうイシューがあるのかを聞かなければいけませんし、どうすればより良くできるのかも伝えなければいけません。

でも、それらを話すだけでは意味がないんです。きちんとソリューションを提供できるように、自分自身も高めていかなければならない。その過程で「話す」ことも大事になってきて、できるようになっていったという感じですね。

———これまで、エキスパートとして具体的にどのような活動をされてきたのでしょうか。

三村

外向きの広報としては、Japan Droneや国際ロボット展など、GMOインターネットグループとして出展する場で「セキュリティを語れる人」という形で登壇してきました。また教育の文脈とも紐づきますが、学校をはじめさまざまな場所で授業も行っています。大学生向けはもちろん、昨年は小学生向けの授業も担当しました。

幅広い層に向けて「どうすれば安心・安全に使えるのか」を伝える活動が中心なのですが、他にもSECCONやCODE BLUEといったカンファレンスの運営にも関わっています。また、基礎技術の調査なども地道に続けているところですね。

こうした活動の一環として、書籍の執筆も行いました。もともとは知り合いから「こういう本を出すのだけれど、何かネタはないか」と振ってもらったのがきっかけで、「バイナリファイル解析ハンズオン ツールだけに頼らない実践力レベルアップ」という本の一部を執筆しています。

———外に向けて発信するうえで、大切にしていることはありますか。

三村

「ブランドとしてどうシナジーを出していくか」という点を大事にしていますが、そのうえでセールス一辺倒にならないことも重要だと考えています。「この製品を入れればすぐ安全になります、だから入れてください」というセールストークではなく、まず相手の要求をきちんと聞くことも大事なんです。

極論を言えば、たとえGMOインターネットグループが出している製品であっても、「これは過剰だ」と感じたときには「将来的には必要かもしれませんが、今はこれはいりません」とはっきりお伝えできるようにしているんです。最終的に効いてくるのはブランドとしての信頼感だからこそ、正直であることを最も大切にしています。

そして研修や教育の場では、「こうすればいい」と教えるだけでは足りないと思っています。実際に体験してもらうことで深く伝わるものがあるので、「相手に安全な形で失敗してもらうこと」をやりたいんです。

たとえば化学実験で、火花が飛んだり、薬剤を混ぜたら黒いものが噴き出したり…という光景は意外と記憶に残りますよね。ああいう体験を安全な形で用意してあげることが、伝えるうえで効いてくるのだと考えています。

ハードとソフト、両方を知るからこそ出せる「解像度」

———三村さんはハードウェアとソフトウェアの両方に明るい、希少な存在です。その「二刀流」は、エキスパートとしてどのように生きていますか。

三村

外で話すときの「解像度」がまるで違ってきますね。たとえばロボティクスの分野では、中で動いているソフトウェアはPCと同じ部分もあれば、まったく異なる部分もあります。製造や開発の現場には、「セキュリティの人はパソコンのことしか分からないんでしょう」という見方をする方も少なくないんです。「こんなミッションクリティカルなロボットで、重い処理なんて動かせない」と言われることもよくあります。

そうしたときに、ハードウェアの設計を踏まえて「今のシステムなら、ここをこうするだけでも良くなりますよ」と具体的に返せると、相手の態度が変わってより深い話に進めます。これは展示会でよく感じるところですね。

逆に、ソフトウェアの設計を踏まえてハードウェアの話をすることもあります。たとえばケーブルに電気を流すと、すべてが完璧に動いたときの理論値を返すシミュレーター上では一瞬で点灯しますが、実機では家庭の蛍光灯のように、消したあともジワっと明かりが残りますよね。その残留した電気がベースになって、誤作動が起きる可能性もあるわけです。

経験と知識がなければ、そもそも「こういうことが起こり得る」という想像自体ができません。しかしソフト・ハードの両方を知っていれば、こうした実務と理論の違いについて理解したうえで「実際はこうですよね」と話が通じるんです。

こうした勘所は、知っているか知らないかで大きな差が出てきます。知らない方に「実はこうなんですよ」と伝えていくことも私の役割の1つだと思っていますし、ソフトウェア・ハードウェア両方の領域に通じていることは、その想像力を支えてくれていると思います。

まとめ

黙々と手を動かすことも、人前で語ることも厭わない三村さん。その「話せるエンジニア」ぶりは、ハードとソフト双方への深い理解に支えられていました。

エキスパートとしての活動は、単なる情報発信にとどまりません。相手の課題を聞き、ときには「これはいらない」と正直に伝え、安全に失敗を体験してもらいながら信頼を積み上げていく。その一つ一つが、GMOサイバーセキュリティ byイエラエ、ひいてはIoTセキュリティ全体のブランドを形づくっています。

後編では、三村さんの活動が組織に与える影響や、他領域のエキスパートとの連携、そして「ヒューマノイドをバラして解析したい」という野心的なビジョンについて伺います。

後編はこちら

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GMOインターネットグループ株式会社

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