AIによって、アウトプットは急速に均されつつあります。きれいなものも、それっぽいものも誰でもつくれる時代だからこそ、「GMO DESIGN AWARD 2026」は、テーマに「トキメキ」を掲げました。
今回は、3年目を迎える本コンテストで審査を担う有馬トモユキ氏・清水勝太氏・広野萌氏の3名に、審査員を引き受けた理由から昨年の受賞作の印象、そして「トキメキ」というテーマの受け止め方などを伺いました。
目次
【GMO DESIGN AWARD 2026 審査員一覧】

有馬 トモユキ氏|日本デザインセンター 有馬デザイン研究室 クリエイティブディレクター
1985年生まれ。コンピューティングとタイポグラフィ、物語をキーワードに複数の領域を横断するデザインを行う。武蔵野美術大学・基礎デザイン学科非常勤講師。ZEN大学・客員教授。著書に「いいデザイナーは、見ためのよさから考えない」(星海社)がある。

清水 勝太氏|WIT COLLECTIVE 共同経営者/AI事業統括 KOEL ディレクター
博報堂プロダクツ、ADKマーケティング・ソリューションズを経て、合同会社KOELを設立。クリエイティブ領域における課題の発見から企画立案、制作までを包括的に手掛ける。2023年より生成AIを使った映像およびグラフィック制作に着手。2024年7月、WIT COLLECTIVEにて、AIを使った広告及びコンテンツ制作サービス「DO/AI」の立ち上げにクリエイティブ統括責任者として参画。広告業界における新たなクリエイティブソリューションの提供に力を注ぐ。

広野 萌氏|一般社団法人デザインシップ 代表理事
ヤフー株式会社にて新規事業企画やモバイルアプリのUX推進を手掛けたのち、2015年に株式会社FOLIO(現SBIグループ)を共同創業。Chief Design Officer兼プロダクトマネージャーとしてオンライン証券を立ち上げる。2018年に一般社団法人デザインシップを設立し、カンファレンスやデザインスクールなどの事業を運営。2021年に株式会社フォルテを設立し、規制産業からエンタメ産業まで幅広く新規事業のデジタルプロダクト開発を支援。2021年より内閣官房IT総合戦略室を経てデジタル庁所属。
GMO DESIGN AWARD 2026とは?

今年で3回目の開催となるGMO DESIGN AWARDは、GMOインターネットグループが主催する、18〜29歳の若手クリエイター・デザイナーを対象としたデザインコンテストです。
2026年のテーマは「トキメキ」。制作プロセスのどこかでAIを活用した作品を、「プロダクト部門」「ビジュアル部門」の2部門で募集しています。
応募期間は2026年6月15日(月)〜9月30日(水)。
各部門の最優秀賞には賞金100万円、優秀賞には20万円が贈られ、賞金総額は250万円にのぼります。
審査員長を務めるのは、大阪・関西万博のデザインシステムを手がけたことでも知られる引地耕太氏(株式会社VISIONs CEO/クリエイティブディレクター)。
ゲスト審査員には、有馬トモユキ氏(日本デザインセンター 有馬デザイン研究室)、清水勝太氏(KOEL/クリエイティブディレクター)、広野萌氏(一般社団法人デザインシップ 代表理事 )が名を連ねます。
詳細・応募は特設サイトへ:https://gmo-design-award.com/
AI時代を彩る若いクリエイターの「現在地」
———広野さんは第1回から、有馬さんと清水さんは第2回から本コンテストの審査員を務めていらっしゃいます。今回も引き受けようと思われた理由をお聞かせください。

広野
GMOさんは僕が新卒の頃から「エンジニアの会社」というイメージが強かったのですが、そんななかで「デザインという領域で第一想起を取りにいきたい」というお話を伺ったんです。デザインに携わる者として、お手伝いしたいなと思ったんですよね。
僕自身も学生時代にアプリ開発コンテストへ出まくっていて、コンテストを機に出会った仲間とは今でも一緒に仕事をしています。そういう機会を自分でもつくれたらいいなと思ったのも、大きな理由ですね。

有馬
GMOさんのような大きい会社が何かをするということは、インターネット業界に小さくない影響力があるなと思ってまして。僕は90年代からインターネットの住民なので、「AI時代」と言っていい昨今にクリエイティブやデザインへ力を注いでいきたいという話には同調しましたし、応援したい気持ちがありました。

清水
AIを使った映像クリエイティブ自体がまだ黎明期にある分野なので、若い世代の現在地を知れるというのが僕にとっての大きなメリットでした。加えて、そうした若いクリエイターに賞をあげられることで何かしら役に立てるなら……というところですかね。

有馬
現在地を見たい気持ちは僕も強かったですね。去年の審査でも本当に面白いものがたくさん出てくるなと思いましたし、すごく希望が湧きました。
———3回目となる今回も、同じ気持ちで引き受けられたのでしょうか。

有馬
実を言うと、前回の運営についてはいろいろと課題を感じていたんです。今回の審査を依頼いただいた際にも、感じたことを率直に伝えさせていただきました。
そのうえで今回お受けしたのは、担当の方から「もっと良くしていくべく力を注いでいる」という話を直接伺えたからです。改善する意思があるのなら、ぜひご協力させていただきたいなと。今回の審査をお受けした理由はそこですね。

「AIに作らせる」ではなく「AIと共創する」
———昨年の受賞作で印象に残ったものを教えてください。

清水
映像で言うと、変わった映像やちょっと驚くワンカットをつくるとか、コンテンツをつくること自体にはもう意味がないと思っています。AIを使えば映像に携わったことのない人でもつくれるようになったので。だから、見ているのはその先、メッセージや脚本、演出ですよね。最優秀賞を受賞した平田茉莉花さんの『誰にも祝われない夜に』は、その観点で飛び抜けて良かったです。

受賞作品:誰にも祝われない夜に
受賞名:最優秀賞
作品詳細:https://gmo-design-award.com/2025/works/028.html
AIを用いて“孤独な一夜のつながり”を描いたアニメーション作品 。孤独に誕生日を迎えたナナと、子猫にミルクをあげたいアオが、灯りの消えた戦火の街で偶然出会う一夜を描く

有馬
僕はビジュアルよりコンテクストの側を見ていたので、寺山隼矢さんの『AI菩薩』はすごく良いなと。「イエス・キリストの代わりにAIが答えます」だと多くの問題があると思うんですけど、そうじゃない特有の「ゆるさ」がある。
ちょっと聞いてみて、今日はこんなところに気をつけて生活してもいいかなと思える。そこにハッピーな未来を見た気がしたんですよね。

受賞作品:AI菩薩
受賞名:審査員特別賞(コンテクストデザイン賞/マーケティングイノベーション賞)
作品詳細:https://gmo-design-award.com/2025/works/006.html
生成AIを「悩みに寄り添う存在」としてデザインしたプロダクトアイデア。寺の空間を模した画面でAI菩薩に悩みを相談できる、心を落ち着けるための体験を提案する。

有馬
ビジュアル部門では、松田華凌さんの『たまごやき』も印象的でした。中割りの線画を埋めるツールをAIでつくって作画支援に使うという形だったのですが、全部AIに作らせてもいいのに、アニメーションはあくまで手で描くんと。AIに作らせるんじゃなくて、AIと共創している感じがありますよね。僕はプロセスや衝動に近い部分に注目しがちなのかもしれないです。

受賞作品:たまごやき
受賞名:優秀賞(ビジュアル表現部門・学生)
作品詳細:https://gmo-design-award.com/2025/works/024.html
AIと手描きアニメーションを組み合わせた短編映像作品。AIに恋愛相談する女性と、正論だけを返すAIとのすれ違いを、独特な質感の映像表現で描く。
———今年は、どのような挑戦が感じられる作品に期待していますか。

有馬
実を言うと、審査員としてこうした問いには直接的に答えてはいけない気がしているんです。 それでもあえて踏み込むなら、「エゴが強いもの」でしょうか。ストーリーテリングとしても実用性としても、「これが絶対に必要だろう」と思ってやっている強い思いです。
「こうだったりして」ではなく「いや、これがなきゃダメでしょ」くらいの気持ちが入っているものは、多くの人に響くものがあるんじゃないかなと。

広野
僕は「社会実装されなければイノベーションではない」と思っているので、そういう意味ではリアルなものの方がいいなと。AIで何でもつくれる時代だからこそ、突拍子もないものは簡単につくれてしまいますし、そういうものは「面白いよね」の一言で終わってしまうんです。
でも、「社会に本当にありそうだな」「あってもいいよね」と思えるものの方が、僕はいいデザインだなと思いました。公開までのハードルも下がっているからこそ、多くの方が「ユーザーの反応を得るところまでがサービス開発」だと改めて思い始めているはずなので、今年もそういうリアルなものを見たいですね。

清水
海外のAI映画祭の受賞作品を見ると分かるんですが、もう世界ではAIかどうかは重要ではないんです。海外のクリエイターには「こういうことを表現したい」という思いがあり、お金やフィジビリティのハードルを突破するためにAIを使っているに過ぎない。
結局AIはツールの1つに過ぎないんですよね。だからこそ、映像としてメッセージ性や高い表現力のある作品に出会えるとうれしいです。


有馬
AIは障壁を突破するための手段だと言えますよね。
新たな文脈が生まれたとき、心は動く
———今回のテーマ「トキメキ」は、運営側が「人の心が動く瞬間」と定義しているものです。評価する立場として、このテーマをどう受け止められましたか。


広野
まず、常にときめいている人はいないわけですよね。日常があって、そこに異質なものを見たときに心が動くはず。だからこのテーマにおいては、「ちょっと便利だよね」というより、「確かにこういうの欲しかった」「この発想はなかった」と、驚きと気づきを与えてくれるものが評価されるんじゃないかなと。

清水
難しいテーマではありますよね。映像でいえば、心を動かすこと自体は大前提なんですよね。いい映像には基本的にときめきがあるからこそ、その先に何を込めるのかが問われるのかなと考えています。皆さんはどう考えていますか?

広野
僕はコンテクストの方を見るのが今回の役割だと思っているので、文脈や物事同士のつながりに納得感があるか、そこにワンダーがあるか、というところじゃないかなと。

有馬
広野さんが言ったコンテクストやつながりにも、心が動く瞬間は確かに存在しますよね。つながらないはずだったものがつながった瞬間に、ワンダーを感じる。そこには、まだ誰も見たことのない新しい文脈が生まれる余地もあると思っているんです。
———新しい文脈が生まれる瞬間に心が動く、ということですね。だとすると「あなたなりのトキメキをぶつけてください」というところに着地するのかな、と思いました。

有馬
僕が担当する賞(コンテクストデザイン賞)の観点でいえば、そう言ってもいいのかもしれないですね。審査員側も1つ1つの作品を積極的に理解しに行かなきゃいけない、という話でもありますね。

清水
応募者がアーティストだとしたときに、アーティストとして今のAIの現在地をどう解釈するか。そこは大事なポイントかなと思いますね。
———人の心を深く動かす作品には、何が秘められているのでしょうか。

有馬
抽象的な問いではあるので、正面から答えるのが難しいんですよね。それでいうと、アワードでは勝ちにくいものだって、人の心を深く動かす場合があります。
一見すると脆弱に見えるアイデアにときめきの種が隠されていて、それがだんだん育っていくことだってありますよね。でもそれを言った途端、賞としては非常に評価しづらくなる。

広野
有馬さんはよく何かにときめいていて、それを語るのがすごく上手なんですよ。好きなものがあって、それを語れるオタクというか。そして僕はそれに心を動かされている(笑)。僕も『化物語』というアニメがすごく好きなんです。もともと小説が好きで、あれは本という読み物でしかできない仕掛けをやっていた。だからアニメ化と聞いたときは、さすがに映像化は無理があるよなと。
でも実際は、アニメーションでしかできない手法で作品を表現していたんです。元の良さを活かすというより、「その媒体でしかできないこと」という本質だけを取り出して、アニメでそれを表現したんです。このこだわりと考え方が、すごく好きなんですよね。
こうやって好きなものを語れるアイデアやこだわりが、人の心を動かすデザインをされた作品にはあるはずなんです。周りの人が語りたくなるものが、結果的に感性を揺さぶるようなデザインだったといえるんじゃないかなと。

有馬
本質を見つめていったら思いもよらないものになった、みたいなところは、強いアイデアに存在してそうな気はしますね。その解釈で作ったことの結果としてそれを見た人が感動を覚える、みたいなこともあるんだろうなと。
———今回の対象は18歳以上30歳未満の若い世代です。ご自身がその年代だった頃に、やっておいてよかったと思うことはありますか。

広野
当時の僕はアプリコンテストやハッカソンに積極的に参加していたんですが、その経験が創作へのハードルを下げてくれたなと。今も土日にずっとアプリなどをつくっているんですけど、そういう自分を形成できましたし、仕事でもストレスを感じなくなりました。
あとはそこで出会った仲間ですね。懇親会で「あの作品めっちゃ良かったよ」と話して仲間になって、その後に趣味で一緒にプロダクトをつくる仲にもなったんです。若いうちにそういう人と友達になっておくのは、すごく価値のある時期だったなと思います。

清水
自戒も込めてですけど、人が遊んでいるときに汗をかくことですかね。僕がいま作品を審査する立場にいるのも、まだ誰もAIをやっていなかった頃から、日々コツコツとコンテンツをつくっていたからなんです。アウトプットを外に出していると、絶対に誰かが見てくれています。一周して、それが本質じゃないかなと。

有馬
ひたすら、自分が問題だと思ったことに立ち向かうことだと思います。最近CAD※を覚えて、視界に映るものは何でもモデリングできるぞ、という万能感がすごいんですよ。そうやって新しいやり方を覚え続けていると、ゲームで遊んでいるときでも観察眼が養われていくんです。いろんなクリエイティブを触って試してみる経験は、視点を増やしていきますよね。
- CAD:コンピューター上で製品や立体物の設計・モデリングを行うソフトウェア
最初の一歩は、ワンクリックから
———最後に、応募を迷っている方へメッセージをお願いします。

清水
本当に誰かが見ているので。日々の積み重ねでアウトプットしていると、必ず反応があります。めげずにやるしかないかな、という感じですね。

有馬
いっぱいつくって、いっぱい試すのがいいんですよ。出してみてから考えるぐらいで。
僕は大学で非常勤講師をやっていて、これまで一緒に仕事をした元生徒が何人もいるんです。そうなると、いい加減な仕事はできないなと強く思うんです。だから我々は皆さんの作品を真剣に見ますし、将来一緒に仕事をするだろうという前提で動くんです。
それこそ僕や清水さん、広野さんに作品を見てもらうこと自体が、彼ら彼女らにとって大きな一歩になるのかもしれませんよね。
———応募自体も、最後はワンクリックですしね。

有馬
ですね、本当に。購入ボタンを押す気持ちで(笑)。そういうちょっとした蹴り出しで「じゃあやってみるか」と思うかもしれないし、そういう小さな一歩で人は大きく変われる気がするので。

広野
そうですよね。とくにGMO DESIGN AWARD 2026は無料で応募できるので、つくりたいものが少しでもあるんだったら、ぜひ出してみるといいかなと。結果に関わらず、賞に出たという機会をうまく利用して友人や仲間を増やすことができれば、自分でも気づかない資産になるので。
あと、AI時代においては「誰がつくるのか」「なんでその人がつくるのか」がすごく大事になってきているので、そこを突き詰めるといいのかなと。「世間にウケそうだからつくりました」ではなく、その人がどういう背景や思いを持っていて、この作品が生まれたのかというストーリーですね。
まさにコンテクストデザインになりますけど、この要素はすごく大事だと思うんですよ。自分が普段思っていることから逆算してプロダクトに落とし込む……というのも、ファーストステップとしてはいいんじゃないかなと思います。

まとめ
AIによって、「つくる」ことへのハードルは下がり続けています。それでも取材の中で繰り返されたのは、「なぜその人がそれを作ったのか」という理由や背景でした。
エゴ、強い思い、周りが語りたくなること……。表現は違っても、それらが指すものは作り手の感性や意識そのものだといえるでしょう。そしてそれらをどう表現するのか、どういったサービスに落とし込むのかは、応募者1人1人にゆだねられています。
GMO DESIGN AWARD 2026の締切は2026年9月30日23:59です。あなたなりのトキメキを、ぜひ我々にぶつけてみてください。
また、GMO DESIGN AWARDの審査員長・引地さんのインタビュー記事もぜひあわせてご覧ください!
AIの最適解に「バグ」を起こせるか?GMO DESIGN AWARD 2026審査員長・引地耕太氏に聞く、AI時代におけるクリエイティブの価値

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