【Expert Cross #4・後編】「場づくり」を通じて新しい概念を組織に浸透。横のつながりと共に広がった「エキスパートとしての視野」

技術同人誌やアドベントカレンダーといったグループ横断の「場づくり」を通じて、GMOインターネットグループの技術文化を育ててきた石丸智輝さん。グループ全体を巻き込む活動は、石丸さん自身の技術との向き合い方にも変化をもたらしました。
後編では、AI活用を現場に定着させるための取り組みや、エキスパート活動を通じて広がったキャリア観、そして今後の展望について、石丸さんと上長の竹田敏導さんに伺いました。

前編はこちらから

新たな概念を根付かせる「場」のチカラ

———バイブコーディングやハーネスエンジニアリングなど、開発現場には新たな概念が次々と生まれています。エキスパートとして、こうした新たな概念を現場に浸透させるためにどういったことを行ってこられましたか。

石丸

新しいAIツールや技術を自ら触ってどんどん吸収していくメンバーが多いのですが、中にはどうしても新技術のキャッチアップや受容がなかなか追いつかないというメンバーもいます。生産性向上のためには、そういう方に向けて「AIコーディングエージェントをいかに日常の開発ワークフローへ組み込んでいくか」という仕組みを考える必要がありました。

今はAI活用の情報やノウハウに触れる機会を設けるべく、自分の部署・チームで週1回の事例共有会を開催して、バトン形式で全員がアウトプットしていくという取り組みを行っています。この会は新機能の情報や勉強会で学んだ事例、あるいは「自分のチームではこういう使い方をしています」といったことを共有し合う場です。

あわせて専用のSlackチャンネルを立ち上げ、AIコーディングエージェントのアップデート情報や社外勉強会での知見などを気軽にシェアできる場所もつくりました。新しいものを根付かせるためには、まずはこうした「気軽に触れる場所」を仕組みとして構築し、次にどれくらい使われているかをデータで捉えるという実態に即したアプローチが大切だと考えています。

データで捉えるという部分では、GitHubのメトリクスを用いて、メンバー別・チーム別に「どのエージェントをどれくらい使っているのか」という活用状況を可視化する仕組みを構築しました。

「客観的な指標を手がかりにしながら、自らの活用率を上げていく」というサイクルを作る取り組みの一環だったのですが、この可視化でかなりメンバー自身の意識づけが進んだようで、どんどん利用状況が広がっていったんですよ。これはとくに効果があったと手ごたえを感じています。

本格的な検証やアプローチこそこれからですが、そのなかで得られた定量的な結果をもとに新たな技術を現場へ定着させられるよう進めていきます。

「AI活用のモデルケース」をグループの内外へ

———グループ全体で見たときに、AI技術の導入具合はいかがでしょうか。

石丸

グループ全体での生成AI業務活用率は、2026年3月に実施した社内調査の時点で97.8%に達しており、文字通り「ほぼ全員が日常的にAIを使っている」状態です。AIエージェントの業務活用率は7割を超え、パートナー(社員)1人あたり月間約54時間の業務削減を実現しています。

私がよく関わる非エンジニアのメンバーからも、業務効率化のAIエージェントを自ら構築して活用する事例が次々と生まれているんです。エンジニア・非エンジニアを問わず全員が活用していく環境は、業界のなかでもかなり整っているという実感があります。

———竹田さんは、AI活用という観点で石丸さんにどういった期待をされていますか。

竹田

技術的にできるかどうかは、まったく心配していません。非エンジニアにもわかりやすく技術解説をする連載を担当できるエキスパートですからね。

そのうえで開発プロジェクトをリードする立場として期待したいのは、これまでのAIによる効率化やガバナンスへの配慮に加えて、コスト制約やトークンマネジメントといった経済的な合理性も含めた「最適な開発プロセス」を整えることです。

これまではサブスクリプションである程度自由に使えていたものが課金の対象になってくるなか、この経済合理性を意識していかないと、開発コストだけが膨らんでしまうという状況になりかねません。

今後は「誰がどれくらい使っているのか」「トークンを多く使っている人はなぜそうなっているのか」をモニタリングしながら、その使用量が成し遂げるものに対して適切かどうかを随時判断していく必要があるわけです。ここはまだみんな手探りの状態で、どこに適切なラインがあるのかを探っている段階だと思っています。

そうした現場の経験も踏まえて整えた「安全かつ効果的なAI活用の手法」を、エキスパートとしてグループ横断に広げていってほしいですね。そのうえで、社外に向けても大いに広報していただければと期待しています。

石丸

最新情報をしっかりキャッチアップしながら、使っているツールを正しく理解することが「安全かつ効果的なAI活用の手法」への第一歩になるように思いますね。

たとえばClaude Codeにはプランモードというものがありますが、計画は賢いモデルに任せたうえで、実装は別の最適なモデルに切り替えて実行する……といった形で、モデルの使いどころを見極めるだけでも消費するトークンは大きく変わります。

日々最新の情報をキャッチアップしたり、他社の事例を追いかけたりしておけば、何も考えずに賢いモデルを使い続けてトークンを消費してしまうということもなくなるかなと思いました。

エキスパート活動が広げる「キャリア観の視野」

———エキスパート活動を通じて、石丸さんご自身の技術への向き合い方やキャリア観に変化はありましたか。

石丸

自分だけではなく、GMOインターネットグループ全体に還元できるか、他のエンジニアをどう巻き込むかを考えるようになりましたね。

以前は「どうすればより良いコードが書けるか」「どうすればシステムを安定させられるか」と、目の前の開発に集中する傾向が強かったと感じています。ツールの活用や発信においても、自分が担当している業務やサービスをどうより良くするか、そのためにどういうツールを活用して、どういう発信をしたらいいのか、という視点でした。

それが今は、「この技術的知見をどうすれば組織の資産にできるか」「どう発信すればGMOインターネットグループ全体の技術ブランディングにつながるか」という、組織全体を見据えた俯瞰的な視点で技術と向き合うようになりました。

そして技術同人誌やアドベントカレンダーといった企画を通じて横のつながりを広げるなかで、「どういう文化を作ったらいいんだろう」「どういう文化があれば各社のつながりを広げられるんだろう」という視点もまた横の広がりを得られたと感じます。

1人のエンジニアとしての専門性だけでなく、コミュニティの運営や技術広報としての視点も加わったことで、自分自身の役割やキャリアに対する視野が大きく広がった実感があります。

———竹田さんから客観的にご覧になって、変わったと感じる部分はありますか。

竹田

人となりや姿勢は新卒当時からできあがっていましたので、正直なところ「本人が大きく変わった」という印象はないんですよ。エキスパートという肩書を得たことでやれることが増えたので、本人の持つ力を発揮する場を得ているというイメージですね。

たとえば旧GMOアドパートナーズに所属していた頃は、単独では技術書典への出展等の活動もできなかったと思うんです。エキスパート就任後はグループ内のさまざまな人と接する機会が増えましたから、影響力の範囲や実行できることの範囲が明確に広がっています。

それがグループ全体のアウトプットを増やすことに貢献してもらっている部分じゃないかと感じています。

「深い」発信を通じて、ブランドを確固たるものに

———GMOインターネットグループには多分野のエキスパートが在籍しています。「他のエキスパートの領域と自分の領域を掛け合わせてこういうものをつくりたい」といった展望はありますか。

石丸

これまで続けてきた技術同人誌の取り組みを、もう一段階レベルアップさせたいと考えています。

現在は技術的な内容ならなんでもOKというテーマフリーのアンソロジー形式なのですが、技術書典への出展自体は形になってきましたので、次は特定の領域やテーマに特化した技術同人誌の制作に挑戦したいですね。

AI活用やWebアプリケーション開発、セキュリティなど、多くの分野で先頭に立っているエキスパートが複数在籍しています。そこで各領域のエキスパートと連携して、「生成AI×開発プロセスの進化」や「AIエージェントの現場活用」といった、1つのテーマを深く掘り下げた専門性の高い1冊を作れれば非常に面白いなと。

セキュリティに特化した専門書籍のようなアウトプットの形も考えられます。こうした形でテーマを絞ることで、その技術に興味を持つ社外のエンジニアに対して、より深く、より魅力的にグループの技術力をアピールできるはずです。

多分野のエキスパートが在籍しているからこそ実現できる、「領域の掛け合わせによる分厚いアウトプット」を形にしていきたいですね。2025年末のアドベントカレンダーには7〜8名のエキスパートに協力いただけましたので、決して実現できない話ではないと思っています。

———今後取り組んでいきたい領域や施策についてもお聞かせください。

石丸

まず次回のイベント出展に向けて、7冊目となる新たな技術同人誌の制作を進めていきます。同時に外部企業様との合同イベントや、年末恒例のグループ横断アドベントカレンダーを開催し、エンジニアがアウトプットできる場をさらに広げていく予定です。

また今は週1回のレベルにとどまっている共有会の頻度も、もっと増やしていきたいですね。そして先行しているチームの取り組みを他のチームにも導入し、組織全体の生産性を向上していきたいと思っています。

長期的には、これまでの技術同人誌制作などの取り組みを社外の技術広報コミュニティの勉強会などで自ら発信していきたいと考えています。技術同人誌を制作するまでの過程や、出展することでどういった影響があったのかといった話は、他社の技術広報を担当されている方にも興味を持っていただける内容だと思うんです。

こうした活動を通じて、アウトプットしていきたいのに場所がない・しづらいと感じている方がいなくなるように、気軽に発信できる場所と環境を整えていきたいんです。1つ1つの活動の積み重ねで「GMOのエンジニアは最近よく発信しているな、いい会社だな」と社外の方に見ていただけるようになれば、広報にも採用にもつながっていきます。そういった土台を作るのは、エキスパートだからこそできることなんです。

これまではエンジニアのコミュニティが中心でしたが、技術広報のコミュニティにも参加して、そこでも横のつながりをつくっていきたいなと。各種コミュニティでの存在感を高め、GMOインターネットグループの技術ブランドを確固たるものにしていければと考えています。

文化を定着させ、横のつながりで会社同士の連携を高める

———エキスパート制度自体の認知拡大にあたっては、何が必要になるのでしょうか。

石丸

「継続」と「可視化」だと思います。私の場合は技術書典への出展やアドベントカレンダーを「毎年恒例の文化」としてしっかり定着させることに加え、技術書の配布数や採用への直結といった「定量的な成果」を組織の内外に示し続けることが、制度の価値向上や認知拡大につながると信じています。

技術ブログや社内のポータルでエキスパートの活動実績を発信していくことも含めて、まずは社内外を問わず発信し続けることが必要ですね。この記事が公開されることで、グループ内で技術書典やアドベントカレンダーといった活動の存在を初めて知る人もいるはずなので、このインタビュー企画もまさにその1つだと思っています。

竹田

発信を増やすことは前提としてありますが、自発的に情報を取りにいく層はどうしても限定的になってしまいます。ですので、社内イベントなども含めて「プッシュ型」で届ける機会が要るのかなと。

技術広報という観点では、グループ内でもまだ情報連携できていない部分があるように思っています。各社の技術組織や広報組織と連携することで、グループの技術的なアウトプットをより効果的に拡散できそうですので、横のつながりを広げてもらえるとより良いですね。ここは今後の石丸さんに期待したい部分です。

石丸

まさに自分が課題として挙げた部分ですね。技術同人誌をはじめ、社外に対しては配布数などの数字として結果が出はじめている一方で、GMOインターネットグループ全体に波及させるまでにはまだまだ課題があると思っています。

まずはエキスパートとしてこういう活動をしているということをグループ内に知っていただいて、そこにグループ各社の方が協力いただけるような仕組みをつくり、横のつながりをさらに強化していく必要があると改めて感じました。

———最後に、この記事をご覧になっている方へメッセージをお願いします。

石丸

まずグループのパートナーの皆さんに向けては、今後も技術を「自分だけのもの」で終わらせず、皆さんが楽しくアウトプットできる場を作り続けて、GMOインターネットグループ全体の技術文化を盛り上げていきたいと考えていますので、ぜひご協力いただけると嬉しいです。

社外の方に向けては、引き続き技術書典をはじめとする外部イベントへの出展を続けていきます。会場でお会いした際は、ぜひお気軽に声をかけてください!

竹田

技術広報は個人の努力では限界がある領域ですので、理解者・協力者がまだまだ必要です。その第一歩として、ぜひ「GMO Developers & Creators」の拡散をお願いします!

まとめ

「場をつくり、文化として根付かせる」という方法論は、AIという新しい概念に対しても同じように機能していました。エキスパート活動を通じて視野を広げた石丸さんが次に見据えるのは、多分野のエキスパートとの掛け合わせによる、より深いアウトプットです。

技術を自分だけのものにせず、誰もが気軽にアウトプットできる場をつくることで集合知へ至る仕組みとその積み重ねが、GMOインターネットグループの技術文化を形づくっていきそうです。

ブログの著者欄

技術広報チーム

GMOインターネットグループ株式会社

イベント活動やSNSを通じ、開発者向けにGMOインターネットグループの製品・サービス情報を発信中

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