【Expert Cross #4・前編】技術同人誌からアドベントカレンダーまで。「場づくりの名手」が促進する技術文化

優れた技術を持つエンジニアが社内に大勢いても、互いの存在を知らないままでは、組織としての力にはつながりません。会社の枠を越えてエンジニア同士がつながり、アウトプットが自然と生まれていく……そんな文化を育てる「場」をつくっているのが、GMOインターネット株式会社・システム本部連結情報システム部に所属するGMOインターネットグループエキスパートの石丸智輝さんです。
GMOインターネットグループでは、業界全体の発展に寄与しつつグループ全体の技術力・クリエイティブ力を牽引し、技術広報活動に貢献するパートナー(社員)を支援する「エキスパート制度」を運用しています。
エキスパートには活動費として最大で年間100万円が支給され、その資金を研究用のデバイス購入・イベント主催における飲食・運営費などの諸費用にあてることで、個人の技術研鑽とともにグループブランド向上に寄与するべく広報活動を行っています。
本記事では、エキスパートとして活動する石丸 智輝さんと、石丸さんの上長であるGMOインターネット株式会社・システム本部連結情報システム部で部長を務める竹田 敏導さんに、石丸さんがエキスパートになった経緯やこれまでの活動、そこから生まれた成果と課題について伺いました。

エンジニアの「ハブ」として、横断的な文化醸成を促進

———まずは、お二人のご経歴をお聞かせください。

石丸

私は2016年にGMOアドマーケティングへ新卒で入社しました。インターネット広告の自社サービスを展開する会社でしたので、入社以降は自社の広告配信サービスの開発や運用保守を担当してきました。現在は自社サービスの開発や新規事業の立ち上げにも携わりながら、リーダーとして開発チームや組織のマネジメントも担当しています。

エキスパートとしては今年で3期目です。主にグループを横断したアウトプットの仕組みづくりや、社外への発信などに取り組んでいます。

竹田

私は2011年にJWord(現GMOインサイト)へ入社しました。2023年にGMOアドパートナーズへ転籍し、会社合併の流れを経て、現在はGMOインターネットのシステム本部 連結情報システム部で部長を務めています。

———石丸さんが2024年にエキスパートへ立候補された理由と、活動を継続されている理由をお聞かせください。

石丸

GMOアドマーケティングに在籍していた当時から、エキスパートのミッションの1つでもある、技術広報や文化づくりの取り組みにも携わっていたんです。具体的には、技術ブログの運営や社内外の技術イベントの企画・登壇、社内のLT(ライトニングトーク)大会という技術発表会の運営や社内コミュニティの醸成などをやっていました。

その経験を通じて、エンジニア同士がつながる場をつくること、そしてアウトプットの場をつくっていくことに、すごくやりがいと面白さを感じるようになったんです。

そしてグループ内での転籍などいろいろな経験を積むなかで、「自分が所属する会社の枠を超えて、グループ全体でより影響力の大きい活動に挑戦したい」という思いが出てきました。

エキスパート制度ができたのはまさにその思いを抱えていた時だったので、「多くのグループ会社がある環境だからこそ、各社のエンジニアが気軽に横のつながりを持てるハブになりたい」と考え、立候補したという流れです。「エキスパートという肩書があれば、グループを横断した企画に取り組みやすい」と聞いたことも背中を押しました。

現在はそれぞれの知見を結集させてグループ全体の技術的な発信力を強化し、「横断的な技術文化」を醸成することに全力でコミットするべく活動しています。

———エキスパートとしての具体的な活動内容をお聞かせください。

石丸

いろいろな活動をしてきたのですが、大まかに分けると「グループ横断でのアウトプット創出」「対外的な発信」の2軸です。なかでもとくに時間を割いてきたのが、アウトプット創出としての技術同人誌「Good Morning」の制作ですね。

これはGMOインターネットグループ横断でエンジニアが関わっているのですが、毎年2回行われている国内最大級の技術同人誌イベントである技術書典に約3年にわたって出展、これまでに累計6冊を制作してきました。2026年4月の技術書典20では、オンラインも含め1,500冊以上を配布しています。

技術書典18からは、GMOインターネットグループがトップのゴールドスポンサーとして継続出展しています。現在はテーマフリーのアンソロジー形式で、グループ各社のエンジニアが各自のテーマを持ち寄る作り方です。

毎年12月に行っているアドベントカレンダーも力を入れている取り組みです。エキスパート就任をきっかけにグループ横断で企画し、約10社を巻き込んで合計25記事を公開しました。技術ブログのアクセス数も大幅に伸びましたし、2年連続の開催で「年末の恒例行事」になりつつあります。

2025年末のアドベントカレンダーでは、7〜8名のエキスパートの方にも執筆協力いただきました。会社や領域を越えて巻き込んでいく第一歩になったと思います。

こうした取り組みは、1回限りで大きな効果を生むことは基本的にありません。毎年継続していくことで、文化をどんどんつくっていきたい……という思いが、3期連続で活動を続けている理由です。

技術書典 出展レポートはこちらから

———対外発信の面では、非エンジニア向けの連載企画が大きな反響を呼んだと伺いました。

石丸

「窓の杜」様で掲載された連載記事ですね。非エンジニアの方がバイブコーディングでアプリケーションを制作するという内容で、私は講師役として参画しました。どういったツールをどう安全に使うのか、APIキーをどう管理するのかといった、非エンジニアの方には分かりにくい実務的な部分まで踏み込んだものになっています。

反響は想像以上でしたね。初回の記事は週間アクセスランキングの上位に入り、Xでも話題になりました。GMOインターネットグループの中でもこの企画はかなり認知されていたようです。非エンジニアの方が業務効率化のためにClaude Codeなどを使ってツールを作ることもよくあるのですが、「記事を見ました」と個別に連絡や相談が来るようになりました。

「非エンジニアが取り組むバイブコーディング」自体がトレンドになっていたなかで、実際に現場で使っているエンジニアがアドバイスして、ちゃんと1つの形になるものを作るところまでフォーカスした記事は新しさがあったと思いますね。非エンジニアがつまずきやすかったりハードルの高さを感じたりするところまで、体系的にまとまった記事が他になかったのもこうした反響を呼んだ原因だろうなと。

結果的に、Claude Codeやバイブコーディングに関する個別のレクチャーや相談に乗る機会も増えましたね。社内でAI活用に向けた身近なサポートができる機会が増えてきたのはうれしい限りです。

「自分で切り開ける」エキスパートとしての実行力

———竹田さんから見て、石丸さんのこれまでの活動はどのように映っていますか。

竹田

石丸さんのいたGMOアドマーケティングと私が在籍していたJWordは同じGMOアドパートナーズの連結だったので、石丸さんが新卒ながらバリバリと広報活動に取り組む姿は当時から傍目に見ていました。落ち着いた物腰でありながら、伝えるべきことはしっかり伝える。若いうちからどんどん周囲との信頼関係を築いていましたね。

石丸さんは、アドマーケティング時代にはLT大会の企画はもちろん、連結内の技術連携も務めてくれていました。TECH BLOGについても、アドベントカレンダーのような企画だけでなく運営自体をしっかり実行していて、アクセスの定点観測をしたうえで向上のための施策を打ち出してくれていました。「お祭り」的な企画にとどまらない地道な運用まで担っていたのが印象的でしたね。

エキスパートとしては3期目を迎えますが、技術広報の拡大という面で、本当に着実に活動の根を広げてくれています。技術書典の出展では毎年配布数を伸ばしていますし、派手な成果ではないものの、着実にグループブランドの向上に寄与してくれていると思います。

———上長として、活動に対して要望を出される場面はあるのでしょうか。

竹田

ほとんどありませんね。2025年に旧GMOアドパートナーズと本体事業が合併する際、「連結のTECH BLOGをどうしましょうか」という相談があり、本体の「GMO Developers & Creators」へうまく合流していくところをお願いしたぐらいです。それ以外は基本的に本人に任せていますし、エキスパートとしての可能性を自分で切り開いてくれています。

———石丸さんが活動を続ける原動力はどこにあるのでしょうか。

石丸

組織に文化が根付いていく過程を、実際に自分の目で見られることが最も大きなモチベーションですね。

たとえば技術書典を例にとると、繰り返し出展していると外部のエンジニアの方から「前回のイベントでもGMOの技術同人誌をもらいました!」と実際に声をかけていただく機会もよくあるんです。参加するメンバーは毎年増えていますし、自分がきっかけをつくったものが文化として定着してきていることが、とてもやりがいがあって嬉しいところです。

技術書典やアドベントカレンダーはせっかく横のつながりができる機会なので、単純に出展・企画をして終わりにせず、終わった後の懇親会や打ち上げまで企画しているんですよ。同じグループでも普段はなかなか話す機会がないエンジニア同士が、懇親会で耳を傾けていると「うちのサービスはこうで、こういう課題があって」と語り合うんです。

そうした意味のあるコミュニケーションが実際に生まれていて、場をつくってよかったなと思う機会がたくさんあることが大きな原動力になっています。自分が場をつくったことで他のエンジニアのモチベーションが上がり、横のつながりが広がり、アウトプットが世に出ていく。その循環を生み出せることが何よりの喜びです。

裾野を広げ、採用から文化づくりまでより大きな影響を

———これまでの活動を振り返って、うまくいったと感じる点をお聞かせください。

石丸

技術書典への出展を繰り返すことで文化が定着したことはもちろんですが、そこで来場した方からフィードバックをいただけたり、アドベントカレンダーでは開催期間中にアクセス数が大きく伸びたり……といったところはうまくいった点ですね。

私がエキスパートとして関わった外部企業との合同イベントから、エンジニアの採用につながったことも大きな成功体験でした。他企業との合同イベントをきっかけに、GMOインターネットグループに強い関心を持ってくださった方が、グループ企業の中途採用に応募してくれたんです。

技術広報の重要な目的の1つである「採用」につなげるところを実現できたのは、昨年で一番の成果だったなと。

竹田

高度人材の採用はグループ全体の課題であり、この種の活動から大量に成果を出すのはなかなか難しい領域です。だからこそ、本当に優秀な人材にこの活動が刺さって採用に結びついたというのは素晴らしい成果だと考えています。

———エキスパートとしての活動に、難しさや課題を感じている部分はありますか。

石丸

グループ各社を巻き込むにあたって、会社ごとの業務状況を考慮したルールの整備や調整をする必要があるのですが、そこに難しさと責任を感じてますね。

最大の課題は「裾野」です。アドベントカレンダーを例にとると、もともと各社で技術ブログを持っていて発信文化が根付いている会社もあったため、25名を集めることにはあまり苦労していませんでした。一方で技術同人誌の執筆者は毎年5名ほどで、直近は毎年同じ方が執筆してくださっている状態なんです。

毎回前向きに執筆に協力してくれるメンバーがいることは本当にありがたいのですが、誰もが気軽に参加できるアドベントカレンダーと比べ、技術書の執筆はそもそも活動をグループ内に知っていただくところから始めなければなりません。これがまだ「裾野を広げきれていない」部分ですね。

また、アドベントカレンダーにも伸ばす余地はあります。同業他社には25記事どころか100記事規模で展開している企業様もありますし、3,000名以上のエンジニア・クリエイターが在籍するグループとして、合計25記事は少ないんじゃないかと。もっと拡大できるはずだと思うんですよね。

裏を返せば、グループ内にはまだ表に出ていない素晴らしい技術やエンジニアがたくさん眠っているということでもあります。

ちょうど次回の新刊制作もこれから動き出すところなので、より多くの方に活動を知っていただきたいと思っています。「これなら自分も書いてみたい」と気軽に執筆へ一歩踏み出せる仕組みづくりを、技術広報チームの方々と連携して進めているところです。

まとめ(前編)

技術同人誌にアドベントカレンダー、そして大きな反響を呼んだ連載。エンジニアがつながる「場」をつくり続け、採用という成果にまで結びつけた石丸さん。竹田さんが「自分で切り開いてくれている」と評する実行力の先には、「裾野の拡大」という次の挑戦が見えています。

累計6冊の技術同人誌、1,500冊以上の配布、25記事のリレー、そして1名の内定者。数字の裏にあるのは、「1度きりの取り組みでは大きな効果を生まない」という継続への信念です。石丸さんの活動は個人の熱意を組織の力に変える、エキスパート制度の価値を体現するものと言えそうです。

エキスパート活動がもたらしたキャリア観の変化や、今後の展望などについて伺った後編もぜひご覧ください!

後編はこちらから

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技術広報チーム

GMOインターネットグループ株式会社

イベント活動やSNSを通じ、開発者向けにGMOインターネットグループの製品・サービス情報を発信中

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