こんにちは!暗号のおねぇさんことGMOコネクト(GMOインターネットグループ エキスパート)の酒見です。
2026年3月7日、情報処理学会の講演イベント「IPSJ-ONE 2026」に登壇しました。コンピュータセキュリティ研究会(CSEC)からの推薦をいただき、「クレジットカード不正利用と戦う!秘密計算×AIの挑戦」というテーマで発表しましたので、そのお話をさせていただきます!
今回は、ドレスコード的にいつものGMOパーカー姿ではなかったのですが、「今日は、GMOファッションじゃないの?」と何名かの方から突っ込まれました(笑)。次回はGMOファッションで登壇したいと思います!
目次
IPSJ-ONE 2026 とは

IPSJ-ONEは、情報処理学会の各専門研究会が推薦した研究者・技術者や自薦により選ばれた登壇者が参加できる講演イベントです。AI、ネットワーク、セキュリティ、量子コンピュータなど多彩な分野のトップランナーが5分間のショートトークで一堂に会します。
今年のIPSJ-ONE 2026は、3月7日に松山大学で開催されました。会場を提供いただいた松山大学は情報学部が新設されたことで話題です。

会合では、11の研究会から推薦された12名に加え、特別企画のスペシャルゲストとしてYouTubeチャンネル『ラムダ技術部』のラムダさんが登壇され、計13名のスピーカーによるセッションとなりました。司会・進行は慶應義塾大学の鳴海紘也先生、東京大学の河口理紗先生が務められました。
IPSJ-ONE 2026の詳細は公式ページをご覧ください。
当日のIPSJ-ONEの様子はYoutubeで公開されていますので、ぜひ試聴ください。
2時間ありますが、当日、現場で見た感じでは、みなさまご自身の研究テーマをとてもわかりやすく、かつ、肝の部分はしっかり伝わるように工夫されて発表されていて、わたしも楽しく聴講させていただき、あっという間の2時間でした!
では、講演内容に入っていきましょう
クレジットカード不正利用 — 年間555億円の被害
まず知っていただきたい数字があります。555億円。これは2024年の日本国内におけるクレジットカード不正利用の被害額で、過去最悪を記録しました(日本クレジット協会調べ)。2025年は510.5億円と前年比で約8%減少しましたが、3年連続で500億円を超えており、依然として深刻な状況が続いています。
フィッシング詐欺やアカウント乗っ取り、ネット通販での「なりすまし購入」など、手口は年々巧妙になっています。ネットショッピングが当たり前になった今、もはや誰もが被害者になりうる身近な問題です。
データを合わせれば見つけられる、でも共有できない
不正利用を防ぐには、AIによる検知が有効です。しかし、AIの性能を高めるにはデータの量と質が欠かせません。
店舗はそれぞれ自社のデータを持っています。複数の店舗がデータを持ち寄ることができれば、もっと精度の高い不正検知ができるはずです。でも現実には、機密保持やプライバシーの壁が立ちはだかります。「みんなでデータを持ち寄りたい、でも…」というジレンマです。

秘密計算×連合学習で壁を越える
ここで登場するのが、秘密計算(Secure Computation)と連合学習(Federated Learning)の組み合わせです。
秘密計算は、データを暗号化したまま計算できる技術です。たとえるなら、クラスの全員がテストの点数を秘密にしたまま、平均点だけを計算できるようなイメージです。中身を誰にも見せることなく、計算結果だけを得ることができます。
連合学習は、データを一箇所に集めずに、各社がそれぞれの手元にデータを置いたまま、AIモデルを共同で学習する手法です。
この二つを組み合わせると何ができるか。各店舗がローカルでAIモデルを学習し、暗号化されたパラメータだけをサーバーに送ります。サーバー側では秘密計算で安全にパラメータを集約し、統合モデルとして各社に戻します。生データは一切外に出ません。暗号化されたパラメータだけが行き来する、という仕組みです。

検証の目的
私たちの検証では、店舗のデータを一切開示することなく機械学習を実行でき、不正検知への秘密計算の有効性を確認することを目的としています。データを守りながら不正と戦えることが示せるよう、GMOインターネットグループやGMOペイメントゲートウェイで連携し、グループ内の力を結集して鋭意、検証を進めています。
技術はある、では何が足りないのか
技術としては、とてもすばらしい技術だと思いませんか?
でも、秘密計算の技術はまだまだ社会に浸透していません。
わたしは学生のころから研究に携わってきましたが、高い技術が提案されているものの、なかなか社会で活用されているケースが少ないことにもやもやしていました。
発表の中で私が最も伝えたかったのはこの部分です。
実社会に届けるには3つのカギが必要です。1つ目はすばらしい技術。これはご参加いただいたみなさまをはじめとして、研究コミュニティがすでに作り上げてくれています。2つ目は仲間作り。技術の意義を企業や業界に理解してもらい、一緒に取り組むパートナーを増やすこと。3つ目は相互運用と標準化。複数の事業者が連携するためのデータ形式やルールなど、共通基盤を整えること、そして、それを世界で利用するために国際標準化することです。
技術を軸に、未来を動かそう

発表のクロージングではこんなメッセージをお伝えしました。
「すばらしい技術をもって、外にお出かけして、仲間と標準を作り、一緒に未来を動かしていきましょう✨」

私はこれまで高機能暗号の研究・実用化に取り組んできましたが、先端研究を社会課題に届けていくことの大切さを日々感じています。秘密計算×AIで、プライバシーを守りながら不正利用を防ぐ未来。技術は社会を守れると信じて、引き続き取り組んでいきます。
おわりに
対外活動の場では、どうしても同じ分野の人と交流することが多くなりがちですが、IPSJ-ONEのようなイベントは、異分野の人と交流できる貴重な機会だと感じました。発表後も、他の登壇者や聴講者の方から声をかけていただき、嬉しかったです。
セキュリティ技術やプライバシー保護技術の社会実装に関心がある方は、ぜひお気軽にお声掛けください。
GMOコネクト株式会社(GMOインターネットグループ)では、暗号技術やセキュリティ技術を活用した社会課題の解決に取り組んでいます。お問い合わせはこちらから。
謝辞:本研究の一部は、内閣府SIPプログラム「先進的量子技術基盤の社会課題への応用促進」(管理法人:QST)の支援を受けて実施しています。
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