【第4回・AI TALK】GMOインターネットグループ・石丸智輝さんに聞く、AI時代に「人が書く意味」

AI活用の事例や取り組み、技術的な展望を深掘りする「AI TALK」。第4回のゲストはWebアプリケーションの開発エンジニアとしてのバックグラウンドを持ち、現在は新規サービスの立ち上げや開発組織へのAI導入を推進する、GMOインターネット株式会社 システム本部・連結情報システム部の石丸智輝さんです。
GMOインターネットグループのエキスパートとしても活躍する石丸さんは、技術書典への出展やアドベントカレンダーなどさまざまな企画を通じて、GMOインターネットグループの技術広報と業界全体の発展に貢献する活動を行っています。
今回はそんな石丸さんに、開発現場のAI活用とエキスパートとしての発信の両面を伺いました。進行はGMOペパボ株式会社・取締役CTOの栗林健太郎(以下、あんちぽ)が務めます。

フルスタック開発の現場から、AI活用の推進役へ

あんちぽ

デベロッパーエキスパートには、グループを代表する技術力を内外にアピールしていくという重要な役割があります。その中でも石丸さんは、AI活用をいかに成果へ結びつけるかというところと、社内外へのアウトプットの両面で活動されている方です。まずは自己紹介をお願いします。

石丸

GMOインターネット株式会社の石丸です。2016年に新卒でGMOアドマーケティングに入社し、入社以降は、Webアプリケーションエンジニアとして、自社の広告配信システムの開発や運用保守を担当してきました。現在は自社サービスの開発や新規事業の立ち上げにも携わっています。エキスパートとしてはWebアプリケーションを専門領域としつつ、エンジニアのコミュニティやグループ内の「横のつながり」づくりに注力してきました。

具体的な取り組みとしては、技術同人誌の即売会である「技術書典」への出展や、GMOインターネットグループ横断で取り組むアドベントカレンダーの企画などを行っています。直近では「窓の杜」にて、非エンジニアの方がバイブコーディングでWebアプリケーションを作るという連載に、講師役として参加させていただきました。

あんちぽ

デベロッパーエキスパートはAIやIoTなどそれぞれ専門領域がありますが、石丸さんはWebアプリケーションという幅広い名乗りを挙げていますよね。中でも一番得意なものは何ですか?

石丸

専門領域としては、フロントからバックエンドまで広くカバーするフルスタックなWebアプリ開発ですね。その中でも特に意識してきたのが、アプリケーション層のパフォーマンスチューニングです。GMOアドマーケティング在籍時はRuby on Railsを活用して、インターネット広告のダッシュボードを開発していました。

直近は新規サービスの立ち上げ・開発や開発組織へのAIコーディングエージェントの推進を担当していて、下半期は開発チームへのハーネス導入を目標に設定しました。

あんちぽ

石丸さんのチームでは、メンバーの90%がAIを活用していて、週に数時間の開発時間短縮を実現したという話でしたよね。今はどのあたりまで来ていますか?

石丸

私が所属するチームはエンジニア約15名の規模なのですが、現在は全員がClaude Codeを活用できている状態です。

定量的な成果としては、GitHubのメトリクスを定期的にBigQueryへ上げて、コミット数やプルリクエスト数を集計しています。Claude Codeのようなコーディングエージェントがなかった2024年当時と比較すると、1人当たりのプルリクエスト数は約13倍になりました。

あんちぽ

13倍はすごいですね。

石丸

ただ、この増加分に寄与しているのはほとんどが新規立ち上げのサービスなんですよ。そちらはレビューもAI活用が進んでいて、ハーネスによって設計・実装・テスト・プルリクエスト作成までの工程を、人があまり介在せずに進められる開発体制が整っています。

現在はAIマーケティング支援領域の新規サービスに注力しているので、新規開発でのアウトプットが多くなっているという事情もあります。既存サービスについてもハーネスの導入検証を進めている段階なので、しっかり検証を行ったうえで広げていきたいですね。

AIO&LLMOのカギは「やるべきことをやる」

あんちぽ

最近はどんなサービスを立ち上げているんですか?

石丸

従来のSEOに対して、生成AIの回答や検索に対応するAIO(AI Optimization)やLLMO領域のプロダクト開発にチームで取り組んでいます。たとえば先日リリースされた総合AIO対策ツール「GMO AI最適化ブースト」は、企業や商品が各種AIにどう参照されているかを可視化・分析するサービスです。お客様からの反響やご相談も非常に大きいですね。

他にもさまざまな新規サービスを立ち上げていますが、これらを少人数のチームで1〜2ヶ月というスピード感でリリースできているのは、今までだと考えられなかったことです。このスピード感はまさにAIあればこそですね。

あんちぽ

最近は検索エンジンからトラフィックを流してもらう時代から、AIの回答で完結してユーザーもあまりリンクを踏まなくなってきている時代へと移り変わっていますよね。エンジニアの観点から、AIOをどう考えていますか?たとえば「メディアの作り方はこう変わりますよね」とか、AIに最適化するならテクニカルにこれが効きますよ、とか。

石丸

そうですね。私自身も自社の技術ブログを運営しているのですが、生成AIの登場以降、検索からの流入が分かりやすく減少しているのを肌で感じています。

かつては技術的な疑問があれば検索エンジンで調べていたのが、今はコーディングエージェントと対話して解決することが当たり前になりました。ここはエンジニアの皆さんも実感されているところだと思います。

最近は複数の生成AIサービスに同じプロンプトを投げ、どのようなページが引用されているかなどを継続的に観測しています。

詳細はお伝え出来ませんが、たとえば「情報が正しく構造化されているか」「曖昧さを残さず、断定的な書き方になっているか」といった、AIに参照されやすいフォーマットの共通点も見えてきています。情報収集の主役がAIへシフトしているからこそ、参照されるためには本質的な質の高さが重要になるでしょうね。

あんちぽ

AIだから特別なテクニックがあるというよりは、正しい理解のもとに断定的に書いたりその店の良さを打ち出したりといった、「やるべきこと」をちゃんとやりましょうということですよね。

AI時代に非エンジニアがぶつかる「当たり前」の壁

あんちぽ

ここまでは社内の話でしたが、社外向けの活動として「窓の杜」での連載がありますよね。非常に面白いなと思って読んでいましたが、どういう経緯でスタートしたんですか?

石丸

バイブコーディングで非エンジニアの方がアプリを作るというトレンドがある一方で、「セキュリティやAPIキー管理などの知識がないため、外部公開に踏み出せない」という課題を抱える方が多くいらっしゃいました。本当にAIにこの情報を与えていいのか?といった判断は、エンジニアリングの知識がないとできないんですよね。

単発の「作ってみた」記事は多いのですが、現役のエンジニアが伴走して公開までを体系的・長期的に追う連載はなかったんです。

あんちぽ

プロのエンジニアの目線で、出来上がったものが適切なものになっているかを見る記事はあまりないですよね。進める中で気をつけたポイントや、面白かった点はありますか?

石丸

最新のAIモデルであっても、出力された指示をそのまま鵜呑みにするのはまだ危険だと改めて実感しました。記事でも触れていますが、AIがチャット画面などの「AIが読み取れる場所」に、「APIキーを直接貼り付けてください」と平気で指示してきた場面があったんです。

この企画はZoomで作業画面を一緒に確認するハンズオン形式で伴走する形式だったため、その場で危険性を伝えて未然に防げましたが、知識がないまま1人で進めてしまうとセキュリティリスクになりかねません。

エンジニアならNGだと即座に判断できる指示をAIが平気で出してくるからこそ、完全に任せきりにせず、セキュリティに関する最低限の知識を持つことが不可欠だと感じました。

あんちぽ

AIに「やってください」と言われれば、非エンジニアの方もまさかまずいことだとは思わないですよね。開発環境とステージングと本番の使い分けも、我々は当たり前だと思っているけれど、なかなか難しい。

石丸

連載では開発環境と本番環境の違いや、「なぜステージング環境が必要なのか」という役割の違いも丁寧にお伝えしました。

反響としては、第1回がSNSでもかなり取り上げられて、窓の杜の週間ランキングでも上位に入りました。その後もGoogleのおすすめに載っていたそうで、社内でもエレベーターで「窓の杜見ましたよ」と声をかけていただきましたね。

あんちぽ

エンジニアにとっての「当たり前」は体系的に学ぶのが難しいですが、それがこの記事では会話の中で「あるある」として次々に出てきて、「今それはダメですよ」とうまく導いてますよね。
めちゃくちゃいい読み物だなと思って読んでいましたし、それこそ非エンジニアの方には「ロリポップ!デプロイナウ」で作ったアプリをデプロイしてほしいなと思いますね。

書籍だからこそ創出できる「人と人とのつながり」

あんちぽ

AI関連の活動をされている一方で、長く続けてきた軸として技術同人誌の制作がありますよね。これまでの取り組みを説明していただけますか?

石丸

もともとGMOアドマーケティングに在籍していた頃から、技術ブログの運用や執筆も担当してきました。何かを書いて外に発信することに興味関心があったのですが、その延長線で、GMOインターネットグループ全体の取り組みができるエキスパート制度に大きな魅力を感じたんです。

全社横断の形で何か1つのアウトプットができないかという思いもあり、前任の方から引き継ぐ形で取りまとめを担当しました。

そして3年ほど前から、テーマフリーのアンソロジー形式で1冊にまとめ、技術書典で無料配布しています。昨年からはゴールドスポンサーとしても出展していて、1日で約500冊が止まることなく手渡されていきましたね。グループ外の方にも、GMOの技術同人誌が文化として少しずつ定着してきている手応えがあります。

あんちぽ

素晴らしいですね。執筆者はどうやって集めているんですか? そもそも石丸さんが編集長のような立場なんでしょうか。

石丸

これまでは一部のSlackチャンネルでの呼びかけや、人伝いを中心に声をかけています。私の立場としては編集長として、記事のレビューから印刷所への入稿、製本までを担当しています。執筆者が少ないときは自分も執筆しますね。

現状はテーマフリーなので、頒布の際に「これは何の本なんですか?」と聞かれると明確に答えづらいところがあります。今後はグループのAI活用やセキュリティといった、テーマを決めた1冊にも挑戦してみたいですね。


あんちぽ

本を作ることで見えてきたことや、石丸さんにとって良かったなということはありますか?

石丸

技術的な課題を調べるときにAIに聞くのが当たり前になってきているなか、「技術同人誌」という形でのアウトプットはいまだに熱があります。むしろより盛り上がっているんじゃないかと、イベントに出展して特に感じましたね。

実際に書籍を手渡したときに「すごく面白いです」と言っていただいたり、Xで「この書籍買いました」と投稿していただいたり……。人と人とのつながりは、AIが台頭しても変わらないんです。イメージとしては、野菜の販売所で「私が作りました」と顔が見えるようなものですね(笑)。

ブログだとどうしても中の人の顔が見えないまま消費されてしまうのですが、誰が書いているのかが分かって、その人から実際に手渡しされて、家の本棚に残っていきます。こういう体験に、同人誌ならではの価値があるのかなと思いました。

技術書典 出展レポートはこちらから

実例から得た知見を、GMOインターネットグループの内外へ

あんちぽ

一方で、今は技術記事こそAIで書きやすい部類の筆頭だと思うんですよね。書くこととAI活用のバランスについて、思いはありますか?

石丸

AIを使うこと自体はいいと思うのですが、「なぜ自分がこれを書くのか」という意志と、自分が書く価値を意識することが重要だと思っています。

前回の書籍がちょうど今年4月で、AIコーディングエージェントが当たり前になっているタイミングでした。そこで集まったのは単なる「やってみた」にとどまらず、実体験に基づく課題解決や試行錯誤のプロセスなど、人間味がにじみ出る内容だったんです。

情報の整理や要約はAIで可能だからこそ、文章に「その人ならではの視点や熱量」が乗っているかが本質だと思います。

技術発表などのケースでも、AIに情報収集や資料作成を任せるのはいいのですが、内容を深く理解しないままプレゼンしてしまうと、どこか他人事のようなアウトプットになってしまいがちですよね。著者の思考や情熱が込められていて、自分の言葉で説明できる状態になって初めて、「その人がアウトプットする意味」が生まれるのだと思います。

あんちぽ

「どういう思いでやっているのかが伝わるものを作る」という意識は、AIが発展してきているからこそますます大事になってくるんだろうと思いますね。最後に、今後の目標やビジョンを教えてください。

石丸

グループの横のつながりとアウトプットという軸は継続したいですし、継続すること自体に価値があると思っています。技術書典も約3年で6回ほど出展していますが、執筆者が固定化してきているように、まだグループ内に文化として広がりきっていません。

アドベントカレンダーも、企業によっては100記事ほど書いているところがあります。多くのエンジニア・クリエイターがいるグループなので、そうした「祭りの期間」はしっかり盛り上げていきたいですね。

もう1つは、AIコーディングエージェントの活用は当たり前になったものの、ハーネスをしっかり業務に取り入れていきたいですね。エンタープライズにおける従量課金やトークンマネジメントも、今後大きなトピックになると思います。

時代に応じたAI活用を社内で実例として作った上で、その成果や知見を社内へのナレッジ共有と社外への情報発信の両面で展開していきたいです。

あんちぽ

AI活用はもちろん、「GMOのクリエイターはこんなに面白いんだよ」というブランディングの面でも活躍してくださっている石丸さんですが、今後もどんどんアウトプットして、みんなで楽しく頑張っているんだよというのをぜひ社の内外に届けてください。石丸さん、本日はありがとうございました!

石丸

ありがとうございました。

まとめ

エキスパート活動と並行し、AI活用を多層的に進めてきた石丸さん。プルリクエスト13倍という数字の裏側には、AI時代に即したサービスを提供する姿勢と、そうしたサービスの早期提供を実現するAI活用の実践がありました。

しかし、AIがコードや文書を書く時代においても人の書く文章には確かな意味があります。自らの知見を共有する技術同人誌も、AIが参照する熱量の入った口コミも、同じコンテキストを与えれば誰でも作れるものではありません。

AIが多くを代替するようになったからこそ、「人がアウトプットする意味が大きな価値として残る」という視点は、今後のクリエイターに不可欠なマインドなのではないでしょうか。

ブログの著者欄

技術広報チーム

GMOインターネットグループ株式会社

イベント活動やSNSを通じ、開発者向けにGMOインターネットグループの製品・サービス情報を発信中

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